入団前TJ手術で走れず“激太り”、同期は全員1軍デビュー… 2年目で初実戦へ、DeNA坂口翔颯が描き続けた景色

トミー・ジョン手術からの復活を目指す坂口翔颯【写真:町田利衣】トミー・ジョン手術からの復活を目指す坂口翔颯【写真:町田利衣】

6月に2度ライブBPに登板、ついにプロ2年目で初の実戦マウンドに立つ

 ユニホームを着て、マウンドからボールを投げる喜びを噛み締めている。「『やっと』ですね。本当に長かったですし、『ああ、楽しいな』って。野球ができているなって感じです」。プロ2年目ながらいまだ1、2軍通じて実戦登板がないDeNAの坂口翔颯(かすが)投手。ついに“そのとき”が近付いてきた。

 6月に入り、実戦形式の投球練習「ライブBP」に2度、登板した。打者相手に投げるのは大学4年だった2024年10月23日以来。1年半ぶりの“勝負”に「こんな感じだったな」と笑うと、「出力はまだ完全には戻っていないですけど、もともと不器用なタイプではないので、制球や変化球の感覚はそんなになくなっていなかったです。投げる数を積んでいけば出力も戻るかなと思っていて、今のところ順調です」と充実の汗を拭った。

 2024年ドラフト6位で国学院大から入団した。“戦国東都”で大学1年春からベンチ入りし、1年秋には最優秀投手、ベストナインに輝いたポテンシャルを誇る。しかし右肘に不安を抱えており、大学4年の5月のブルペン投球で強い違和感を覚えたという。ドラフト会議前に肘の状況を公開。それでもDeNAは支配下で指名し、同年12月に異例の入団前ながらトミー・ジョン(TJ)手術に踏み切った。

 一般的に復帰まで12~15か月かかると言われているTJ手術。ルーキーイヤーはリハビリに費やすことになるのはわかっていた。それでも襲いかかる現実に、目を背けたくなるようなこともあった。

「言い方はよくないかもしれないですけど、あまり面白くはなかったです。好きな野球ができないですし……。わかっていたことなので焦りはなかったですけど、シンプルに野球がしたいなって感じで面白くはなかったです」

「入寮してめちゃくちゃ太ったんです。まん丸になってしまいました」

 腱は足から移植したため、最初は走ることもできなかった。「だから入寮してめちゃくちゃ太ったんです。大学時代に84キロだったのが94キロくらいまでいって、まん丸になってしまいました」。そこからまずは体を絞り、その後重点的にトレーニングに取り組んだ。

ドラフト前に肘の状態を公開し、入団前に手術を受けた【写真:町田利衣】ドラフト前に肘の状態を公開し、入団前に手術を受けた【写真:町田利衣】

「それまではウエートをガチガチにやったことがなくて、投げながら体を強くするやり方でした。でもその期間はボールを投げられなかった分、野球のパフォーマンスをそんなに考えなくていいので、一度筋肉を上げることに全振りできたのはよかったと思います」

 体重は大学時代と同じ84キロながら、体脂肪率は当時より3〜4%落ち、筋肉量はアップ。まずはプロで戦える体をつくり上げた。

 それでも1年半に及ぶリハビリ生活は、ずっと順調だったわけではない。「結構痛みが続いている時期があって『本当に治るのかな』と思った時期もありました。同期はみんな1軍で出たりして……」。ドラフト同期は坂口以外、支配下の5選手が1年目から1軍の舞台を経験した。思うようによくならない右腕が、もどかしかった。

1年目の春季キャンプで刻み込んだ「景色だけでも見ておこうと」

 そんなとき、いつも思い浮かべるのは復帰したときの自分の姿だった。1年目の2月の春季キャンプ。ボールは投げられなかったが、2軍キャンプ地・奄美大島のマウンドでシャドーピッチングを行い、その景色を目に、体に刻み込んでいた。

リハビリは順調に進んでいる【写真:町田利衣】リハビリは順調に進んでいる【写真:町田利衣】

「目から入る情報は人間にとってすごく大きいので、大学の最後の登板から一切その景色を見ずにいきなりマウンドに上がると慣れていなくてビックリすると思ったんです。だから景色だけでも見ておこうという感じでした」

 想像し続けた自分の姿が、いよいよ現実のものになる。

「いやもう、楽しみでしかないです。まずファームからですけど、自分がプロ野球の世界でどれだけできるんだろうという楽しみしかなくて、不安は全くないです。ワクワクというか、それをモチベーションにやってきたので。早く来てほしいなという感じです」

 あくまでもまだ、リハビリの途中。それでもポテンシャル抜群の背番号46がその名を轟かせる日は、着実に近付いている。

(町田利衣 / Rie Machida)

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