衝撃だった日本野球…カージナルス超有望株の“崩された”常識「どうかしている」 忘れられぬ西武左腕

  • 羽鳥慶太 2026.05.05
  • MLB
好守備でチームを支えるJJ・ウェザーホルト【写真:黒澤崇】好守備でチームを支えるJJ・ウェザーホルト【写真:黒澤崇】

23歳のJJ・ウェザーホルト、開幕から名門の「1番・二塁」に定着

 カージナルスのトップ有望株と評価され、今季開幕戦でメジャーデビューを飾ったJJ・ウェザーホルト内野手は、2023年に行われた日米大学野球選手権に米国代表として参加し、日本の選手に驚かされたことがあるという。さらに3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、韓国代表の資格があるかもと話題に。自らのルーツにもつながるアジアの野球を、どう見ているのだろうか。

 5月2日(日本時間3日)にセントルイスで行われたカージナルスとドジャースの一戦は、カージナルスが3-2で競り勝った。目立ったのは内野の守りだった。「1番・二塁」で先発したウェザーホルトと、昨季のゴールドグラブ遊撃手メイシン・ウィンで組む二遊間が好守を連発した。

「オオタニのシーンの方が興奮したね!」

 こう言って、ウェザーホルトが頬を紅潮させたのは3回のプレーだ。先頭のアレックス・フリーランドが意表を突くセーフティバントで出塁し、打席には大谷翔平が立った。カージナルス先発右腕のマグリービーが投じた低めのチェンジアップを払うように打つと、打球は低いライナーに。右前に抜けると思われたところで、ウェザーホルトは絵にかいたようなダイビングキャッチを成功させた。ボールを一塁に転送し併殺に。守備でリズムを生み、その裏の3得点につなげた。

 さらに4回の守りでは、1死一塁でテオスカー・ヘルナンデスを打席に迎えた。左寄りの守備シフトを敷き、ほぼ二塁ベース後方にいたウェザーホルトは一、二塁間のゴロに猛ダッシュで追いつくと、体をくるりと一回転させて二塁カバーに入ったウィンに送球。昨季のゴールドグラブ遊撃手は一塁へ矢のような送球を見せ、また併殺で切り抜けた。ウェザーホルトは身長175センチ。この世界では小柄な体を弾ませての好守でドジャース打線を分断し、試合の流れを引き寄せた。すでに7本塁打している強打、打つべきボールを選べる選球眼も備える。攻守のどちらが自分の持ち味なのか。

「両方にいい所がある。いい守備ができたらグレートだと思うし、いいスイングをしてもグレートだと思う。いい打席内容でもそう。攻守の両方でチームに貢献したいんだ」

 2024年のドラフト1巡目、全体7位でカージナルス入りしたウェザーホルトは23歳。大リーグ公式サイトの有望株ランキングで全体5位、球団トップという高い評価を受けている。昨オフ、チームがノーラン・アレナドやブレンダン・ドノバンといった主力を手放して“再建”に入る中で、次代の中心選手と目されている。

ウェザーホルトは打撃でも存在感を示している【写真:黒澤崇】ウェザーホルトは打撃でも存在感を示している【写真:黒澤崇】

 その好選手が、日本の野球に触れたことがある。ウェストバージニア大学でプレーしていた2023年、米国で開催された日米大学野球選手権の代表に選ばれた。日本が3勝2敗で優勝したこの大会で、米国の「2番・DH」が指定席。第4戦では、のちに西武にドラフト1位指名される武内夏暉投手(国学院大)から、左中間へ豪快な本塁打を放った。

祖母は韓国人もWBC代表資格はなし「プレーしてみたかったけど…」

「覚えているよ。逆方向、左中間へ。相手が左腕で、左対左でスプリットを投げられたんだ。あんな攻め方は初めてだった」。異なる野球の常識を教えてくれた武内は2024年、パ・リーグ新人王に輝いたと伝えると「本当に? あの左腕が? 彼、いい投手だったからね……。うん、いい投手だった」とニッコリだ。

 また、日米の常識の違いにも驚いた。「名前は覚えていないけど、あのチームにはエースがいて……。5試合中3試合に投げたんだ。どうかしていると思ったよ。彼はどの試合も好投した。とても良かったんだけどね」。想像を絶するタフネスに驚いた。常廣羽也斗投手(青学大―広島)のことだ。

 米国は第3戦を終えて2勝1敗とリードしたが、そこから連敗し優勝を逃した。ただ、宗山塁内野手(明大―楽天)や西川史礁外野手(青学大―ロッテ)、佐々木泰内野手(青学大―広島)らがいた日本代表のプレーを見て、気づいたことがある。「日本チームは守備の基礎がとてもしっかりしていたことに感心したんだ。投手陣はとても良かったし、打者は打席で自律心があったので……。彼らのプレーにとても感心したよ」。打つべきボールをしっかり選び、攻守のリズムで試合の流れをつかむ。それは今、若手が並ぶラインナップで勝とうとするカージナルスに求められることでもある。

 この試合、3回に4番打者のジョーダン・ウォーカーが左翼席へライナーでぶち込む2ランを放ち、カージナルスは8試合連続の本塁打を記録した。ただ「これがチームカラーではない」とウェザーホルトは言う。「本塁打は確かにひと振りで試合を決めることができるけど、チームとしてはどんな勝ち方でもいい。バント、盗塁、進塁打、犠牲フライでもいいんだ」とまくし立てると「でも本塁打を打って文句をいう人はいないよね!」といたずらっぽく笑う。

ウェザーホルト(右)とウィンの二遊間は鉄壁だ【写真:黒澤崇】ウェザーホルト(右)とウィンの二遊間は鉄壁だ【写真:黒澤崇】

 守備では、一つ年上のウィンと二遊間を組んでいるのが大きいという。昨季129試合に出場し、失策はわずか3つという名手に「併殺に関して言えば、一塁側の打球が飛んだとき、彼が超強肩の持ち主だから僕は思いきり投げる必要がないんだ。『球を私の元にさえ投げてくれれば、あとは全部やるよ』って感じなんだ」と感謝する。さらに試合への備えでも見習うべきことばかりだという。

「彼(ウィン)はとても穏やかで、常に準備ができている選手だから、一緒にプレーすることで、自分の気持ちも落ち着くんだ。彼は自分のところに球が飛んできてほしいと思うタイプの選手。私もそういうメンタリティになることができればいいんだけど」

 どこか東洋の面影を感じさせる顔立ち。祖母が韓国生まれで、3月のWBCでは韓国代表として出場資格があるのではないかと注目された。ただ実際には基準を満たしておらず「僕には資格がないと言われたんだ」と残念そう。「韓国でプレーしてみたかったけど、規則があるからどうしようもないよね」。このまま順調に伸びていけば、米国代表への道も開けそうな逸材だ。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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