2軍落ちで「自分を疑うことから」 DeNA伊勢大夢が取り戻した直球…「おふざけ半分」の練習がもたらした“ヒント”

DeNA・伊勢大夢【写真:井上学 】DeNA・伊勢大夢【写真:井上学 】

防御率5.19で5月4日に2軍落ち→31日の復帰後4試合で無失点

「伊勢大明神」が帰ってきた。5月31日に1軍に再昇格したDeNAの伊勢大夢投手が、復帰後4登板で計4イニングを投げ2安打無失点4奪三振。見違えるような真っすぐで制圧している。防御率5.19で5月4日に出場選手登録を抹消されてから1か月弱。背番号13はどんな日々を過ごし、いかにして直球を蘇らせたのだろうか。

「まず、今までの自分を疑うことから始めました」

 伊勢の口から出たのは、意外な言葉だった。2019年ドラフト3位で入団し、ルーキーイヤーから33登板で防御率1.80の好成績。2022年には71登板で防御率1.72とチームを支え続けてきた。

 たしかにここ数年の成績は当時ほど芳しくない。とはいえ、これだけの実績があるのだから“あのときに戻す”という選択肢もあったはず。だが首を横に振る。

「たぶん、“ある程度”だったらできると思います。でもいろいろ妄想して、イメージしてみたんです。そうしたら、『これ、終わるわ』って。この先、自分が圧倒している姿が全く想像できなかったんです。高い給料をもらっていて、それに見合った活躍ができないなって。やっぱりここ2、3年ずっと良くはなかったから、じゃあもう、全部変えないといけないと思いました」

「僕が求めていたのは、1軍に戻れるレベルではなく、1軍でも上のレベル」

 それが「自分を疑うこと」だった。入来祐作2軍チーフ投手戦術・育成コーチ、八木快2軍投手戦術・育成コーチ、さらに経験豊富な藤浪晋太郎投手らとも頻繁に意見交換した。2軍では4試合計4イニングを投げ、わずか1安打無失点5奪三振。150キロと球速もしっかりあり、1軍へのGOサインは出ていた。でも自身の感覚は違った。「僕が求めていたのは、1軍に戻れるレベルではなく、1軍でも上のレベル。ずっとそれを考えて、探していました」。

 見つかったのは、意外なタイミングだった。ファーム交流戦、オイシックス戦のための新潟遠征に同行するも、5月29日に長岡悠久山で予定されていた一戦は悪天候により中止となり、雨の中、キャッチボールを行っていたときだ。

「おふざけ半分に、ちょっと東(克樹)さんの真似をしながら投げたら、めっちゃいい球が投げられて。感覚もいいし、そこからどの変化球を投げても緩むことがなかったので『あ、これだ』って思いました」

 変えたのは立ち方の角度。これまでは「綺麗に立ちたい」ということを意識して投げていたが、体を突っ込み気味に投げるようにした。「今までは無意識でやっていたポイントでした。ルーキーの時しかやっていなくて、しんどい投げ方なんですけどやってみようかなって」。ようやく光が差した。次の登板で試そうと思った矢先、5月31日に1軍復帰。実戦では同日の1軍登板が“ぶっつけ”となった。

「すぐ実戦で投げてハマって。投げるたびにフォームが固まって、どんどん良くなっています。見つけたのは自分ですけど、いろいろな人との会話の中にヒントはいっぱい落ちていたと思うので感謝したいです」

体の数値はほぼキャリアハイ「ハマれば良くなるとは思っていました」

 実は、“ヒント”さえ見つかれば、急速に良くなるであろうという根拠は持っていた。今年は瞬発力やジャンプ系、パワー系など例年計測する体の数値がほぼ全てキャリアハイとなっていたのだ。「体の状態はずっと良かったので、ハマれば良くなるとは思っていました」。だからこそ、“超復活”にも繋がった。

5月2日のヤクルト戦に登板するも、サヨナラ負けを喫した伊勢大夢【写真:加治屋友輝 】5月2日のヤクルト戦に登板するも、サヨナラ負けを喫した伊勢大夢【写真:加治屋友輝 】

 5月2日のヤクルト戦(神宮)、5-5の9回に登板も1/3回を2安打1失点でサヨナラ負けを喫した。「あのときは、全部受け身でした。アウトになってくれ、ストライクのコールをしてくれ、って。打ち損じを待っている状態」と当時の心境を吐露する。それが今や「打者は打ち損じと思っているかも知れないけど、僕の中では差し込めている感覚があります」とうなずいた。

 そして、ふっと笑った。

「奇跡みたいなもんですよ。やっと……だいぶ、楽しめるかな。こう見えて、結構しんどかったんですよ」

 ようやく取り戻した自信。背番号13が、苦しむチームを救う。

(町田利衣 / Rie Machida)

RECOMMEND

CATEGORY