巨人は「頑張っているとは言えない」 V9戦士が見た“現在地”…忘れてはいけない遺訓

スイッチヒッター柴田勲氏、阿部監督の辞任騒動は「話す事があまりない」
巨人は阿部慎之助・前監督が親子の間でのトラブルで辞任し、交流戦から橋上秀樹オフェンスチーフコーチが監督代行を務めている。シーズン途中での監督退任は史上初めての異例の事態。巨人9連覇の主力でスイッチヒッターの外野手として通算2000安打に到達し、セ・リーグ最多の通算579盗塁もマークした柴田勲氏(82歳)は、今季の後輩たちをどう見詰めているのか―。(記録は6月4日終了時点)
柴田氏は、阿部監督の辞任騒動については「家庭の事情、問題ですからね。よく分からないので話す事があんまりない」と言葉少な。その上で交流戦前までの采配を「阿部が若手を育てながら勝っていきたい気持ちは、よく理解できました。でも、1年間ずっと働いてくれるかというと……。若手を起用したいばかりに打順をぐるぐる変えたりすると、チームが安定した戦いをするのが難しくなるのでは」と懸念していたという。
怪我で5月下旬に離脱したものの、育成から支配下登録された平山功太内野手はハツラツと躍動した。プロ2年目で俊足が売り物の浦田俊輔内野手も持ち味を発揮している。それでも、ジャイアンツで規定打席に到達しているのは、ボビー・ダルベック内野手とトレイ・キャベッジ外野手の両助っ人だけだ。
先発投手陣には奮起を促す。ルーキーながら開幕投手の大役を担った竹丸和幸、37歳の田中将大の内容は良いのだが、規定投球回に到達しているピッチャーがいない。
「田中マー君や楽天から来た35歳の則本(昴大)らベテランに頼らざるを得ないようでは、なかなか苦しい。戸郷(翔征)はちょっとずつ上向いているけど、本調子までには戻ってない。まだまだ投げてみなきゃ分からないかな。若手にとってはチャンスでもあるんだから、誰かもっと出てきて欲しい。『このピッチャーが先発した日は勝てる』という存在が不在なんだよね」
坂本、丸を積極起用せよ 初代オーナーの遺訓「巨人軍は常に強くあれ」です
チームの打率、得点はともにリーグ5番目に沈んでいる。「先発ピッチャーが先に点を取られちゃうと、『あー、きょうは負けかな』という雰囲気が漂う。走者を貯めてダルベックかキャベッジの長打ぐらいしか、得点のイメージが浮かばないんですよ」。
柴田氏は打開策を提言する。「坂本(勇人内野手)と丸(佳浩外野手)はもっと使わなきゃ駄目」。その心は「チーム事情だけでなく、敵のベンチから見て誰をどの打順で起用したら嫌なのか、それも考えないといけないと思います。坂本や丸なら間違ったらホームランがある。2人が打線に入った方が相手からすれば、よっぽど怖いはずですよ」。
37歳の坂本は5月13日に福井で開催された広島戦で、通算300号を逆転サヨナラ弾で決めた。丸も長嶋茂雄さんの一周忌だった6月3日のオリックス戦(東京ドーム)で代打逆転満塁本塁打を放った。「怪我さえしなければ、年間の最後にはそれなりの成績を残しているのがレギュラー。坂本だって、ずーっと使ってもらって結果が出なければ自分で考えるでしょう」。幾多の修羅場を潜り抜けてきた両ベテランの経験値を買う。交流戦から指揮を執る橋上監督代行は、阿部采配からの変化を示しつつある。5月27日のソフトバンク戦(東京ドーム)で、坂本と丸を今季初めて同時にスタメンに並べた。
ジャイアンツは現在、貯金5でセ・リーグ3位。巨人には初代オーナー正力松太郎氏の遺訓として3つの哲学がある。柴田氏は「一番最初は『巨人軍は常に強くあれ』です」と、そらんじる。「阪神は3、4、5番の中軸がしっかりしているし、ヤクルトもよくやっている。今年の巨人が頑張っているとは言えないなぁ。強くないですよ。巨人は強くなきゃいけません」。優勝を期待するが故に、あえて辛口で叱咤激励する。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)