680gで生まれた長男は3歳に…「彼は笑っていて、幸せそうです」 “元相棒”スタッシーが過ごした壮絶な晩年、鮮やかに蘇る大谷翔平との記憶

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    鉾久真大 2026.05.21
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取材に応じたエンゼルスのマックス・スタッシー捕手コーチ【写真:黒澤崇】取材に応じたエンゼルスのマックス・スタッシー捕手コーチ【写真:黒澤崇】

2019年途中から2年半エンゼルスでプレー…今季から捕手コーチを務める

 かつての“大谷の相棒”は、35歳で指導者の道に進んだ。2019年夏から2023年まで捕手としてエンゼルスに所属したマックス・スタッシー氏は、今季からエンゼルスで捕手コーチを務める。キャリア晩年は怪我に苦しみ、第1子が超低出生体重児として生まれるなど、波乱万丈だった。独占インタビューで当時の心境や、子どもの近況、ドジャース・大谷翔平投手との思い出などを聞いた。

 現役時代から変わらぬ眩しい笑顔。しかし、スタッシーの体はもうボロボロだった。

 2023年3月に痛めた左股関節の症状が悪化。ホワイトソックスに移籍した2024年に表面置換術を受けた。さらにジャイアンツ傘下3Aでプレーした昨季は背中も手術。加えて右股関節にもメスを入れ、左と同様に表面置換を行った。

「怪我はとても辛かったですね。もちろん健康ならまだプレーし続けたかったですが、私に配られたカードは違いました」

 第二の人生を考え始めたシーズンオフ。エンゼルスの新監督に就任が決まった42歳のカート・スズキ氏から連絡があった。コーチにならないかとの打診。「断るわけにはいきませんでした。彼と一緒に仕事ができるのは素晴らしいことですし、電話をくれて本当に感謝しています」。2021年から2年間ともにエンゼルスで捕手を務めた元同僚からの誘いに飛びつき、現役生活からフェードアウトした。

カート・スズキ監督から誘われて今季から捕手コーチに就任【写真:黒澤崇】カート・スズキ監督から誘われて今季から捕手コーチに就任【写真:黒澤崇】

 結局、キャリアハイの102試合に出場した2022年がメジャーで最後にプレーした年となった。正捕手として重要なシーズンを迎えるはずだった2023年は、開幕直前に前述の左股関節の怪我で負傷者リスト(IL)入り。早期の復帰を目指してリハビリに励んでいた矢先に、全てを吹き飛ばす出来事が起こった。

 現地4月16日、第1子の長男ジャクソンくんがシカゴの病院で生まれた。予定より、3か月以上も早かった。出生時体重はわずか1.5ポンド(約680グラム)。超低出生体重児だった。

「言うまでもなく、非常に神経をすり減らす日々でした。自分たちにはコントロールできない状況だったので、妻も私もとても怯えていました」

3歳になった息子は体重15キロに成長「歩き始めたんですよ」

 肺炎、血液感染症、脳出血、肋骨のひび割れ、骨の病気……。新生児集中治療室(NICU)で数々の治療を受ける我が子のために、夫妻は毎日祈り続けた。6月に60日間のILに移行していたスタッシー氏は9月3日(日本時間4日)、「家族の深刻な健康上の問題」を理由に制限リストに入れられた。シーズン全休が決定。当時はまだ詳細が明かされておらず、日米ファンの間で心配の声が広がった。

 自身もシカゴでリハビリ中だったため、家族の状況をチームメートに伝えたのもこの時期となった。「みんな連絡をくれて、私の家族のために祈っていると言ってくれました。それは本当に心に響くものでした。みんなからの言葉がとてもありがたく、あれだけ良い人たちに囲まれていたことを嬉しく思います」。仲間の温かい支えを受け、誕生から半年が経った10月、愛息はついに退院した。

 月日は流れ、ジャクソンくんは3歳になった。体重は34ポンド(約15キロ)に。「大きな子になりましたね。彼は笑っていて、幸せそうです。歩き始めたんですよ。まだ話すようにはなっていませんが、そろそろだと願っています」。いまだに複数の治療を受け、医者にかかる日々は続いているが、すくすく育つ息子について語るスタッシー氏の表情は柔らかだった。

エンゼルス時代の大谷翔平(左)とマックス・スタッシー【写真:アフロ】エンゼルス時代の大谷翔平(左)とマックス・スタッシー【写真:アフロ】

日本のファンへの感謝「良い時も悪い時も応援してくれて、いつも温かく迎えてくれました」

 大谷とは何度もバッテリーを組んだ。一番の思い出は「アスレチックス戦でノーヒッターまであと少しのところまで行った時ですかね。2022年で、確か8回表に途切れてしまった。でも、あれは彼との本当にいい思い出です」。2022年9月29日(同30日)、本拠地アスレチックス戦で8回2死までノーヒットノーラン、8回10奪三振2安打無失点の快投で15勝目を挙げた一戦を即座に推した。

 昨季から投手として復帰した大谷の投球をかつての相棒はどう見ているのか。

「彼の登板はチェックしていますよ。今年も変わらずショウヘイらしい投球をしていますね。昔と違うところですか? アームスロット(腕の角度)が少し下がったなと思いますが、基本的にはそれぐらいですね。ほぼ全ての球種を投げられるし、今でもあらゆる球種を駆使してリーグを圧倒しています。今回の連戦で投手の彼と対戦しなくて良かったです(笑)」

 今季はここまで防御率0.82、44回を投げて50奪三振と抜群の成績を残している。日本人初のサイ・ヤング賞を獲れると思うか。スタッシー氏は笑顔で即答した。

「もちろん。彼に獲れない賞はないと思います。サイ・ヤング賞以外のほぼ全ての賞をすでに獲得していますし、それが最大のゴールの一つに違いないでしょう。彼のやることに限界を設けることなんてできません」

日本のファンにメッセージを送ったスタッシー氏【写真:編集部】日本のファンにメッセージを送ったスタッシー氏【写真:編集部】

 最後に、大谷が離れた今でもエンゼルスを応援するファンが日本にいると伝えると「オー、ワオ!」と目を輝かせた。「あなたたちのサポートに感謝していると伝えてください。良い時も悪い時も応援してくれて、いつも温かく迎えてくれました。応援してくれた全てのファンに本当に感謝しています」。

 まだ日本を訪れたことはない。「どうしても行きたいですね。いつか妻とジャクソンと一緒に」。アナハイムの晴天を見上げ、明るい未来に思いを馳せた。

(鉾久真大 / Masahiro Muku)

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