イチロー氏語る“頭を使う野球” ブルワーズはなぜ強いのか…総年俸はド軍の1/3、67歳老将が明かす真髄
ブルワーズのパット・マーフィー監督【写真:アフロ】ナ・リーグ中地区首位を走るブルワーズ
本塁打数はリーグ最少レベルだが、得点数はトップクラス。ナ・リーグ中地区首位を走るブルワーズは、一発が重視されがちなメジャーリーグの中で異彩を放っている。チーム作りの中心にいるのが、2年連続でナ・リーグ最優秀監督賞に輝いた67歳のパット・マーフィー監督だ。会見では初見の記者一人ひとりに自己紹介させ、試合前の雑談では敵将を爆笑させる。そんなユニークな名将の野球観とは――。(成績は日本時間6月30日時点)
ブルワーズは「Brewers」と書く。直訳すれば「ビールの醸造者たち」の意だ。本拠地があるウィスコンシン州ミルウォーキーは“Brew City”の異名を持つビール醸造の街。箕面ビールをこよなく愛する筆者としては、味見しないわけにはいかない。5月22日(日本時間23日)に行われたドジャース戦の取材後、ホテルの1階にあるスポーツバーに立ち寄ってみた。
午後11時半を過ぎても賑やかな店内。両軍のユニホームを着た先客たちが楽しそうにグラスをあおっていた。カウンター席につき、名物料理のチーズカードとともにIPAを味わっていると、ブルワーズの勝利に上機嫌な地元ファンと乾杯することになった。生粋のブルワーズ党だという男性は顔を赤らめながら力説した。
「パット・マーフィー! パット・マーフィーだ。いまのブルワーズがあるのは彼のおかげなんだ。本当に素晴らしい監督だよ」
球場内でもマーフィー監督のユニホームを着たファンをたびたび見かけたが、期せずしてその人気ぶりを知ることとなった。
ユーモア溢れる性格は敵将をも魅了する。22日の試合前、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督はなかなか予定された囲み取材の場に現れなかった。ダグアウト内で日米記者が待ちぼうけを食らっていると、グラウンドから大きな笑い声が響いた。声の主はロバーツ監督。話し相手は数時間後に真剣勝負するはずのマーフィー監督だった。
囲み取材に15分ほど“遅刻”してきた指揮官は「すまない。マーフィーと話していたんだ」と謝罪。「笑っていましたね」とツッコまれると「ああ、あれは最高だった」と上機嫌だった。
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指揮官として圧倒的な実績を誇るマーフィー監督だが、選手としてはマイナー止まりだった。しかし引退後は複数の大学やオランダ代表の監督を歴任し、パドレス傘下で指揮を執った後、2015年途中にはパドレスの監督代行に。翌年からブルワーズのヘッドコーチに就任し、2024年に監督に昇格した。
マーフィー監督に率いられたブルワーズは文字通り常勝軍団になった。就任1年目の2024年は93勝69敗で地区1位、昨年は97勝65敗でメジャー最高勝率を記録した。マーフィー監督はナ・リーグ最優秀監督賞に選ばれ、3年目の今季もナ・リーグ中地区首位を快走している。
その手腕が高く評価されるのは、スモールマーケットの球団であることも関係している。米データサイト「Spotrac」によると、ブルワーズの年俸総額は1億2161万8720ドル(約196億3522万円)で30球団中22番目。1位ドジャースの3億5002万4106ドル(約565億円)と比べると、半分にも満たない。そして今季もその傾向は変わらない。おそらく今後もだ。
6月28日(同29日)終了時点のチーム本塁打数は74本でリーグワースト2位タイ。両リーグでも下から3番目に過ぎない。それでも、418得点数でナショナルズ、ドジャース、パイレーツに次ぐ両リーグ3位。平均得点5.16は同3位と効率よくスコアを刻んでいる。
そんなブルワーズの戦い方を称賛する1人が、イチロー氏だ。昨年7月の米殿堂入り式典の前日会見では、こう力説した。
打線に求める戦略は「『まず一塁に出ること』以外にない」
盗塁阻止にも現れる細部へのこだわり
(鉾久真大 / Masahiro Muku)

