3年で4度の“戦力外”経験…33歳苦労人、たった4球で2度も由伸を粉砕 見つけた居場所と逆転人生
山本由伸から2本塁打を放ったジャイアンツのエリック・ハース【写真:黒澤崇】山本由伸、初の2打席連続被弾…ジャイアンツの伏兵・ハースが大爆発
ドジャースの山本由伸投手に手痛い黒星をつけたのは、33歳の苦労人だった。12日(日本時間13日)にドジャースタジアムで行われた試合。ジャイアンツの「9番・捕手」で先発したエリック・ハースは、3回と5回にいずれも2死から本塁打を放ち、チームを6-2の勝利に導いた。山本がメジャー移籍後、同じ選手に1試合2発を浴びたのは初めて。まるでびっくり箱のような働きを見せたハースを、指揮官は大ヒット映画に例えて称賛する。右腕をたった4球で攻略したハースの“逆転人生”に追った。
メジャーリーグの世界にも今や「山本由伸」の名前はとどろいている。昨季のワールドシリーズMVP、ドジャースのエースとして獅子奮迅の働きを見せた。しかしそんな好投手も、痛打を食らうことがあるのが野球だ。ハースは2本塁打を浴びせた山本との対戦をこう振り返る。
「実際のところ、4球しか見ていないんですからね。彼が持っている全球種を見たわけではないので、本当に難しかったですよ」
0-1と1点を追う3回、2死無走者の場面での初打席。3球目の低めカットボールを引っ張って左中間スタンドへ。2-2の5回には、やはり2死無走者で初球、内角のストレートを引っ張って左中間への勝ち越し弾だ。直球も変化球も一級品という山本のボールを前に、たった4球で2本塁打という“タイパ”の良さ。この2発が大きくものをいい、ジャイアンツは大谷翔平に久々の本塁打が飛び出したドジャースを下した。
ハースに被弾したドジャースの山本由伸【写真:黒澤崇】ハースが打席で考えたのは「とにかくタイミングを合わせること」だけ。「非常にシンプルに聞こえますが、彼のような速球を持つ投手に対しては、最初の絶好球に対していいスイングをしようと考えていました」。これが今季6試合目の出場と、決して出番は多くない。「毎日プレーする役割ではない以上、グラウンドに立ったら、チームに貢献することに対して全力を尽くすだけです」。
タイミングと一言でいうが、バッティングの肝だ。コーチングで伝えるのがなかなか難しい部分でもある。ハースは球速の速いマシンをたくさん打つことで、準備を整えているという。「自分の役割に応じて、ルーティンは常に変えてきた。ここの打撃コーチたちは、私が(投球に対して)タイミングを合わせられるように、いい仕事をしてくれています」。シンプルな思考が、限られたチャンスでの爆発を呼んだ。
タイガースでシーズン22発も…相次ぐDFA「(このポジションは)最高」
ハースはメジャー9年目の33歳。2011年にインディアンス(現ガーディアンズ)のドラフト7巡目(全体218位)指名を受けプロの世界に飛び込んだ。2021年にはタイガースで22本塁打、翌2022年も14本塁打した強打を誇る。ただ2023年の8月に、事実上の戦力外通告となるDFAを通告されると、古巣のガーディアンズへ。ここもわずか9日で再びDFA。マイナー落ちを経てオフにはFAになり、ブルワーズに拾われた。ここでも24年3月、25年7月と2度のDFAを経て、3Aと行ったり来たり。メジャーでの出場は2年間で60試合にとどまった。
今季はマイナー契約でジャイアンツに拾われ、4月21日に昇格。直後に事件が起きる。ジャイアンツは5月9日、ゴールドグラブ賞に2度輝いた正捕手、パトリック・ベイリーをガーディアンズへ放出したのだ。この状況は自分にとってのチャンスではないのか? とハースに聞くと“ノー”と言う。それよりもっと、重視していることがあるのだ。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)
