巨人・戸郷翔征、完全復活のカギは 名伯楽が指摘した「構え」…“勝つため”に必要な魔改造

巨人・戸郷翔征【写真:小林靖】
巨人・戸郷翔征【写真:小林靖】

エース復活のポイント、久保康生コーチが説明

 エース完全復活へのポイントは、投球前の構えにある。昨年から不振が続く巨人・戸郷翔征投手は今季、開幕2軍スタート。5月に1軍昇格して3試合に登板し、19日のヤクルト戦(いわき)でようやく今季初勝利を挙げた。過去に岩隈久志投手ら数多くの好投手を育成し、昨年は田中将大投手の復活を支えた久保康生巡回投手コーチは、そんな戸郷の魔改造に着手している。

「勝つことが求められる投手。いきなり大幅に変えることは凄く難しい。現状でもゲームに投げられるような最低限のアドバイスをやっているところです。フィジカル面と技術面がマッチしていけば、また軌道に乗って勝っていけると思います」

 今季初登板となった5月4日のヤクルト戦(東京ドーム)は3回に3ランを浴びるなど5回5失点で敗戦投手。12日の広島戦(岐阜)は5回で110球を要し、3失点でマウンドを降りた。全体的に見ると本来の出来には程遠いものの、直球の球速は150キロを超えるなど、少しずつ良くなっている気配は見て取れる。

 久保コーチが注目するのは投球前。「伝えたのは構えと目線です」。菅野智之を復活に導いた同コーチは、戸郷にも崩れている体のバランスを取り戻させようと注力している。菅野と同様、脚から始動する新フォームが注目されたが、意識させるのは目と左脚の位置だという。

「コースを狙って投げるのが仕事の投手は目線が大事。目線から入った情報を体に伝えて、体が動き始める。目線や構えが違うと、投げる形まで変わっていくんです。構えが変えられれば、投球フォームは触らなくても済むケースもあります。ポイントは目の位置が後ろ(後方)にいかないことです」

 ボールを投げ込む位置は当然、自分の体より前。マウンドから本塁までの18.44メートルの中で勝負する投手にとって、少しでも本塁まで近い位置で目から情報を取り入れる必要があるのだ。投球時の戸郷は「元々、目線が後ろに下がるタイプ」だったという。ノーワインドアップで左足を引く際、上半身も自然と中堅方向に下がっていた点を矯正するためのプレート前での構えなのである。

Full-Countの取材に応じた巨人・久保康生巡回投手コーチ【写真:荒川祐史】
Full-Countの取材に応じた巨人・久保康生巡回投手コーチ【写真:荒川祐史】

「投手はプレートの前が働く場所」

「ターゲットは必ず前にある。だからプレートの後ろに下がらない。プレートよりも必ず前にいて、そこから始動するんです」。目線を安定してプレートの前に置くには、セットポジションの方がやりやすい。最近の戸郷は走者なしのノーワインドアップは少し体を引くだけで、ほぼセットポジションと変わらない。頭をプレートの前に位置している。

「投手はプレートの前(前方)が働く場所。自分の経験からすると、プレートの後ろには得がない。必要なものがあまりありません。ロジンがあるだけでいい。まずプレートの前に立って投げる。下半身を含めて、体重移動も含めて、マウンドの傾斜も含めて、スムーズに使えるようになれば結果もついてきます」。プレートの後方は、ピンチなどで一息入れる際に立つぐらいで十分なのである。

 もちろん、これは復活への第一段階。感覚を取り戻すためのきっかけに過ぎない。「今から進化していく中で、自分のフォームを作っていくことになる。以前のようなノーワインドアップに関しても、目線の位置や構えが参考になって取り入れるべきものが出てきます」。戸郷が自分の力を発揮できるフォームを作り出していければ、復活が近づく。

「どうすれば力が一番出やすいのか、そして継続して力を出せるのか。力学的なことの理解が必要で、長期的に崩れなくなることにつながります」。実績があればあるほど、考え方を変えるのは簡単ではない。そこを理詰めで納得させる名伯楽とともに、戸郷は一歩ずつ進化への道を歩んでいる。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY