すでに自己最多の20登板「データ上でも伸びのある真っすぐがいっている」
マウンド上での気迫あふれる姿は、ファンを魅了する。楽天・柴田大地投手はプロ5年目ですでに自己最多の20試合に登板。防御率3.77で初ホールド&初セーブもマークした。その躍進ぶりは、たった8か月前、戦力外になったとは到底思えない。
「ストレートが今年は良くて、昨年より球速も出ていますし、データ上でも伸びるような真っすぐがいっているので、それが今1軍で投げられている要因の一つかなと思います」と自己分析する。投げ急いでいた昨季までの投球フォームを見直し、「ゆっくり進めて、横の時間を長くするイメージ」でホップ成分が約10センチほども増加した。
2021年ドラフト3位でヤクルトに入団。3年目を終えた2024年オフの現役ドラフトで楽天に移籍した。新天地で迎えた昨季はプロ初勝利こそ挙げたものの6登板、防御率2.08にとどまり、10月29日には2026シーズンの選手契約を行わないことが発表された。
しかし16日後の11月14日、楽天は柴田との支配下契約を発表。再契約、さらに育成ではなく支配下というのは異例中の異例ともいえる出来事だった。激動のオフ、感情も揺れていた。
「1度クビになって、ショックと言うか『ああ、一回野球人生が終わってしまうかもしれないんだな』とは思いました。で、そこから楽天からまたオファーが来て。珍しいことじゃないですか。だから『こういうこともあるのか』って。僕、結構今までの野球人生、運で来ているので『またここで使ったか』と思って。驚きっていうか、おもしろいなっていうか……」
気迫満点のマウンドさばき「どんどん前にいこうと思っているのはあります」
楽天を戦力外になったとき、野球を続けることは決めていた。海外も視野に「アジアクォーター」制度でトライアウトを受けることを目指していた。そんなとき、楽天から届いた思いもよらぬ報せ。NPBで野球を続けられることだけでない喜びが、そこにはあった。
「昨年、すごく楽しい1年間だったんです。ファームが長かったですけど、監督、コーチ、トレーナーさん、裏方さん、すごくいい人ばかりだったので。来年もこのチームで続けられたらいいなっていうのはあったんですけどクビになってしまって……からの再契約だったので、また来年も楽天で野球ができるんだっていう喜びはすごく感じていましたね」
迎えた今季、4月2日に1軍に昇格すると、初登板から9試合連続無失点投球。10日間の再調整期間こそあったが、ここまで1軍で欠かせない救援の一角となっている。そんな自身の姿を「今までこんなに1軍にいることがなかったので、1日1日が新鮮です。突き進むしかないという気持ちでやっています」と話す。
その思いは、マウンドでの佇まいを見れば伝わってくる。気持ちを全面に出し、打者に立ち向かう。ピンチになればなるほど気合いは増し、ある意味、腹を括っているようにも見える。「そうですね。『いけるときにいこう』『やれるときにやろう』という気持ちでどんどん前にいこうと思っているのはあります」とうなずくと、「回途中でも回頭でも絶対に抑えるというのは変わらないですよ」と笑った。
「最終的にはしっかり勝ちパターンで投げられたらいいなと思っています」
143試合の旅路は、後半戦に差し掛かった。シーズン途中の監督交代など苦しむチームの中で、自らの使命はわかっている。
「チームが勝つために自分に与えられる役割って何だろうと思ったら、火消しだったり、ビハインドで投げて勢いをつけてそこからチームが勝つみたいな。そういうところだと思っているので、まず1年間怪我をせずに投げてチームが勢いづいて勝利に近づけばいいなと思っています。最終的には、しっかり勝ちパターンで投げられたらいいなと思っています」
日体大では4年時にトミー・ジョン手術を受け、リーグ戦の登板なし。日本通運入社後も秋まで登板できず、それでもヤクルトから3位指名を受けた。現役ドラフト、戦力外、再契約とプロでも波乱万丈。柴田は「運」と言ったが、決して運ではない、飛躍のシーズンを駆け抜けている。
(町田利衣 / Rie Machida)