168cmの西田陸浮が「塁上で引き起こす大混乱」 パワー偏重のMLBで…担当スカウトが惚れ込んだ“能力と人間性”「大きな感銘を受けている」

ホワイトソックスでメジャーデビューを果たした西田陸浮【写真:ロイター】ホワイトソックスでメジャーデビューを果たした西田陸浮【写真:ロイター】

メジャーデビュー戦でいきなり持ち味発揮…「違う土俵」にある存在価値

 ホワイトソックスでメジャー初昇格を果たした西田陸浮外野手が25日(日本時間26日)に本拠地でのツインズ戦でデビューを飾り、地元シカゴに大きなインパクトを与えた。小兵ながらも走攻守3拍子揃った25歳は、いきなり持ち味を発揮。スカウトを担当したジョシュ・クルストゥロビッチ氏は「リクウはパワーとは違った方法で勝負の行方に大きな影響を与えることができる」と、西田の今後に期待を寄せる。

 大阪府出身の西田は宮城の強豪・東北高から米国の短大に当たるコミュニティカレッジに留学。その後、NCAA1部リーグのオレゴン大に編入し、2023年ドラフト11巡目でホワイトソックスに指名され、プロの門をくぐった。身長190センチを超える大型選手がひしめく米球界にあって、168センチと小柄。剛速球や豪快なアーチが称えられるなど、米球界はパワー重視の傾向があるが、西田は自分のプレーに対して「やっぱり長く生きていくには守備かなと。守備と走塁。そこにはこだわってやりたいと思っている」と話し、パワーとは違う土俵で存在感を示そうとしている。

 クルストゥロビッチ氏も「違う土俵」にこそ、西田の存在価値があると考えている。

「今の時代、みんなどうしてもパワーのある打者ばかりに注目しがちですよね。彼らこそが試合の流れを変えられると思いがちですし、確かにそれも一理ある。ただ、ソロホームランを何本打っても、そこには限界があります。やはり、その前に出塁できる選手が必要。リクウは出塁にかけてはピカイチですし、打席で粘り強い姿を見せてくれるので、相手投手に球数を投げさせ、早めの降板に追い込むことができる。こういったことは最近の野球界では過小評価されがちなことですが、試合に大きな影響を与える要素なんです」

 その言葉通り、西田の出塁率は驚異的だ。

 1A(ローA)こそ109試合に出場して出塁率.397と4割にわずか届かなかったが、その後は1A(ハイA)で.436、2Aで.405、3Aで.454という出塁率を記録。特に、つい先日までプレーした3Aでは出場33試合で33得点であることを考えれば、単純計算で1試合に1度はホームに生還していたことになる。

 また、マイナー通算110盗塁という記録からも、スピードを生かしながら積極的に1つ先の塁を狙い、チームの得点チャンスを広げようという姿勢がうかがえる。メジャーデビューとなったツインズ戦でも、4回に二遊間を破る中前打を放つと、隙あらば二塁を陥れよう一塁ベースを大きくオーバーラン。さらには、塁上でも先を狙おうという意欲に溢れる仕草を見せるため、対戦チームや投手にとって非常に厄介な存在だとも言える。これがクルストゥロビッチ氏曰く、「リクウが塁上で引き起こす『大混乱』」なのだ。

「彼の引き起こす大惨事は、野球のボックススコアには記録として残らない種類のもの。目には見えないかもしれないが、数え切れないほど多くの方法で味方にとってプラスとなる影響を試合に与えているんです」

後輩たちに示した第一歩「リクウが切り拓いた道は誰も辿らなかったもの」

 プラスとなる影響は所属チームだけではなく、日本から米球界入りを目指す後輩たちにも与えることになりそうだ。日本の高校を卒業後、米大学に進学してドラフト指名を受け、さらにメジャーデビューまで果たした日本人選手は、西田が初めての例となる。西田自身は「たまたま1人目だっただけ」と謙遜するが、これまで何人もの先達が挑戦しながらも越えられなかった壁を越えた事実は大きな意味を持つ。

メジャーデビューの記念球を披露【写真:佐藤直子】メジャーデビューの記念球を披露【写真:佐藤直子】

 英会話もままならないままに渡米した青年が、コミュニティカレッジからメジャーの舞台まで上り詰めた過程の努力は計り知れない。それをまったく感じさせず、「野球が大好き」と言い切る姿に、クルストゥロビッチ氏は「大きな感銘を受けている」と話す。

「これまで日本から数多くの選手が米球界にやってきたものの、リクウが切り拓いた道は誰も辿らなかったもの。自分のことだけではなく、後に続く他の選手たちのことも気にかけていて、1人でも多くの人がチャンスを掴める場を増やしたいと考えている。人間性も素晴らしい選手だと考えています」

 初対面でも人の懐にスッと入っていけるコミュニケーション能力の高さは素晴らしい。さらに、メジャーで1試合プレーしただけで、地元ファンはおろか、地元メディアの心もすっかり魅了してしまう不思議な力を持つ。メジャーの舞台に定着することは決して簡単なことではないが、西田がどんな「大混乱」を引き起こしてくれるのか、楽しみだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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