40年ぶり快挙に「話題作りだろうな」 プロ1年目の抜擢も…残る“後悔”「勘違いすればよかった」

ヤクルト時代の荒木貴裕氏【写真:荒川祐史】
ヤクルト時代の荒木貴裕氏【写真:荒川祐史】

荒木貴裕氏、現役14年間は「きつかったけどいい出会いがあった」

 2023年限りで現役を引退した荒木貴裕氏は、ヤクルト一筋で14年間プレーし、内外野守れるユーティリティプレーヤーとして通算685試合に出場した。「きつかったけど、本当にいい出会いがあったと思います」と振り返った現役時代。快挙から始まったが、“後悔”も残っている。

 2009年ドラフト3位で近畿大から入団。球団新人野手では40年ぶりとなる開幕スタメンに抜擢された。「7番・遊撃」も3打数無安打に終わり、翌日からはベンチを温める日々。結局この年は18試合で打率.100(20打数2安打)に終わった。

「あれ(開幕スタメン)は話題作りだろうなって感じで、自分の実力で取った感覚ではなかったので、逆にそこで勘違いすればよかったなと思っています。結果を出さなきゃとか自分にプレッシャーをかけていた。もっとイケイケというか、勘違いする能力ってすごく大事だと思うんですよ。だから今思えば、そういう風に自分がなれていたらもっと結果も変わったんじゃないかなとは思います」

 出だしにつまずき、2011年は3試合、2012年は6試合出場と2軍暮らしが続いた。2013年にはイースタン・リーグの首位打者に輝いたが1軍の壁は高かった。「なかなか呼ばれなくて、ぶっちゃけ心が折れていたときもありました」と当時の心境を明かす。2014年の春季キャンプからは本格的に外野に挑戦。「それで1軍に上がれる、試合に出られるならチャンスだと思った」とプライドを捨て、ユーティリティプレーヤーとしての道を歩み始めた。

元ヤクルト・荒木貴裕氏【写真:町田利衣】
元ヤクルト・荒木貴裕氏【写真:町田利衣】

“練習の虫”…完全に休んだ日は「ほとんどないんじゃないかな」

 常にいくつものグラブを持ち、人より多く練習してバッテリー以外の7ポジションを守った。14年間、完全に休んだ日は「ほとんどないんじゃないかな」。シーズン中の月曜日はもちろん“休日返上”で汗を流し、オフに球団のゴルフコンペがあっても、夕方には埼玉・戸田の2軍施設でマシンに向き合っていた。俯瞰して見ることができるようになった今、思うことがある。

「遅いですけど、ほどよく休養しておけばよかったなって。全てのバランスがよくないと、いいパフォーマンスは出せない。あのときはやるしかないと思っていたので、そこでもっとうまく自分と付き合えていたら……」

 とはいえ、努力は実を結んだ。2015年、夏場に約1か月の登録抹消こそあったものの、初めてほぼフルシーズンを1軍で戦った。73試合で打率.253と欠かせない存在となり、チームの14年ぶりリーグ優勝に貢献。「悔しくてもうれしくても、あまり泣かない」という男が、人生で初めてうれし涙を流した瞬間だった。

(町田利衣 / Rie Machida)

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