派手に喜ぶ侍J…のちのMLBスターたちは「慣れていなかった」 大学野球で異例の警告試合、“216億円男”になった名手が思い出す13年前の衝撃

  • 羽鳥慶太 2026.05.24
  • MLB
第39回日米大学野球の第5戦で死球を受けた岡大海(2013年)【写真提供:産経新聞社】第39回日米大学野球の第5戦で死球を受けた岡大海(2013年)【写真提供:産経新聞社】

ジャイアンツのマット・チャップマン、13年前の日米大学野球での“警告”を回顧

 13年前の夏、日本で開催された日米大学野球では、グラウンドが騒然となる瞬間があった。2013年7月11日に神宮球場で行われた第5戦、岡大海外野手(明大、現ロッテ)への死球に両チームがベンチを飛び出す事態に。学生野球では異例の警告試合が宣告された。当時の米国チームには、その後メジャーの主力へ成長した選手も多い。ゴールドグラブ賞5度の名手、マット・チャップマン内野手(ジャイアンツ)にも、記憶は鮮明だという。

 大会は日本が3勝2敗で、2大会ぶり17度目の優勝を飾った。最優秀投手には山崎康晃投手(亜大―DeNA)が選ばれるなど、当時の代表には後にプロ野球で活躍した面々が揃っていた。大瀬良大地投手(九州共立大―広島)や山崎福也投手(明大、現日本ハム)、坂本誠志郎捕手(明大―阪神)、吉田正尚外野手(青学大、現レッドソックス)らが名を連ねる。

ジャイアンツのマット・チャップマン【写真:ロイター】ジャイアンツのマット・チャップマン【写真:ロイター】

 騒動が起きたのは、4回だった。日本の「7番・一塁」で先発した岡が1死から打席に立つと、米先発のブランドン・フィネガン(元レッズ)の速球を右ひざに受けた。岡は激高し、ヘルメットを地面にたたきつけると前へ。両軍ベンチから選手が飛び出し、あわや乱闘という事態になった。

 さらに5回、中村奨吾内野手(早大―ロッテ)が本塁打を放った時には、ダイヤモンドを1周する中村に米国選手から大声が飛ぶなど不穏な空気に。親善ムードも吹っ飛びかねない事態を審判団は憂慮。日本の善波達也監督、米国のジム・シュロスネーグル監督に警告試合を言い渡した。

 この時、米国の三塁を守り、走る中村の前に立ちふさがるような形になったのが4番打者のチャップマン。まだ大学2年、20歳だった。ベンチが空っぽになった瞬間、警告試合となった経緯ももちろん覚えているという。若さゆえの先走りを、今はこう振り返る。

「日本はホームランを打ったあと派手に見せつけたり、セレブレーションをやっていて、当時の僕たちはそういうことに慣れていなかったんです。だから、彼らの方が時代を先取りしていたんだと思います」

「美しいと思ったんです」忘れられない日本の夏「もっと都市ばかりかと」

 米国代表は2年生、1年生ばかり。ただその中にはチャップマンのほかに、カルロス・ロドン投手(ヤンキース)やカイル・シュワーバー捕手(フィリーズ)、トレイ・ターナー内野手(フィリーズ)ら現在の超一流選手が並んでいた。日本のプレーに「本当にうまいなと思いました」と一目置いていた。

 チャップマンの記憶によれば、この夏の大学米国代表は3敗しかせず、それはすべてこの日米大学野球だった。「僕たちもかなり強かったんですが、日本は本当に素晴らしいピッチングをして、守備も良く、非常に堅実でした。本当に素晴らしい野球をしていました」と称える。さらに日米の野球の大きな違いは、当時から変わらない。

「僕たちは誰も、スプリットを打つことに慣れていなかったんです」

 さらにこの大会、チャップマンは宇都宮で行われた第4戦、3番手で9回のマウンドに上がり、1安打無失点。米国が8-2と大量リードしていたための野手登板だったが、それだけにメジャーのレベルで二刀流を続ける苦労は想像もつかないという。「あれができるのは、世界にたった1人しかいません」と大谷翔平投手(ドジャース)を称え、こう続けた。

チャップマンは「あれができるのは、世界にたった1人しかいません」と大谷翔平を称える【写真:黒澤崇】チャップマンは「あれができるのは、世界にたった1人しかいません」と大谷翔平を称える【写真:黒澤崇】

「メジャーリーグのレベルであれができるというのは、まず第一にとんでもない才能が必要。同時に高いモチベーションも、体のケアも欠かせません。毎日野球をしていれば疲れるのは容易に想像がつきますが、その上でさらにピッチングもして毎日試合に出るというのは、彼がどれほど懸命に努力しているか、そしてどれほど入念に体のケアをしているかを物語っています」

 20歳の夏は、メジャーの一流選手になった今でもいい思い出だ。「東京がどれだけ大きいかには驚いたね」と言う一方、この大会は愛媛・松山や広島、栃木・宇都宮でも行われた。「日本の知らなかったというか、のどかな一面を見ることができたのはよかったですね。海岸沿いをドライブしたんですが、田んぼがあって、緑がいっぱいで。日本ってもっと都市ばかりのイメージを持っていたんです。その外側を見ることができたのは、本当に良かった。なんていうか……美しいと思ったんです」

 現在は2025年からの6年総額1億5100万ドル(約216億円=契約当時)という巨大契約を結び、守備力と長打力で押しも押されもせぬスターとなったチャップマン。優しい口調で、日本での思い出を語る目には懐かしさが浮かんでいた。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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