巨人・戸郷が立つ分岐点 コーチが求める“変革”…大投手への生みの苦しみ「勝つことが」

久保康生コーチが言及…「永久的にいい選手はいません」
エース復活へ、光が見えたかもしれない。本調子を欠く巨人・戸郷翔征投手は今季、開幕2軍スタートとなった。5月4日に1軍昇格して3試合に登板し、19日のヤクルト戦(いわき)で7回無失点と好投し、ようやく今季初勝利を挙げた。過去に岩隈久志投手ら数多くの好投手を育成し、昨年は田中将大投手の復活を支えた久保康生巡回投手コーチが、戸郷の現状と今後の見通しに言及した。
「戸郷は5年ぐらい同じようないい成績を残してきましたけど、それからが難しくなるところです。永久的にいい選手はいません。対戦が非常に多くなった相手も、戸郷という投手の特性、特徴にアジャストしてきています。球の出どころ、変化球の落ち方や曲がり方にマッチしてきた部分があります」
聖心ウルスラ学園から2018年ドラフト6位で入団。1年目にプロ初勝利を挙げると、2年目から先発ローテーションに定着した。2、3年目は9勝。4年目からは3年連続で12勝を挙げ、2023年は日本代表にも選出されてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一にも貢献した。初めて開幕投手を務めた2024年は防御率1.95と抜群の安定感を披露。だが2年連続開幕投手を担った昨年は8勝9敗、防御率4.14と成績が急降下した。
先発ローテーション入りして今年で7年目。相手の研究が進み、対応されてくるのは当然だろう。自身も毎年、進化を目指す中で、フォームを含めて微妙に投球のバランスを崩すケースはある。さらに勤続疲労も出てくる時期。戸郷の2軍での調整中、復調に向けて話をしてきた久保コーチは「全部の要素が、いっぺんにやってきているんだと感じます。トレーニング方法、フォームなど、どのように行動していくか。いろんなことに直面している」と説明した。
近鉄コーチ時代に岩隈、阪神コーチ時代には藤川球児、ソフトバンクのコーチ時代は大竹耕太郎ら数多くの好投手を育成してきた久保コーチは、2023年から巨人でコーチを務める。2023年に4勝に終わった菅野智之を、2024年は15勝と復活に導いて、メジャーリーグ挑戦につなげたのは記憶に新しい。
昨年は「投球のバランスが結構崩れていました」という田中将大を魔改造。「長くやっている選手は、変化や進化を求めて、良かれと思っていろいろアレンジする。違う方向に挑戦すると、バランスが崩れて自分の良さが失われていくことがあるんです」。田中には平均台の上で投球フォームを再確認させるなど、本来のバランス感覚を取り戻すところから着手。0勝だった前年から復活させ、日米通算200勝達成をサポートした。

菅野や田中将と同様に「勝つすべを持ち合わせている」
育成選手を含め55人もの投手を預かる今年は、戸郷の復調にも取り組む。26歳右腕のプロ野球人生については「非常に順調にきている。感性が強く、いい感覚を持った投手」と分析。「おそらく、こうやって動いたらこうなるという素質は素晴らしく、その部分に頼ってきたところは多分にある」という。
素材の良さを生かして実績を重ねてきたが「これからは、より上を目指していくには、これまでの経験と探求心が必要」と見ている。天性の感覚の良さと戸郷ブランドが少々薄れた現在は、さらなるスキルアップが求められる。
「どこかで大きく変貌を遂げていく必要がある中で、ちょうどターニングポイントに来ている。今が分岐点だと感じます。これを抜けられる人たちが100勝、150勝、200勝というところにたどり着いていける」。現在通算64勝の右腕が真のエースとなるため、避けて通れない大事な時期が訪れているのである。
「極端なことを言えば、もっと速い球か、もっと遅い球か、もっと違う戸郷か、今までと違うところが大きく出て、大きく変われば、彼はまた同じ軌道に乗って、勝っていくことができる」。もちろん、それは簡単ではない。だからこの時期に「物事の理を追求していくこと」が必要である。
「菅野投手や田中投手と同じで、勝つすべ、球をコントロールして相手に対峙していく面ではいい感覚を持ち合わせている。そこは消えていくものではない。ここまでは若さで突っ走ってきて、エネルギーが切れてきた。ここで終わってしまう投手はたくさんいるんです。ここから上がっていく投手になってほしい。もっともがいて、もっと勉強して、試してみる。そこで必要なものが浮き彫りになります」
過去の大投手でも、誰もが通った道。菅野も田中将もどん底からはい上がった。今はスケールアップするための通過点。戸郷もシーズン初勝利で喜んでばかりはいられない。
(尾辻剛 / Go Otsuji)