佐々木朗希が勝てないワケ 専門家が指摘した“選択肢”…伝家の宝刀も「危険な球になる」

新井宏昌氏が明かした佐々木の懸念点「長打がつきまとう」
好調だった右腕の投球が突然、暗転した。ドジャース・佐々木朗希投手は19日(日本時間20日)、本拠地で行われたオリオールズ戦に先発登板。5回まで1安打無失点とほぼ完璧な投球も、3点リードの6回に2本の本塁打を浴び、3失点で降板し4勝目を逃した。チームは2点を追う9回に3点を奪い逆転サヨナラ勝ち。劇的勝利に沸いたが、佐々木には課題が残るマウンドとなった。
初回、先頭のウォードに右中間へ安打を許したが、中堅・パヘスの好返球で二塁タッチアウト。これで勢いに乗ると、2回から4回は3者凡退に仕留めた。5回2死から四球を与えて久々に走者を背負ったが、慌てず後続を断って無失点。勝利投手の権利を持ったまま、6回のマウンドに向かった。
先頭のホリデーに左前打されたものの、ジャクソンを中飛、ウォードは空振り三振で2死。だが、3つ目のアウトが取れなかった。ヘンダーソンに1ボールからカウントを取りにいった2球目の内角スプリットを捉えられ、右越え2ラン。1点差に迫られると、続くアロンソにはカウント1-1からの98マイル(約157.7キロ)の内角直球を左越えに被弾。同点に追いつかれ、ここでマウンドを降りた。
5回までの快投が一転、2者連続アーチを浴びて降板。4勝目を逃した投球に、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏は「調子は良かったです。ただ、球種が少ない投手にありがちな打たれ方になってしまいました」と課題を指摘した。
「立ち上がりから160キロを超える球も多く、制球も悪くありませんでした。ただ佐々木投手の場合、相手打者に、フォーシームとスプリットの2択で待たれます。そうなると、焦点を合わせられてしまうので、どうしても長打がつきまとう。そこは紙一重で、三振も多く取れる力があるんですけど、痛いところで一発を打たれることも多いんです」
投球の軸となる直球は160キロを超えて威力十分。スプリットも大きな武器になっている。ただ、割合が増えれば増えるほど、打者の目は慣れ、球種を読まれる確率も高くなる。アロンソに打たれた直球は内角ギリギリを捉えられたもので「コースはいいけど、メジャーは157、158キロを投げる投手も多い。少し球速が落ちるとパワーで持っていかれる」と分析した。
スプリットの使い方にも注文「危険な球に」
さらに新井氏はスプリットの使い方にも注文をつけた。「佐々木投手はカウントを整えるため、高めからストライクゾーンにスプリットを投げることも多い。それが投げミスで甘く入ると危険な球になります。低めのボールゾーンに投げられれば、この試合のようなホームランは少なくなるんですけど……」。中盤で疲れが出始めると、微妙に制球が狂って甘く入ることを懸念する。
同僚の山本由伸投手を引き合いに「同じくスプリットを多く投げる山本投手は、たまに投げ損なって甘くいくことはあっても、基本的には低めからボールになるスプリットを投げます」と説明。「同じスプリットでも使い方が違います。山本投手は他にも横の変化球がありますし、そこにも違いがあります」とエース級の活躍を続ける右腕との“差”に言及した。
佐々木はスライダーも投げるが、縦に鋭く曲がるイメージで「スプリットと、あまり変わらない感じがします」と新井氏は語る。投球の幅を広げるためには「例えば直球系のシンカー、カットボールなど、横に曲がる変化球をマスターする必要があると感じます」と的を絞らせないための新球種の習得を推奨する。
「このままだと、いい状態で投球しながら勝利投手になれない試合がまた出てきます。佐々木投手の場合は、いつもそんな心配がつきまといます。だからもう1つ、横に動くような球種が欲しいなと思います」
持っているポテンシャルは疑いようもない。直球とスプリットも、球種単体で見れば素晴らしい。ただ、それで勝てるほどメジャーは甘くない。勝利投手をつかみ取るには、まだ物足りない部分があるのも事実。さらなる成長を期待するからこその新井氏の提言だった。
(尾辻剛 / Go Otsuji)