涙の4者連続被弾…オリ佐藤一磨にかかってきた1本の電話「世界初らしいな!」 救われた“札幌の夜”

オリックス・佐藤一磨【写真:小林靖】オリックス・佐藤一磨【写真:小林靖】

2日の日本ハム戦に今季初先発も…初回先頭から4者連続被弾で降板

 屈辱のKO劇から這い上がるため、普段通りの準備を進めた。今季初先発となった2日の日本ハム戦(エスコンフィールド)。オリックスの佐藤一磨投手は、初回先頭から史上初の4者連続ホームランを浴び、1死も奪えず降板。わずか16球でKOされた左腕はベンチで涙を流した。

 一夜明けた3日。2軍降格も考えられるなか、佐藤の姿は1軍の西武戦が行われるほっと神戸にあった。試合前練習では普段と変わらないルーティンを行い、ゲームが始まると戦力として“中0日”でベンチ入り。前日の先発投手が異例ともいえるブルペン待機。リベンジの機会を待つことになった。

「本当に感謝しかないですね、これに関して僕は。諦めることは多分、簡単な世界じゃないですか、僕らプロって、諦めたらそれで終わるので。そうじゃなくて(1軍に)残していただけた。現実は現実として受け止めて。先発の1試合を任された立場なので、それを果たせなかった申し訳なさとか、僕が一番悔しさを感じたので。そこは落ち込んでも何もできないっていうのじゃなくて、とにかく練習して次の登板に、というところでしか僕はできない」

 身長190センチ97キロと、誰もが羨むポテンシャルを誇るが、今季で育成出身の7年目。少ないチャンスをものにしなければ、後がないことは分かっている。落ち込んでいる暇はなかった。なぜ、打たれたのか――。コントロールに苦しんだわけでもない。試合後に自問自答するなか、岸田護監督からは「どんな状態であれ、調子がいい悪い、フォームの再現性がどうっていう以前に、まずは球を扱うことが野球選手としての最低条件」と、アドバイスを受けたという。

翻訳機能がうまく作動しなかったけど…嬉しかったエスピノーザの気遣い

日本ハム戦で4者連続本塁打を浴びた佐藤一磨【写真提供:産経新聞社】日本ハム戦で4者連続本塁打を浴びた佐藤一磨【写真提供:産経新聞社】

 球史に残る史上初の先頭打者からの4被弾、さらにチームは3連敗で今季初の5位転落…。携帯を見てもネガティブなニュースが嫌でも飛び込んできた。そんな、失意のどん底だった佐藤を救ったのは1本の電話だった。札幌の宿舎に戻ると育成時代から支えてくれた小林宏育成チーフコーチが、冗談を交えながら慰めてくれた。

「初回からの4者連続は世界初らしいな! 行くところまで行って一番下に足がついたんだから、もう沈まないぞ。守りに入る必要もないから。いつか笑い話にできるぐらいになればいい。ここからが大事になってくる」

 育成から支配下に上がり、二人三脚で苦しい時期を乗り越えてきた恩師の気遣いが嬉しかった。「2人で笑い話って言ったら失礼ですけど。ずっとお世話になった小林さんからすぐに電話を頂いて、腹を括ってじゃないですけど、やるしかないと決心がつきました」。

 監督、コーチだけでなく、ナインも同じ思いだ。「さっき何か言ってもらおうとしたんですけど、うまく機器が起動しなかったみたいで。また、直ったら話を聞かせてもらいます。感謝しかないですね」。この日の試合前には翌日(4日)の西武戦に先発するエスピノーザが、熱心にスマホの翻訳機能を使いながら佐藤に話しかける場面もあった。

気持ちを切り替え、前進していく【写真:加治屋友輝】気持ちを切り替え、前進していく【写真:加治屋友輝】

「やっぱり僕はボールを扱い切れなかった。結果を出していくしかない世界」

 3日の試合では登板なく終わったが、リベンジの機会を虎視眈々と狙っている。自らを見つめ直し、修正するポイントは分かっている。

「一番はアウトが取れなかったっていうところ。そこが一番、本当に力不足で、やっぱり僕の技術不足なんで。四球だろうが、狙ったところの逆球のホームランでも、やっぱり僕はボールを扱い切れなかったなっていうところが正直なところ。気にしないって言ったら本当に無責任に聞こえますけど、結果を出していくしかない世界なので。とにかくできないところを練習で補って次、次っていうところです」

 1死も奪えず今季初黒星を喫した7月2日のマウンドを忘れることはないだろう。いつか、笑い話にできる日がくると信じて――。その日まで背番号「93」は全てを糧にし、成長していく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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