“164センチ”が最大の武器になる 仁志コーチが滝澤夏央に見た「菊池涼介超え」の可能性

“パパパ!”と素早くボールを処理する西武・滝澤夏央【写真:加治屋友輝】“パパパ!”と素早くボールを処理する西武・滝澤夏央【写真:加治屋友輝】

二塁手でGG賞4度の“目線”で仁志コーチが滝澤を語った

 164センチ、65キロの小柄な体格でグラウンド内を縦横無尽に駆け回り、西武の人気選手へと成長した滝澤夏央内野手。スピードと驚異的な守備範囲で源田壮亮内野手からの“世代交代”さえ囁かれる22歳逸材の凄みとはいったいどこにあるのか――。現役時代に二塁手として4度のゴールデン・グラブ賞を誇る仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチから、興味深い“証言”が次々と飛び出した。

 滝澤は2021年ドラフトで育成2位指名で新潟・関根学園高から西武に入団すると、1年目に支配下登録された。当初から高い守備力は注目されていたが、1軍ではインパクトのある成績を残せずにいた。

 一気に開花したのは昨シーズンだ。源田の怪我の影響もあり出場機会をつかむと、遊撃手や二塁手として大活躍。打率は「.234」にとどまったが、125試合に出場してチーム2位の21盗塁をマークし監督推薦でオールスターゲーム出場も果たした。

 自慢の守備力はデータが証明する。セイバーメトリクスの観点からプロ野球の分析を行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)によると、400イニング以上で守備に就いた遊撃手のなかで、滝澤の守備範囲を示す指標「レンジファクター(RF)」はリーグトップの「4.62」で源田の「4.29」を上回った。二塁手としても同じ条件でRF「5.51」は同トップだった。

 今季もほぼ二塁と遊撃で先発出場しており、球場を沸かせるような好守備を連発。走ってはチームトップタイの6盗塁。課題だった打撃も打率.286と改善している。

昨年までは打撃で「力負けしていた」

 今や欠かせぬ存在となっている5年目の滝澤は、仁志コーチの目にはどう映っているのか。走攻守で充実している若獅子の魅力を問うと「いろいろあるんだけど……」とした上で、真っ先に挙げたポイントは意外だったが、それでいて職人気質の仁志コーチらしい評価だった。

「まずバントがうまい。抜群にバントがうまいんだよ。セーフティバントをやらせたら、ほぼほぼ失敗しない。送りバントなんて特にそうだよ」

 昨季はリーグ最多に1個差だった23犠打をマーク。今季もここまで海野隆司捕手(ソフトバンク)と並ぶ同トップの11個を決めている。

バントや打席での対応力にも頼もしさ【写真:加治屋友輝】バントや打席での対応力にも頼もしさ【写真:加治屋友輝】

 さらに打率の向上につながっているのが、打席内での対応力の変化だ。「追い込まれてからの強さかな」。ツーストライクからファウルで粘りつつ、球種やコース、状況に応じてしっかり前に打ち返すこともできているという。

「これまでは、いざ打とうと思った時にパワー不足で力負けして詰まったり、ポップフライになったりしていたんだけど、今はミート力がついた。何を変えたというわけでもなく、本人の努力。練習でも強く打とうとしているしね」

 自身も現役時代は華麗な右打ちなどチーム打撃に徹していた。それでいて甘い球は狙いすましたかのように長打を放つ。いわゆる“いやらしい”打者でもあった。「昔はそういう人いっぱいいたけど、今はみんなガンガン振るので、そういうキャラの人って少ないよね。だけど、ナツオ(滝澤)は、それを地道な練習で強みにしているんで」。少し誇らしげに語った。

「体が小さいのは利点になる」

 気になる守備位置の適性についても直撃した。

「本人も言っているようだけど、やっぱりセカンドで行くことが俺はいいかなと思うよ。スローイングとか彼の持つ器用さを含めるとセカンドとしてスーパーになれるかなと思う」

 遊撃手としても十分すぎるプレーを披露しているが、二塁手の方が“生きる”のだという。「体が小さいのは利点になる。捕って回転するとか、小さく速く動くことが求められるので。ショートでもいいんだけど、セカンドの方が体格をうまく生かせると思う」。

 小柄な体格こそ、無二の武器。二塁手としての素質を高く評価している仁志コーチは「本当に菊池を超えるようなセカンドになれるんじゃないかなと思っている」と真剣な表情。2020年に二塁手として異例の守備率10割を記録するなど、2022年まで10年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得した守備職人の名前を挙げた。

 滝澤には身近な守備の天才として源田がいるが、仁志コーチは「全然タイプは違う」と語る。「ゲン(源田)は独特のショートで、なんと言うか、捕る時のボールとグラブの距離感をすごくうまく使う選手。ナツオはもう本当に小さく速く、体に近いところで“パパパ!”って処理するタイプかな」。

 好調の西武を支える鉄壁の二遊間に、さらなる進化の予感が漂っている。仁志コーチが太鼓判を押した逸材が、今季どこまで駆け上がるか。164センチの小兵が、球界に新たな旋風を巻き起こそうとしている。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

RECOMMEND

CATEGORY