「苦労してきたものは生きる」 巨人救った育成出身ルーキー…指揮官の“ブレなかった”根拠

阪神戦の7回にプロ初安打を放った巨人・知念大成【写真:イワモトアキト】
阪神戦の7回にプロ初安打を放った巨人・知念大成【写真:イワモトアキト】

6日に支配下、7日に登録されたばかりの知念大成外野手が勝利に貢献

■巨人 4ー3 阪神(7日・東京ドーム)

 興奮は冷めていなかった。7日の阪神戦(東京ドーム)の逆転勝利を引き寄せたのは、前日に支配下登録されたばかりの巨人・知念大成外野手だった。試合後のインタビュー。ユニホームには赤土がたっぷりとこびりついていた。「足が動いていなかったですね……」と自虐的に振り返った本塁生還時のヘッドスライディング。しかし、それはプロ初打席で初安打を放ち、一塁走者として坂本の一打で本塁へ滑り込んだ跡でもある。

 2点を追う7回2死一、二塁。代打で登場した。マウンドには開幕から負けなしの10連勝、高橋遥人が立っていた。今季、右打者も左打者も打率1割台に封じてきた左腕だ。「(先発投手とは)対戦することはないだろうなと思っていたんですけど。まさかあの場面で、とは思っていなくて……」。それでも、心の中でひとつだけ決めていた。

「迷うことだけはやめようと、試合前から思っていました。初打席だったので、三振しても当たり前というマインドで。ストレートか変化球か、どちらかに決めて打席を終えようと」

 選んだのは変化球だった。三振はOKと割り切って、好投手・高橋の変化球だけに目付けした。初球、一番甘い球はファウル。以降はボールゾーンに誘われ、追い込まれる。1軍投手の球威に、バットは空を切りかけた。カットしてくらいつく。「割り切らないと打てないというのは分かっていたので。最後、バットになんとか当てることができてよかったです」。追い込まれながらも粘り、5球目を遊撃への内野安打。クリーンヒットではない。だが、本人に言わせれば狙いどおりの一打だった。

「内野の間を抜けてくれという感じのバットの出し方をしたので。ああいうヒットが自分の持ち味だと思うんです」。知念の一打で満塁となり、坂本が放った走者一掃の逆転3点二塁打に東京ドームは揺れるほどの大歓声が起きた。

「鼓膜がやられるかと思いました」。知念は沖縄の出身。「田舎から来て、こんなに人を見たことがないんですよ」と目を丸くした。歓声に力み、一塁への走りは思うように加速しなかった。ベンチで憧れの人・坂本と抱き合ったルーキーは「めっちゃいい匂いでした」と飾らない感想を残した。

お立ち台に上がった巨人・坂本勇人(左)と知念大成【写真:イワモトアキト】
お立ち台に上がった巨人・坂本勇人(左)と知念大成【写真:イワモトアキト】

橋上監督が代打で起用した意図

 興奮の中でも反省は忘れない。一塁走者の知念は迷わず本塁まで駆け、頭から突っ込んだ。「ああいう場面でも力を抜いて、自分のフォームで走れば加速すると思うので。ベースの踏み方だったり、走路だったり、ちゃんと自分のやるべきことをやれる選手が上で活躍すると思うので、早く慣れていきたいです」。自らのバットで好機をつくり、その足で決勝点を運んだが、冷静さも同時に持っていた。

 橋上監督代行は、起用の根拠を説いた。ファームの数字を精査すると、対左投手で最も結果を残していたのが知念だったという。「正直、頭から使ってもいいくらいかなと思っていた」と指揮官。アルビレックス新潟時代では監督と選手の間柄だった。知念がハングリー精神を持ってプロを目指した時代を知るだけに、その本質をこう表現した。

「なんとかしてくれる選手です。状況に応じて、最低限のことは必ずこなしてくれる。いろいろ苦労してきた選手ですから。いざというときに、苦労してきたものは結構生きる気がします」

 それでも、指揮官は“釘”も刺している。「ただ、まだ一回だけですから。継続してチームのためにやってくれれば、本人にとっても非常に大きなものになる」。初めてのお立ち台で、知念は締めくくりに声を張った。「支配下になりました。背番号94番、知念大成です。今後とも熱いご声援よろしくお願いします」と挨拶すると、大観衆が受け入れてくれた。その大声援は、赤土のついたユニホームで語ったルーキーに確かに届いていた。背番号94のファンとの物語が、今、始まった。

【実際の映像】「力んで足が動いていなかった」と反省…巨人・坂本の値千金の走者一掃の二塁打での知念の生還シーン

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY