20代女性の“日常”に「ライオンズが入り込んでいく」 好評企画が続々…“仕掛け人”の狙い

西武ナイン【写真:小林靖】
西武ナイン【写真:小林靖】

観戦体験を拡張する、新たな仕掛けづくり

 プロ野球観戦において、その楽しみは試合そのものにとどまらない。グルメやグッズ、多彩なイベントなど、 球場は誰もが楽しめるエンターテインメント空間へと進化している。その裏側には、新たな仕掛けづくりに挑む人々がいるのだ。

 株式会社西武ライオンズの事業部エンターテインメントグループに所属する佐藤諒さんは、大学卒業後、飲料メーカーの営業として約3年間にわたって営業職を務めたが、会社の統合や組織変更を機に、自身の今後を見つめ直した。

 もともとプロ野球が好きで、大学時代の4年間はある球場で警備や、観客の案内など、オペレーション業務のアルバイトをしていた。「また野球の仕事に携わりたい」という思いから、学生の頃からファンだった西武の求人に応募し、2016年に転職した。

 入社後はグッズの販売や企画を行うMDグループで5年間経験を積み、その後、事業部エンターテインメントグループへ異動。現在は、来場者配布グッズの企画を1人で担当している。なかでも印象に残っているのが、イベント限定ユニホームの配布日だ。

「ユニホームの配布日は、ファンのみなさんがそれを着て応援してくださいます。スタンドがそのユニホーム一色に染まる光景を最初に見たときはとても感動しました。また、選手が着用するユニホームも企画します。自分が企画したユニホームを着て選手がプレーしている姿を、テレビや球場で見られるのは魅力的だなと思いますし、この仕事をやっていて良かったと感じる瞬間ですね」

株式会社西武ライオンズ 事業部 エンターテインメントグループ 佐藤諒さん【写真:球団提供】
株式会社西武ライオンズ 事業部 エンターテインメントグループ 佐藤諒さん【写真:球団提供】

“生の声”を大事に、ターゲット層へアプローチ

 特に思い入れがあるのは、初めて企画を任された2024年の「西武ブルーシリーズ」。ホームユニホームのデザインをベースに、ロゴやキャップには、球団創立時から受け継がれてきた「ライオンズブルー」をあしらった。ファンから好評の声を受けたことも強く心に残っている。

 近年、エンターテインメントグループでは20代の女性をターゲットにしたイベントを実施している。今年5月には、ファッションかつ「ブルーデニム」をテーマとした「おめかしシリーズ」を開催。さらに、7月には韓国・ソウル発、Z世代のトレンドとなっているヘッドウェアブランド「VARZAR(バザール)」とのコラボシリーズも控えている。

「おめかしシリーズ」の開催にあたり、SNSでファンの反響を呼んだのが、同シリーズの企画担当と佐藤さんが一緒に手がけた来場者配布グッズだ。若い世代を中心に人気のブランド「CITEN(シテン)」とコラボしたメタリックバッグ、日本最大級のファッションフェスタ「東京ガールズコレクション」とコラボしたタンブラーは、実用的かつトレンドを捉えたデザインが好評を博した。

「野球を知らなくても、コラボするブランドやゲストが好きな方々に、球場へ来てもらうきっかけになればと。プロ野球、ライオンズから発信していても、どうしても届かない層が多いので、20代女性が普段目にしているものの中に、ライオンズが入り込んでいくことが重要だと思っています」

 実際に「おめかしシリーズ」開催日は、ターゲットである20代女性が数多く来場し、手応えを感じたという。このような施策に向け、佐藤さんは日頃からの情報収集を欠かさない。

「ターゲット層の間で人気のものや流行しているものは、仕事以外の日でも常にアンテナを張っています。ただ、女性向けのものなど私が知り得ないものに関しては、友人や流行に敏感な方にヒアリングしますね。SNSだけではわからないこともあるので、生の声を聞くことを重要視しています」

「CITEN×LIONS メタリックバッグ」を持った滝澤夏央(左)と「東京ガールズコレクション × LIONS コラボレーションタンブラー」【写真提供:(C)SEIBU Lions】
「CITEN×LIONS メタリックバッグ」を持った滝澤夏央(左)と「東京ガールズコレクション × LIONS コラボレーションタンブラー」【写真提供:(C)SEIBU Lions】

勝敗に左右されない価値づくりを目指して

 イベントの開催や来場者配布グッズの企画を通して、球場へ足を運ぶきっかけをつくるエンターテインメントグループの仕事。ライオンズが勝っても負けても「また行きたい」と思ってもらえるような、観戦体験の価値を高める取り組みを行っていく。

「選手には常に満員の球場のなかでプレーしてほしいという思いがあるので、チームの勝敗に左右されない魅力的なイベントや来場者配布グッズをきっかけに、たくさんのお客さまにベルーナドームへ来ていただきたいと思っています」

 そして「他球団がやっていないこと」「ライオンズだからできること」を実現できる環境がある。独自のエンタメ価値をさらに創出するため、常に新しいことに挑戦する積極性とポジティブな姿勢が必要だ。ファンを楽しませるために、まずは自分自身がこの仕事を心から楽しむ気持ちが大切だという。

「エンターテインメントグループは流行や楽しいことといった、興行のなかで核となる部分を考えるところだと思います。受動的になると『仕事が楽しくない』と感じてしまうと思うので、どんどん進んで取り組めるほうがいいですね」

 佐藤さんが考えるこの仕事のやりがいは、チーム全員がライオンズという存在を深く愛していることにある。「ライオンズが好きだからこそ、ファンのニーズに寄り添った企画が生まれるのだと思います」と語る。

 ファン目線を重視する一方で、球団で働く以上、意識を切り替えることの重要性も強調した。チームの調子が良いときも悪いときも、変わらずに自分のやるべきことに集中する。それこそが、勝敗に左右されない価値をつくるエンターテインメントグループのあり方だ。

(「パ・リーグ インサイト」編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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