今季、ナ・リーグ中地区の上位を争っているチームのひとつが、ピッツバーグを本拠地とするパイレーツだ。昨年はチームの打撃成績が軒並み最下位付近だったが、今季は一転上位に。昨年から打撃コーチを務めるマット・ヘイグコーチがその原因を明かす【今季成績は全て13日(日本時間14日)時点】。
ヘイグコーチは2016年に阪神でプレー。前年の2015年にブルージェイズ3Aで打率.338、11本塁打92打点の成績を残し、マット・マートンの後釜として加入した。阪神は金本政権1年目。開幕戦は「3番・三塁」で出場した。
2017年以降、4位以下が続くチームは、昨年はチーム打率、安打数がメジャー30球団中28位、打点と得点数は同30位と打力に苦戦。しかし今季は安打数が同3位、打点と得点が同5位、打率は同6位と軒並み上位に位置している。
1年目はまず関係性の構築に時間を割いた。前年まではブルージェイズにいたため、選手とコミュニケーションを取りながら長所と短所を把握。その効果は早くも表れている。
「関係が深まるにつれて、より選手個人の深い部分に踏み込めるようになるからね。具体的に指導してきたのは、トップへ動いていく形、そしてセットアップ(構え)だ。それから、自分たちで作ったプロセスを選手たち自身が責任を持って徹底し、続けられるようにすることだ」
チームトップの打率を残すゴンザレスの飛躍につながったアプローチ
本拠地のPNCパークは、右翼までの距離が320フィート(約97.5メートル)と短く、左打者優位の球場。昨オフにブランドン・ロウ、ライアン・オハーンといった左打者を獲得できたことも打撃成績向上の理由のひとつだ。
また、今季は27歳のニック・ゴンザレス内野手がチーム内トップ(規定打席以上)の打率.296を残すなど好調。ヘイグコーチらとともに、構えの変更に取り組んできた。
「セットアップをきれいに修正し、(スイングのプロセスにおける理想の)形に近づけるよう取り組んだ。無駄な動きを省いて効率的なスイングにすることで、彼が本来持っている手のスピードを活かせるようにしたんだ」
コーチングを行うようになり、改めて2016年に間近でみた日本人選手の器用さに驚いているという。
日本で苦しんだストライクゾーンの違い…忘れぬ「マインドトリック」
「私が思うのは、日本のバッターがいかに運動能力が高いかということ。非常に管理されていて、安定している。日本でプレーしていた当時は、なぜ彼らがそんな動きをできるのか理屈までは分かっていなかった。(今、指導する立場になって)『だから日本は世界の舞台でいつも強いんだ』と色々なピースが繋がるようになったんだ」
阪神ではストライクゾーンの違いや変化球に苦しみ、結果を残せなかった。「私自身、もっと現役時代に早く知っておきたかったと思うことなんだが、日本の投手は高低差をカモフラージュするのがうまい。ホップするようなストレートや、スプリットもある。打者の目に『マインドトリック(心理的な視覚の罠)』を仕掛けることができるんだ」。日本で苦戦したという経験も、若手選手を指導する際の手札のひとつになっている。
ナ・リーグ中地区は現在ブルワーズが首位を走り、パイレーツとカブス、カージナルスが接戦となっている。目指すのは2015年以来のプレーオフ。「もちろんチャンスはあると思っているよ。自分たちの野球ができているときは、結果が出ているからね。大事なのは一貫性。若いチームだからこれからも成長していかないといけない」。チームの躍進へ、元阪神助っ人が汗を流している。