大谷翔平、登板日と翌試合に悪化していた数値 「二刀流起用」が打撃に及ぼしていた影響は…データでみる今季序盤の変化|DATA INSIGHT

本格的に二刀流として復帰した大谷翔平【写真:黒澤崇】本格的に二刀流として復帰した大谷翔平【写真:黒澤崇】

無視できない「二刀流起用による打撃への影響」

 大谷翔平(ドジャース)が、本来の打撃成績を残せていない。本格的に二刀流として復帰した今季は、投手としてはサイ・ヤング賞候補に挙がっても不思議ではないほどの成績を残している一方、打者としては本来の水準からすると物足りない状態が続いている。

 こうなると気になるのが「二刀流起用による打撃への影響」である。特に今季の登板日とその翌試合に限ると、打率.195、本塁打は1本(5月22日時点)。対象は53打席にすぎず、サンプルサイズとしてはかなり小さい。それでも、実際に結果が出ていないことは否定できない。さらに疲労面を考慮してか、登板時にはラインナップから外れるケースも目立っている。

 大谷自身はかねて「投球は打撃には影響しない」という趣旨の発言をしているが、実際のデータではどうなのか。今回は主要成績とトラッキングデータをもとに、二刀流起用が打撃面に及ぼす影響を探っていく。

 二刀流起用が打撃にどのような影響を及ぼしているのかを確認するため、まずは登板後の打者出場試合ごとにwOBA(打席あたりどれだけチームの得点増に貢献しているかを評価する指標)とxwOBA(トラッキングデータから算出するwOBAの期待値)の推移を見てみよう1

 まずはwOBAの推移を示すオレンジの線に注目してみよう。登板日こそwOBA.451と優れた成績を残しているものの、登板翌試合、つまり1試合後ではwOBA.364まで低下しており、大谷自身の平均を大きく下回っている。

 さらに注目したいのが、青線で示したxwOBAの推移だ。登板日は実際の結果こそ平均を上回っていたが、xwOBAは.418と自身の平均を下回っている。さらに登板翌試合では.363まで低下しており、結果と内容の両面で苦しんでいることが分かる。

 登板日とその翌試合では平均を下回る期待値を記録した一方、登板から2試合後以降は成績が回復し、特に3試合後にはwOBA、xwOBAともに高い水準を記録している。こうした推移を見ると、打撃面の落ち込みは登板日とその翌試合に集中している可能性が考えられる。

 登板日+翌試合とその他の試合での各打撃成績を比較すると、その差は明確だ。

表1大谷翔平の登板時+翌試合とその他試合での打撃成績比較2023-26年 / MLB通算
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グループ 打率 期待打率 四球率 三振率 wOBA 期待wOBA 期待wOBA(打球のみ)
登板日+翌試合 .275 .254 13.5% 27.2% .405 .389 .508
その他 .294 .285 15.8% 23.8% .433 .435 .552
差分(登板時+翌試合)− その他 -.019 -.031 -2.3% 3.4% -.028 -.046 -.044
データは2026年5月22日時点

 登板日+翌試合をその他の試合と比較すると、wOBAは.028、期待wOBAは.046も悪化している。先ほど確認した登板直後の打撃成績の落ち込みは、合算しても明確に表れている。

 内容を見ると、打球のみの期待wOBAも低下しており、価値の高い打球を生み出す力がやや落ちている可能性がある。加えて、三振率は悪化し、四球の割合も減少している。つまり、登板日+翌試合では打球の質だけでなく、コンタクトやゾーン管理の面にも変化が出ている可能性が考えられる。

 これらのデータを見ると、まず疑いたくなるのは「疲労」の影響だ。ただし、疲労という言葉だけでは説明として不十分だろう。仮に疲労があるなら、それはどのデータに表れているのか。スイングが崩れているのか、ボールゾーンの球に手を出す割合が増えているのか、あるいはコンタクトの質が悪化しているのか。

 ここからはより詳細なデータを用いて、登板日+翌試合に大谷の打撃のどの要素が変化しているのかを確認していく。

バレル率は4.6ポイントの低下…「打球内容」と「ゾーン管理能力」に表れる変化

 では、登板日+翌試合では具体的にどの部分が悪化しているのか。まずは打球種別(ゴロやフライなど)を確認してみよう。

表2大谷翔平の登板時+翌試合とその他試合での打球種別割合比較2023-26年 / MLB通算
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グループ ゴロ割合 ライナー割合 フライ割合 ポップフライ割合 Hard Hit% Barrel%
登板日+翌試合 41.2% 24.9% 29.4% 4.5% 54.8% 17.6%
その他 41.4% 20.5% 34.6% 3.5% 55.8% 22.2%
差分(登板時+翌試合)− その他 -0.2% 4.4% -5.2% 1.0% -1.0% -4.6%
データは2026年5月22日時点

 登板日+翌試合ではフライ割合が5.2ポイント低下している。通常時と比べると、長打につながりやすいフライ性の打球がやや減っていることが分かる。一方で、95mph以上の打球割合を示すHard Hit%に大きな差はない。つまり「強い打球そのものが打てなくなっている」とまでは言い切れない。

 ただし、打球速度と角度から算出される「Barrel」の打球割合は4.6ポイント低下している。強い打球はある程度出ているものの、本塁打や長打につながりやすい理想的な打球は減っている。前項で確認した長打力や打球価値の低下も、この部分とつながっている可能性が高い。

 打球方向の変化についても確認してみよう。以下の表は各打球方向に加え、「Pull Air(引っ張り方向のフライ)」の割合を示したものだ。

表3大谷翔平の登板時+翌試合とその他試合での打球方向+Pull Air割合比較2023-26年 / MLB通算
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グループ 引っ張り方向 センター方向 逆方向 Pull Air
登板日+翌試合 38.5% 38.0% 23.5% 14.9%
その他 43.3% 35.6% 21.0% 19.3%
差分(登板時+翌試合)− その他 -4.8% 2.4% 2.5% -4.4%
打球方向はスプレー角度を3分割したものを使用。データは2026年5月22日時点

 打球方向のデータを見ると、引っ張り方向の打球が約4.8ポイントほど減少し、センターから逆方向への打球が増加している。若干の変化ではあるが、登板日とその翌日では本来対応できている速球や変化球に対し、差し込まれるようなかたちでスイングしている可能性が考えられる。

 さらに注目したいのは「引っ張り方向の打球をどのような形で打てているか」という点だ。大谷にとって、引っ張り方向へのフライ性打球、いわゆる「Pull Air」は長打力を支える重要な要素である。Pull Airは一般的に得点価値の高い打球になりやすく、特に2024年以降の大谷は、この打球を大きな武器にしてきた。強く引っ張り、なおかつ打球を上げることができるからこそ、MLBでもトップクラスの長打力を維持してきたと言える。

 その点で見ると、登板日+翌試合では気になる変化がある。上の表では、Pull Airが通常時の19.3%に対し、登板日+翌試合では14.9%。約4.4ポイント低下している。打球方向の大枠は大きく変わっていない一方で、長打につながりやすい「引っ張って角度をつける打球」は明確に減っている。

 Hard Hit%は大きく落ちていない一方で、Barrel%やPull Airが低下している点を踏まえると、問題は単なる打球速度の低下ではない可能性が高い。強く打つ力そのものよりも、長打になりやすい角度と方向で捉える能力に影響が出ているのではないか。

 打球データに続いて、ゾーン管理能力の変化についても確認してみよう。

表4大谷翔平の登板時+翌試合とその他試合でのゾーン管理比較2023-26年 / MLB通算
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グループ 空振り率 ストライク
スイング率
ボール球
スイング率
ストライク
コンタクト率
ボール球
コンタクト率
登板日+翌試合 28.8% 64.0% 29.1% 79.8% 54.7%
その他 29.8% 68.0% 27.4% 78.9% 51.7%
差分(登板時+翌試合)− その他 -1.0% -4.0% 1.7% 0.9% 3.0%
ストライクゾーンはsz_top、sz_botを用いて定義。データは2026年5月22日時点

 それぞれの成績に明確な差はないが、少し気になるのがボール球に対するアプローチの変化だ。登板日+翌試合では、ボール球に手を出す割合と、ボール球をコンタクトする割合がどちらもやや高くなっている。一般的に、ボール球へのコンタクトは得点価値につながりづらく、打者にとって必ずしも望ましい結果ではない。

 ただし、大谷の場合はここを単純に悪材料とは言い切れない。登板日+翌試合におけるボール球コンタクト時のwOBAは.445を記録しており、リーグ平均の.287を大きく上回っている。つまり、登板日+翌試合にボール球へ手を出す割合がやや増えているとはいえ、それ自体が成績悪化の主因とまでは考えづらい。

 むしろ興味深いのはストライクスイング率の低下だ。登板日+翌試合では64.0%、その他の試合では68.0%となっており、ストライクゾーン内の球に対するスイング率が約4ポイント低くなっている。

 この変化は、見逃し三振の増加にもつながっているとも推測できる。実際、三振のうち見逃し三振が占める割合は、通常時の21.0%から登板日+翌試合では26.9%へ上昇している。

 登板日+翌試合では、本来ならスイングできているストライクに対してバットが出ていない場面が増えている。これらのデータだけで断定はできないが、二刀流起用により、打球の質だけでなく、打席内でのスイング判断にもわずかな変化が出ているのかもしれない。

球種別に見る「コンタクト位置」と「スイング長さ」のズレ

 球種別の打撃成績の変化からも考察してみよう。以下の表は、速球系(フォーシーム、シンカー、カッター)と非速球に対してスイングした際の成績について、登板日+翌試合とその他の試合との差分を示したものだ。青くなっている箇所が登板時+翌試合に悪化している指標と考えてもらえれば良い。

表5大谷翔平の登板時+翌試合とその他試合での球種別成績比較2023-26年 / MLB通算
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球種 打率 期待打率 wOBA 期待wOBA 期待wOBA(打球のみ)
速球 -.040 -.038 -.053 -.047 -.018
非速球 -.002 -.030 -.009 -.055 -.071
その他との差分を表記。速球はフォーシーム、シンカー、カッターが対象。データは2026年5月22日時点

 まず目立つのは、速球系に対する成績低下だ。登板日+翌試合では、いずれの指標でも通常時を下回っている。特に打率の落ち込みが大きく、速球系に対するコンタクトの結果が悪化していることが分かる。加えて、打球のみの期待wOBAも低下しており、速球系を捉えた際の打球価値も下がっている。
 
 一方、非速球では速球に比べて実際の打率やwOBAにはほとんど差が生まれていない。ただし、期待wOBAや打球のみの期待wOBAは低下しており、内容まで含めると決して優れているわけではない。

 では、これらの変化はスイングデータにどのように表れているのか。本来、大谷は球種にかかわらず、ボールを手元まで引きつけながらも、スイングレングスとバットスピードを両立できる打者である。以下のスイング分析でも、いわゆる「バットが遠回りする」ように見える軌道が、さまざまな球種への対応力につながっている可能性が指摘されている。

セオリー度外視の「バット遠回り」 スイング解剖で判明…大谷翔平があらゆる変化球を打てる理由|DATA INSIGHT

 まずは対速球系の変化として「インターセプトY」の分布を確認してみよう。インターセプトYはバットとボールがどの位置で接触したかを示す指標だ。値が小さいほど、より捕手寄り、つまり手元までボールを引きつけて捉えていることを意味する。

 登板日+翌試合では、若干ではあるが通常時よりもインターセプトYが小さい範囲でのコンタクトが増えている。つまり、もともと引きつける傾向のある大谷が、さらに手元で速球を捉えるケースが増えているということだ。こうなるとバットスピードも確保しづらく、本来のスイング軌道も再現が難しくなる。

 本来の大谷は、インターセプトYが20〜30インチの範囲で強い打球を量産するタイプの打者である。しかし、この範囲を下回ると、引っ張り方向への強い打球は生まれにくくなり、空振りも増えやすくなる。実際、登板日+翌試合では対速球の引っ張りフライ割合が約3.3ポイント低下し、空振り率も約1.4ポイントとわずかに上昇している。

 では、非速球ではどのような変化が見られるのか。注目したいのは、変化球への対応力に関わる「スイングレングス」の分布だ。

 平均値だけを見ると、登板日+翌試合とその他の試合に大きな差はない。しかし分布で見ると、登板日+翌試合ではスイングレングスの短いスイングがやや目立っている。一方で、バットスピードやインターセプトYには大きな変化は見られない。つまり、非速球に対して「振る力」や「捉える位置」が大きく変わっているというより、バットの入り方や軌道にわずかな変化が出ている可能性がある。

 大谷は本来、長めのスイングレングスを保ちながら、手元まで引きつけて強く振れることに特徴がある。登板日+翌試合で短いスイングが増えているとすれば、その本来の軌道がやや失われ、非速球を長打につなげる再現性が下がっているのかもしれない。

 いずれにせよ、速球系では接触位置、非速球ではスイングレングスの分布に変化が見られる。平均値では見えにくいものの、球種別に分布を確認すると、登板日+翌試合では大谷本来の打撃を支えていた特徴がわずかに崩れている可能性が考えられる。

大谷とドジャースはどう負荷を管理するのか

 今回の比較では、登板日+翌試合に大谷の打撃がいくつかの面で変化している可能性が見えてきた。スイングデータの平均値には大きな差がない一方、分布ではコンタクト位置やスイングレングスに変化が見られ、それが打球性質の変化につながっている可能性がある。さらに、ストライクゾーン内の球に対するスイング率低下など、ゾーン管理面にも変化が表れていた。
 
 少なくとも今回のデータを見る限り、投球が打撃にポジティブな影響を与えている材料は見当たりづらい。二刀流起用そのものを否定する必要はないが、打撃面では一定の負荷やズレが生じている可能性は考えておくべきだろう。

 ただし、今回の分析には限界もある。対象は登板日+翌試合に限られており、そこから球種別やスイングデータ別に分けているため、サンプルサイズが小さい項目もある。今回の傾向だけで「二刀流起用が確実に打撃成績を悪化させている」と断定するのは早いだろう。

 また、これはあくまで大谷自身の中での比較である。登板日+翌試合に成績が落ちているとしても、それは「大谷としては物足りない」という話であり、リーグ全体で見れば依然として上位級の打者であることに変わりはない。投手としての貢献も含めれば、二刀流起用自体を否定する必要はない。

 とはいえ、大谷もすでに31歳。登板による疲労や準備の負荷が打撃面にまったく影響しないと考える方が不自然だ。今後は、大谷とドジャースがこの影響をどう管理していくのか。登板日の起用、翌試合の休養、打撃アプローチの修正も含め、二刀流を続けるうえでの対応に注目したい。

■参考
・Baseball Savant(最終閲覧:2026年5月)
※データは2026年5月22日時点

◯DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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