敦賀気比高から2023年育成ドラ1で入団「継続してきたことが結果に」
DeNAの育成3年目・高見澤郁魅(いくみ)内野手が面白い。ファームで35試合に出場して打率.343、OPS.829。規定打席は未到達ながら、100打席以上の選手の中では打率6位にランクインしている。
敦賀気比高から2023年育成ドラフト1位で入団。1年目は2軍45試合で打率.255、1本塁打、2年目は52試合で打率.258、2本塁打であったことを考えれば、着実に成長していることがわかる。
「自分ではそこまで大きく変えたつもりはないんですけど、1つ言えるとすればやっとボールに見慣れてきて、自分のしたいことが3年目でようやくできるようになったかなと思います。継続してきたことが結果に繋がっているかなって感じです」
クールに自己分析するが、取り組みは確実に“形”となっている。まずは打撃フォーム。広島一筋24年で通算2119安打を放った“天才打者”前田智徳氏を彷彿させる。その“出会い”は意外なところにあった。
ある日、移動のチームバスの中で有働克也2軍データアナリスト兼育成アナリストから「お前、似ているよ」と言われた。前田氏は2013年限りで現役を引退しているため、実際の打撃を見たことはない。それでもYouTubeで打撃映像を見てみると「いいな」と感じたという。
「スイングの軌道、スイングの仕方が僕に近かったんです」
「これまであまり周りの選手は見ないようにしていたんですけど、凄く参考になるというか。スイングの軌道、スイングの仕方が僕がもともとやっていたものに近かったんです。あくまで参考ですけど、それから自然と似てきたんだと思います。いいヒントをもらって、なかなかない出会いですよね」
もうひとつが、鍛え上げられた体だ。「だいぶ仕上がってますよね」とニヤリと笑う通り、入団時78キロほどだった体重は、現在98キロ。プロ入りから2年半で実に20キロも増えたことになる。「食事は普通においしくいただいていただけで、むしろ増えやすいので気をつけているんですけど、トレーニングが好きなので。とにかくやるのが好きなんでこうなりました」。昨オフには牧秀悟内野手の自主トレに参加して下半身を中心に鍛え上げた。太腿周りはパンパン。一回りどころではなく逞しさを増した。
守備位置は主に一塁と三塁。支配下、さらに1軍を見据える上でハードルは高い。特に猛特訓を重ねる一塁守備で、左手にはめるファーストミットは藤田一也1軍内野守備走塁戦術・育成兼ベースコーチのものだ。昨季までは2軍で担当コーチとして接しており、借りたときに使いやすかったことがキッカケだった。「ほぼもらったみたいになっていますけど」と笑うが、“師匠”の思いも胸に練習に励む。
村田修一2軍監督は「コンタクト率は高いですけど、足と守備がめちゃくちゃいいわけではないので、プラスアルファで、得点圏打率が高いとか、長打がついてくるとか。2つないとプロとしてもうワンランク上がらないよという話は本人ともしています」と求める。
その上で「僕は長打が必要なんじゃないかと思います。本塁打は打たなくていいので、二塁打以上。コンタクト率があるので、もう少し角度が出るのか、打球速度を出すのかで変わってくる。一塁にいてもヒットで三塁に行けない可能性があるから、だったら二塁まで行けるような取り組みももうちょっとしたほうがいいんじゃない、という話はしています」と説明した。
元オリの父・考史さんには「ありがたいというか、救われたところも」
高見澤自身も「打力が求められるポジションなので、長打力を伸ばさないといけない」と身に染みて感じている。育成3年目。支配下登録の期限は7月末までに迫る。20歳の若武者は「もちろん支配下になりたいですけど、そこに懸けすぎずって感じです。来年に向けての自分の課題も潰していきながら、目標を持って試合に出られるように」と足元を見つめた。
父・考史さんは2000年ドラフト6位でオリックス入りし、プロ3年間で通算68試合に出場して43安打を放った。「親父はあまり見ていないみたいで、連絡も全然。僕からします」と言うが、思いがけない“金言”もあった。
「『もう、来たボールを打っちゃえばいいんだよ』とか言ってくるんです。でも、終わった人にしか気付けないことってあるじゃないですか。最近、いろいろ考えたときにそこに行き着いた感じがあって。親父、ふざけているんですけど、ありがたいというか救われたところもあったんです」
急激に進化を遂げながらも、まだまだ伸びしろ十分。「いくみ」の名前から背番号「193」を背負う男は、どんな成長曲線を描くのだろうか。
(町田利衣 / Rie Machida)