22日の阪神戦、同点の8回2死満塁の窮地で見せたスーパーキャッチの裏側
華やかな本塁打や分かりやすい決勝打ではない。投手の好投でもない。しかし、確実に勝利をもたらしたプレーだった。DeNAの京田陽太内野手が取った1つのアウト。“一瞬”の超ファインプレーはいかにして生まれたのか。
22日に横浜スタジアムで行われた阪神戦は、取っては取られての接戦だった。「9番・遊撃」で先発出場した京田は、打席では2安打と死球で3打席出塁して貢献していたが、一番の見せ場は6-6の同点で迎えた8回の守備だった。
マウンドには5番手のショーン・レイノルズ投手。2死満塁のピンチを招き、代打で打率3割超の前川右京外野手が打席に入った。カウント1-2の7球目、157キロの直球を弾き返し、三遊間後方へ。一直線に背走した京田は、完璧なタイミングでジャンプして打球を掴むと、そのままダイビングした。
その裏にあったのは、“感性”だ。
レイノルズが3球で追い込んだ際に、前川はノーステップに変わっていた。150キロを超える直球にファウルが続いたが、戸柱恭孝捕手のサインを見ながら、京田が動いた。
「レイノルズの真っすぐを引っ張るのはキツイかなと思いながら、『あ、そろそろこっちに来るかな』と思って、ちょっとだけ三遊間に寄りました。本当に感覚の問題なんですけど、半歩くらいですかね。風とかは関係なくて、本当にトバさん(戸柱)の配球を見ていて生まれた野球勘というか……」
「データだけじゃないので。その感覚は大事にしたいんです」
たかが半歩、されど半歩。この“変化”がなければ「たぶん追いついていないですね」。日々の練習、長年の経験から来る状況判断がものを言ったシーンだった。
今、野球界ではデータが重視される傾向にある。しかし「あの場面は、データは一切ないです」と言い切る。「打球方向とかはちょっとは見ていますけど、ポジショニングとかは見ないです。やっぱデータだけじゃないので。その感覚は大事にしたいんです」と力説した。
相川亮二監督も「データも重要ですけど、大切にしたい感性があります。そこに感動が生まれるので」と話していたが、まさに、感動が生まれた好守となった。
しかし、話を聞いているうちにとある“違和感”が生じ始めた。京田がちょっとだけ申し訳なさそうに切り出した。
「ファインプレー……。もっとこう、ギリギリ追いついて、グラブの先に何とか入って、ゴロゴロゴロって転がって、それなら『おお!』ってなりますけど、自分の中では『あ、入った』くらいだったんです。ジャンプも普通に捕れると思って飛んだんで。『やべ、届いてくれ』じゃなくて、『あ、捕れた。あぶねぇー』くらい。だからいろいろな人にすごかったと言っていただいたり、こうして取材していただいたり、周りとちょっと温度感はあるんですよ(笑)」
レイノルズにハグされ「初めてなのでドキッとしました」
あのプレーを「普通」と言えてしまうところに、京田の凄さがある。レギュラーではなくても、守備固めや少ないスタメンの機会で結果を出す。準備を怠らず、やるべきことを毎日同じようにやっているからこそ、この局面で全てが出せたのだろう。
好守でピンチをしのいでチェンジとなり、ベンチに戻ると、身長203センチのレイノルズからハグで出迎えられた。「自分より大きい人に抱きしめられたのは初めてなのでドキッとしました。……嘘ですけど」と笑いも忘れない。その裏、勝又温史外野手の右前適時打が飛び出し、DeNAは5連勝を飾った。
「僕たちもエラーしようと思ってエラーしていないですし、一生懸命やってミスしたりするときもありますけど、やっぱりなんとかピッチャーを助けてあげたい。ピッチャーの人生もかかっているわけなので。そこは僕だけじゃなくて、みんな必死に守っていると思います。レイノルズも今年すごくチームを助けてくれていますし、お互い野手もピッチャーも切磋琢磨していけたらなと思っています」
京田には守備のモットーがある。「打ち取った打球をアウトにすること」。こんなド派手なプレーでチームを救っても、浮かれず騒がずの“職人”だった。
(町田利衣 / Rie Machida)