大谷翔平のスイーパーは“諸刃の剣” 圧倒的武器の一方で…専門家が警鐘を鳴らすワケ

規定投球回に1イニング足りないものの、リーグトップを凌駕する防御率
ドジャース・大谷翔平投手は20日(日本時間21日)、敵地で行われたパドレス戦に「1番・投手兼指名打者」で先発出場。4月22日(同23日)のジャイアンツ戦以来、約1か月ぶりの“二刀流”出場で、投げては5回無失点に抑え今季4勝目(2敗)を挙げた。規定投球回にわずか1イニング足りないものの、防御率はリーグトップ(規定投球回以上)のフィリーズのクリストファー・サンチェス投手の1.82を大きく上回り、驚異の0.73。投手としてはまさに無双している。
本調子ではなくとも結果的に失点0に抑えるのだから、そこがまた凄い。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍し、現在メジャー中継の解説者などを務める野口寿浩氏は「この日の大谷の投球は、ストレートを引っ掛けたり、スイーパーが抜けたりして、コントロールがバラバラでした。狙ったところにはほぼ、投げられていなかったんじゃないでしょうか。本人も浮かない表情で投げていましたし、納得のいく投球ではなかったでしょう」と評する。
自らの初回先頭打者本塁打で先制点をもぎ取り、その裏の守備でマウンドに上がった大谷。先頭のフェルナンド・タティスJr.外野手を、横に大きく曲がるスイーパーで投ゴロに打ち取り、続く2番のミゲル・アンドゥハー外野手にはファウルで粘られ11球を要したものの、最後はやはり外角低めのスイーパーで空振り三振に仕留めた。3番のギャビン・シーツ内野手も、158キロのストレートで空振り三振に斬って取った。
結局5回88球、3安打2四球4奪三振無失点。5回限りで降板したのは、今季登板した8試合中最短で、初めてQS(クオリティ・スタート=6回以上を投げ、自責点3以下)に届かなかった。首脳陣から見ても、安心して見ていられる内容でなかったからだろう。
全投球中40.9%を占めた球種「変化量大きくキレも素晴らしい」
球種別に見ると88球中、スイーパーが36球(40.9%)で最も多く、最速161キロを計測したフォーシームが35球(39.8%)、スプリットが8球(9.1%)、シンカーが6球(6.8%)、カーブが3球(3.4%)と続いた。
野口氏は「大谷のスイーパーは変化量が大きく、キレも素晴らしいので、圧倒的な武器となる反面、この球種を多投していると、体の使い方が横振りになりがちで、そうなると他の球種を含めて制球がしづらくなっていきます。体を横に振った方が、曲げやすい球種だからです」と警鐘を鳴らす。“諸刃の剣”というわけだ。
一方、3-0とリードして迎えた5回、2死満塁のピンチで強打者タティスJr.と相対し、遊ゴロ併殺に仕留めたのも、やはりスイーパーだった。その瞬間、大谷の歓喜の雄叫びが響いた。
仮に野口氏が敵側で、防御率0点台の投手・大谷と対戦するなら、どの球種を狙うのだろうか。野口氏は「僕なら、追い込まれるまでスイーパー狙いです。内側から真ん中付近へ入ってくるところをイメージして、そこに来たらガツンと行きます。100マイルのストレートなど比べれば、打てる可能性が高いと思います」と断言する。
一方、ストライクゾーンの外角ギリギリをかすめ、バットの届かない彼方へと曲がっていくスイーパーを決められたら、もう誰にも打てない。「そうなったら、そもそも野球は30%の確率で打てたら一流と呼ばれるスポーツだからと、諦めるしかありません」と苦笑した。
大谷は、2023年の第5回WBCの決勝・米国戦で、最後の打者マイク・トラウト外野手を空振り三振に仕留め、球史に残る1シーンとなったのもスイーパー。逆に、昨年のワールドシリーズ第4戦で、ブルージェイズの主砲ブラディミール・ゲレーロJr.内野手に痛恨の逆転2ランを浴びたのも、相手の肩口から甘く入ったスイーパーだった。この“諸刃の剣”をどう使いこなしていくのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)