今季加入したヒュンメルは5月21試合で月間打率.149と苦しんだ
外国人選手が日本野球に適応することは、決して容易いものではない。メジャー通算119試合に出場し、今季からDeNAに加入したクーパー・ヒュンメル外野手も“壁”にぶつかっている。
3、4月は24試合で打率.242、2本塁打、10打点、OPS.722と及第点のスタートを切った。4月12日の広島戦(横浜)では待望の来日初アーチも放ち、上昇気流に乗るはずだった。しかし5月は21試合で同.149、1本塁打、4打点、OPS.471に沈み、「自分にとって苦しい1か月で、暗い気分になり、メンタル的にも少しきつかったです」と吐露する。
幼少期に親の仕事の都合で日本に住み、武蔵府中のリトルリーグでプレーした経験を持つ。打席に入るときにはヘルメットのつばに手を当てペコリとお辞儀。報道陣にも「オハヨウゴザイマス」「アリガトウゴザイマス」と挨拶を欠かさない。いつも陽気な超ナイスガイ助っ人の表情が、曇る一方だった。
象徴的だったのは、5月30日の西武戦(ベルーナドーム)だ。来日初の4番に座るも、4打席4三振。そればかりか、右翼の守備でも落球を犯した。試合も0-6で完敗。ナインがロッカールームに引き揚げる中、しばらくベンチに座ったまま動くことができず、呆然とグラウンドを見つめるしかなかった。
スイッチヒッターの“宿命”「1週間立たないときもある」
あのとき何を考えていたのか――。ヒュンメルが静かに口を開いた。
「西武との試合では、打席でも三振をたくさんしてしまって、守備の時にはエラーをしてしまうという部分で、かなり悔しい1日でした。自分の成績が伴っていなかったのと、チームが求めているものに対して貢献できていなかった。自分に対してきつく当たりすぎてしまった部分もありました」
両打ちだが、対右投手の打率.159(63打数10安打)に対して、対左投手の打率.276(58打数16安打)と課題は明確だ。当然ながら毎日のスタメンが確約されているわけではなく、打席数が減るほどにまた、難しさを感じている。
「スイッチヒッターとして、左打席で1週間(打席に)立たないときもあれば、右打席で1週間立たないときもあるので、いろいろそういった部分も……。でも今のチーム状況を考えると、スタメンに本当に優秀な打者が多いので、どうしても出場機会が限られてしまったり偏ってしまうのは仕方ないことだとわかっているんですけど。やはり野球って難しいスポーツで、バッティングって本当に難しいです」
結果が出ない悔しさやもどかしさ。それでも次の試合はやってくる。約4年前から個人契約を結ぶメンタルトレーナーに相談して心を保ち「彼がとても支えになっていた」と感謝した。
6月5日ソフトバンク戦で本拠地初ヒーロー「最高の1日になりました」
家族の存在も大きかった。最愛の妻と愛娘も一緒に日本で暮らし、休日には観光にも出かけるのが息抜きだ。そして家族のストーリーとも結びつく、Trace Adkinseの名曲「You’re Gonnna Miss This」に背中を押された。
「曲の内容は、子育てをする大変さはあるけど、子どもが育つのは一瞬で、その時間を大切にしようという意味が込められています。自分にとっても、今の恵まれている環境、幸せな1日はすぐに終わってしまう。そういった意味で1日1日を大切にしていくことで、結果が伴ってくると信じてやってきました。野球選手でいられるのも、ユニホームを着ていられる時間も、今だけしかないと思いますし、いつか今過ごしているこの時間のことが恋しく思うことがあると思うので、自分に重なると思って気に入っている曲なんです」
苦しんだ5月を終え、6月5日のソフトバンク戦。5回の第3打席に左越えソロを放った。5月2日以来となった一発に、「安堵の気持ちもありました」とホッとした表情を浮かべると、本拠地で初めて立ったお立ち台で叫んだ。
「最高の1日になりました! ベイスターズの一員でいられることが本当にうれしいですし、ここでプレーできていることに幸せを感じています」
6月はまだ9試合の出場ながら、打率.333(12打数4安打)、1本塁打、3打点、OPS1.133をマークする。「出場させてもらうことに感謝の気持ちがありますし、起用してもらうからには貢献したい。これからもチームに貢献することを続けていきたいと思います」。そう話す表情は、以前のように穏やかで優しかった。
(町田利衣 / Rie Machida)