防御率は0点台、打者を圧倒する投手・大谷翔平
米国の有力紙やスポーツ専門メディアの記者が、日本国内の報道とは一線を画す視点を提供する「MLB Press Box~米国記者の忖度なき評価~」。今回はドジャースを長年取材するディラン・ヘルナンデス記者(カリフォルニア・ポスト)が、今季の投手・大谷翔平の行方を語る。
著者:ディラン・ヘルナンデス
Dylan Hernandez
カリフォルニア・ポスト所属
エルサルバドル出身の父、新潟出身の日本人の母を持ち、日本語も堪能。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)を卒業。「サンノゼ・マーキュリー」紙を経て、2025年まで「ロサンゼルス・タイムズ」紙に所属し、コラムニストを務めた。2026年から「カリフォルニア・ポスト」に所属。
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シーズンを二刀流でスタートしたドジャースの大谷翔平が、驚異的な投球を披露している。ここまで8試合に登板して防御率は0.73。投手として最高の栄誉であるサイ・ヤング賞を獲る可能性も現実化してきた。
今季の大谷はなんといっても、失点が少なくあれだけ防御率が低い。投球回数が少ないことも指摘されるが、何だかんだ言っても規定にはまず到達するだろう。チームと大谷は休養日を取ることについてのコメントが食い違っていたこともあったが、裏ではしっかりとした話し合いの場が持たれているはずだ。
エチケットの問題として、監督がチームと選手の話し合いの内容をメディアに話すということは、裏ではしっかりとコミュニケーションを取っているということだ。指揮官が大谷ほどのスター選手と話し合う前の内容をメディアに明かすということはほとんどないのが実情だ。
サイ・ヤング賞については他球団にも好成績を残すライバルがいるが、米国にいても感じるのが、こっちでも大谷の人気は半端ないということだ。記者投票とはいえ、仮に2~3人が僅差の争いになったときに、どうしても大谷へ票が流れることも想像できる。
大谷のピッチング内容を見ていると、ストライクゾーンへ質のいいボールがどんどん投げ込めている。投げるたびにクオリティスタートを達成してしまい、調子が良くない時でも何とか抑えられてしまうのだから驚きだ。
過去にサイ・ヤング賞に輝いたマーリンズのサンディ・アルカンタラは今季最初の数試合こそすさまじかったが、以降は大量失点が続いて防御率が跳ね上がった。しかし大谷には現状そういうことがない。
大谷に重なるレジェンドの姿「調子が悪くても、マウンドに上がるものとして試合を何とか作る」
4月にトロントであったブルージェイズ戦では本調子ではない中で6回1失点(自責1)の内容。試合後にロバーツ監督は「辛抱強く投げていた。投球モーションが安定せず、狙ったところに球がいかなかった。それでも6回1失点で切り抜けたのは素晴らしかった」と、粘りの投球を称えている。
大谷のピッチングスタイルで思い出すのが、昨年引退したクレイトン・カーショーだ。彼はカーショーに似ている。調子が悪くても、マウンドに上がるものとして試合を何とか作る。ブルージェイズ戦では見ていてしんどそうだなと感じたが、意地でも負けないという雰囲気を彼から感じた。調子が良くなくてもボールの球威、大きな曲がりの変化球をなんとか駆使し、打者を打ち取っていくのだ。
ドジャースの先発ローテーションには山本がいる。タイラー・グラスノーは離脱してしまったが、大谷を含めた3人がサイ・ヤング賞投票の上位3人になってもおかしくない好成績でシーズン序盤は進んだ。もちろん仲間割れするわけではないが、チーム内での競争となれば、大谷が負ける気がしないのだ。
5月上旬には打撃不振に陥り、二刀流の疲労が懸念された。ロバーツ監督は休養日を設定したが、今後も状態を見つつ休養日は設定されていくはず。どちらかを犠牲にするなら打撃だろうが、1年を通して投げ抜くことも重要で、登板を飛ばすことも考えているだろう。今年は投手としてのプレーをメインに進めていく雰囲気を感じる。
(ディラン・ヘルナンデス / Dylan Hernandez)