5か国で投げ続ける“ジャーニーマン”が豪州永住権獲得 生計支える和牛カット…元NPB左腕の今

楽天とDeNAでプレーした濱矢廣大は2022年から豪州へ
元楽天、DeNAで、現在は豪州メルボルンでプレーする濱矢廣大投手は今年2月、わずか3年という異例のスピードで豪州永住権を取得した。2020年限りでNPBを去り、メキシコ、イタリア、ドバイ、豪州と単身渡り歩いた33歳。和牛カットや野球指導の仕事もしながら、日本に住む妻と3人の子どもたちの後押しを受け、異国で投げ続けている。
2020年にDeNAを戦力外になったあと、2021年は一度はBCリーグ・茨城に身を置き、シーズン途中にメキシコへ。“ジャーニーマン”となった。2022年に初めて豪州へ行った際に「気候がとにかく気持ちよくて、すごくいいな、住みたいなという気持ちが湧いてきました」。しかし長い滞在を見据えれば、問題となるのがビザだ。自身で情報を集めたり、知人の話を聞くうちにたどり着いたのが、「永住権取得」を目指すことだった。
移民弁護士に相談しながら、2年目に永住権に繋がるビザを申請し、そこから審査中ビザをもらって2年。通常取得には8〜10年かかると言われているが、濱矢は2年で許可が下りた。「僕の一番のスキルは野球。現地の人には『すごいね、もう取れたの?』という反応をされますが、野球の実績が認められたことが大きいです。豪州にNPBの経験や野球のスキルを持った人材が必要だということが認められた結果だと思うので」と胸を張った。
永住権を取得したことで滞在の制限がなくなり、仕事を自由に行うことができる。豪州のプロリーグは11〜1月の約3か月のみ、そのため現在はアマチュアリーグに所属しており、週に1度の試合は基本的には無給で投げる。代わりに日本との往復航空券や、家と車の提供など生活面で手厚いサポートを受けている。とはいえ、日本には妻と3人の子どももいる。野球以外の収入源は必須だ。

マネジャーまで“昇進”「サシが入ったいい肉を切れるのは楽しいです」
平日の昼間、濱矢は日本人社長が豪州に和牛を広めたいと立ち上げた店で和牛カットを担当している。「カルビ、ハラミ、焼肉カット、ステーキカット、あらゆるカットをしています。もう1年くらいやっていて、今はマネジャーの立場で若い子たちを指導したり、採用面接もしているんです」と腕は確かで、「肉を切るのが趣味。サシが入ったいい肉を切れるのは楽しいです」というほどだ。
また子どもたちに向けて野球を指導したり、海外に挑戦したい選手をチームに繋げるサポート活動も行っている。「海外で野球をしたい20代前半の子って日本にたくさんいるので、自分を介して行って良かったという声を聞くとうれしいです」と微笑んだ。
永住権を取得しても、濱矢の飽くなき挑戦は続いていく。「投げ続けていきたいですね。楽しいというのが一番の理由ですし、自分がまだうまくなっている感覚があります。高いレベルで投げ続けたいし、オファーがあれば韓国など他の国でも挑戦したいです。それと同時に、家族を豪州に呼ぶ準備もしています。野球を続けたことによって、普通では考えられないようなことが起きたので、日本とまた違った豪州ならではの素晴らしい世界を子どもたちにも見せてあげたいと思っています」。
異色のキャリアを歩む左腕は、日々の充実感に溢れ、今後への希望に満ちている。NPB時代の通算成績は7年間計40試合で防御率7.25と苦しんだ。しかしその先に続いた野球人生は、キラキラと輝いていた。
(町田利衣 / Rie Machida)