腕に刻むポケモンの意味「背景の話も好き。悲しいストーリー」 開幕後に決まった所属先…反骨心の再出発「疑っている人に有能であると証明したい」

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    鉾久真大 2026.05.28
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パドレスで再出発を切ったルーカス・ジオリト【写真:ロイター】パドレスで再出発を切ったルーカス・ジオリト【写真:ロイター】

昨季Rソックスで10勝のジオリト、FAで4月後半まで所属先が決まらず

 いつもより長いオフシーズン。31歳のルーカス・ジオリト投手は、静かに待ち続けた。昨季はレッドソックスで10勝を挙げたが、今季はスプリングトレーニングが始まっても所属チームが決まらない。4月後半に入ってようやく届いたオファー。疑われた実力を再び証明するために……。エンゼルス時代に大谷翔平投手と共闘した右腕は、パドレスで新たなスタートを切っていた。

 不安というよりも、失望を感じていた。「辛抱強く待つしかありませんでした」。2025年11月にフリーエージェント(FA)となったジオリトに、声をかけるチームはなかなか現れなかった。

「自分の立場は分かっていました。昨年の成績、根底にあるデータ、昨年の怪我。自分にとって大きなマイナス要素になるとよく理解していました」

 2024年は右肘内側側副靭帯の手術により全休。2025年は左ハムストリングの負傷で出遅れた。4月末に復帰すると、26試合に先発し、10勝4敗、防御率3.41。しかし、打球初速や角度、与四球や奪三振などを基に算出される防御率「xERA」は5.06で、リーグ下位12%に沈んだ。さらに9月末には再び右肘に違和感を覚え、ポストシーズンを欠場。厳しい冬が待っていることは覚悟していた。

「非常にオープンな気持ちでFAに臨みました」。しかし、市場の反応は思った以上に鈍かった。2月半ばに各球団のスプリングトレーニングが始まっても、ジオリトは無所属のまま。「もちろんスプリングトレーニングの時からここにいられたら良かったんですが……」。自主トレーニングで汗を流しながら、鳴らない電話を見つめる日々が続く。レギュラーシーズンはとうに開幕していた。

抱く反骨心「疑っている人に証明したい」

 4月後半にようやく誘いの声がかかる。FAになった当初から希望リストの上位に入っていたパドレスからだった。すぐに飛びついた。「よし、仕事に取りかかろう」。4月22日(日本時間23日)に契約を締結。1Aと2Aでそれぞれ2試合ずつを投げ、5月17日(同18日)にメジャー昇格を果たした。その日に敵地でのマリナーズ戦に先発し、5回3失点で白星を挙げた。

「9月からの長い時間、メジャーのマウンドで投げていなかったので、あの場に戻ってこられて良い気分です」

 復活したかつてのエースは、密かな反骨心を抱いていた。

「私を疑っている人に対して、自分が非常に有能なメジャーリーグの投手であると証明したいという気持ちは持っています。調子が良くても悪くても、勝つために何が必要か、どう打線を抑えるかを知っている投手であると証明したいと思っています」

 実績は十分だ。メジャー3年目の2018年にホワイトソックスの先発ローテに定着すると、2年連続で2桁勝利。2019年には球宴に出場し、2020年にはノーヒットノーランも達成した。2021、22年はともに11勝と着実に白星を重ね、エースとしての地位を確立。2019年からは3年連続でサイ・ヤング賞の票も入った。

 2023年7月にはトレードでエンゼルスに移籍。大谷がFAを迎える前の最終年で、エンゼルスにとってはプレーオフ(PO)進出を狙った勝負の補強だった。しかし、移籍後は防御率6.89、1勝5敗と苦戦。チームもPO争いから脱落し、主力5選手をウェーバーにかけて放出する“解体”に踏み切った。ジオリトもその1人。ガーディアンズに拾われたが、ここでも防御率7.04、1勝4敗とふるわなかった。

 浮き沈みはあったが、自信を失ったことはなかった。「もう長年やっていますし、どんな調子であれ数多くのイニングを投げてきました。自分なら打者をアウトにできると分かっていました。それは私がプライドを持っていることです」。今季2戦目となった23日(同24日)の本拠地アスレチックス戦も5回無失点と試合を作って2連勝。“無所属”からの巻き返しへ、好スタートを切った。

左腕に入れたタトゥー「初めて捕まえた色違いのポケモン」

 そんなジオリトの左腕には様々なタトゥーが入っている。そのうちの1つがポケモンのカラカラだ。「子どもの頃からポケモンをたくさんプレーしてきました。今もファンです」。カラカラを選んだのは、初めて捕まえた「色違い(shiny)ポケモン」だからだ。

ジオリトの左腕に入ったカラカラのタトゥー【写真:ロイター】ジオリトの左腕に入ったカラカラのタトゥー【写真:ロイター】

「色違いというのは、なかなか出会えない非常にレアなポケモンのことです。幼い頃に確かファイアレッドか何かをプレーしていて、ついに色違いポケモンに遭遇し、捕まえることができたんです。めちゃくちゃ興奮しましたよ。だから大人になって、それを記念したステキなタトゥーを入れたんです」

 説明に熱がこもる。「カラカラの背景の話も好きなんです。お母さんの骨を被っているんですよ。悲しいストーリーです」。大好きなポケモンのおかげで、日本という国にも興味を持つようになった。

エンゼルス時代の大谷翔平(左)とルーカス・ジオリト【写真:ロイター】エンゼルス時代の大谷翔平(左)とルーカス・ジオリト【写真:ロイター】

 2023年は1か月ほどの短い期間だったが、エンゼルスで大谷と同僚だった。いまはパドレスでダルビッシュ有、松井裕樹両投手とチームメート。「日本文化の大ファンなので、日本の食や文化、アートについて話をするのが好きです。いつか本当に日本を行ってみたいんです。旅行か何かでね。もちろん野球の話も自然としますよ。世界共通語ですから」。日本人選手との会話の内容を教えてくれた。

 野球で感じる日本人選手の特徴はあるか。「気づいたのは、日本人選手はみんなとてつもなく努力家だということです。そして、細部にまで注意を払っています。私たち(米国の選手が)みんなが学べることですね」。特に印象に残っているのが、大谷の姿だ。

「ショウヘイとは1か月間一緒にプレーしましたが、彼が取り組む様は、まるでロボットのようでした。本当に規則正しいんですよ。いつもそれを凄いな、と思って見ていました」

 ドジャースは地区優勝を争うライバルだ。18日(同19日)からの今季初の3連戦でジオリトに登板機会はなかったが、まだまだ直接対決は残っている。大谷と対峙する時には、きっと手強い相手になるに違いない。

(鉾久真大 / Masahiro Muku)

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