NPB4球団で活躍した野球評論家・野口寿浩氏が捕手目線で分析
ドジャース・大谷翔平投手は12日(日本時間13日)に本拠地ドジャースタジアムで行われたジャイアンツ戦で12試合、53打席ぶりの本塁打となる7号ソロを左中間席へ放った。長いトンネルの出口から差し込む一筋の光に見えたが、果たしてこの一発が完全復活につながるのか――。 また、相手バッテリーは大谷のどこに着目して対策を立てているのか。現役時代に日本ハム、阪神などNPB4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が解き明かす。
大谷は今季7本塁打で、昨季激烈なナ・リーグ本塁打王争いを展開したフィリーズのカイル・シュワバー外野手の17本に10本差をつけられ、打率も.240と低迷中(12日現在、以下同)。
試合前の時点で野口氏は、それまでの大谷の不振の要因を“捕手目線”で分析していた。「最近の大谷の打撃は明らかに、腰が開き、膝が前を向くのが早過ぎる。開きが早いと、自ずとかかとに体重がかかり、バットを下から振り上げる格好になってしまいます。こうなると、少し大げさにいえば、卓球でドライブをかけて打つ時のように、ボールの上っ面を叩いてしまうので、打球に角度がつかない。本塁打が出にくい形になっていると思います」
初回の第1打席。大谷はジャイアンツ先発の右腕エイドリアン・ハウザー投手に対し、カウント1-2と追い込まれながら、外角低めに落ちるチェンジアップをしぶとくバットで拾い一、二塁間を破る右前打で出塁した。しかし、野口氏は「うまく誤魔化してヒットにしましたが、形はよくない。やはり体の開きが早く、体が泳いでいました。大谷の絶好調の時であれば、ひと呼吸置いて、左中間席かバックスクリーンの左あたりへ放り込める球だったと思います。現状では逆方向(センターから左方向)に飛びにくい打ち方になっています」と評した。
第2打席の本塁打は理想的な打ち方、第3打席の四球も「いい見送り方」
捕手は投手の球を受けながら、常に視界を広くして打者の動きも観察している。特に打者の体の開きが早くなっていないかどうかは、重要なチェックポイントの1つだという。そうして迎えた第2打席だった。
「僕が捕手であれば、現状の大谷と対戦する場合、外角から甘いコースに入ってくるスイーパーのような変化球が一番危険だと考えます。内角球を見せながら、外へ逃げていく変化球で勝負すると思います」
ところが、3回先頭の大谷は、突如“理想的な打ち方”を披露する。ハウザーがカウント2-1から外角のやや高めに投じた、外に逃げていく151キロのシンカーをとらえ、“逆方向”の左中間席に運んだのだ。
野口氏は「これは非常にいい打ち方でした。大谷が自分の現状を理解し、修正して打ったのであれば、これからどんどん打つと思います。ただ、投球に反応して打ったら、たまたまいい形になったということもありうる。次の打席を見てみたいと思います」と即断の評価を避けた。
5回走者なしでの第3打席は、1度もバットを振らないままカウント3-1から四球で歩いた。「開きが早い打者は、打ちにいきながらバットを止めて見送っただけでも、相手捕手に察知されます。この打席の大谷は体を開かず、“いい見送り方”ができているように見えました」。
しかし、7回2死一塁での第4打席。相手投手が203センチの長身左腕サム・ヘントチス投手に替わると、大谷の“悪い形”が再び顔をのぞかせた。カウント1-1から外角低めの138キロのスライダーを空振りした時点で、すかさず野口氏は「今のは打ちにいく前に、膝が前を向いてしまっていました。おそらくですが、この打席は打てないと思います」と指摘。実際、カウント2-2から6球目に、真ん中低めに落ちるカーブを振らされて三振に倒れた。
9回2死走者なしでの最終打席では、投手が右腕のケーレブ・キリアン投手に代わっていた。カウント2-1から真ん中高めの154キロのストレートをとらえ、痛烈な打球を放つも、相手の好守に阻まれ二ゴロに倒れた。
【実際の映像】第5打席は相手のファインプレーに安打を阻止された
野口氏の見解は「相手のファインプレーとはいえ、打球が上がらなかったことが問題だと思います。相手バッテリーとしては、目をつぶりたくなるようなホームランボールでした。やはりバットが下から出ている分、感覚よりもボールの上っ面を叩いてしまっているのだと思います」という厳しいものだった。
全体的に安定感欠くドジャース打線「大谷が打ち始めれば…」
第2打席では理想的な打ち方で本塁打という結果が出た。第3打席の見逃し方も悪くなかった。しかし野口氏は「いい形が見られたことは間違いなくプラスですが、第4打席で左投手が来た時に、またちょっと元に戻ってしまった感じがしました。“完全復活”の太鼓判を押すのは、まだ早いと思います」と評する。
現状では大谷のみならず、ドジャース打線全体が安定感を欠き、相手投手陣に抑え込まれるケースが目立つ。この日も得点は、初回に大谷の右前打をきっかけに1死満塁のチャンスをつくり、ウィル・スミス捕手の右犠飛でもぎ取った1点と、大谷のソロによる1点だけ。試合は2-6で敗れた。
「大谷のような中心選手が打ち始めれば、ベンチが盛り上がり、それに乗っかる選手が出てくる。打線全体が活気づくと思います」と野口氏。完全復活ののろしが上がるのは、いつになるだろうか──。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)