「力になりたい」…でも救えず 宮城滝太はなぜ号泣したのか 1週間後に“デジャブ”、乗り越えた強い心

2日の広島戦で失点し、ベンチで涙を流すDeNA・宮城滝太【写真:井上学】2日の広島戦で失点し、ベンチで涙を流すDeNA・宮城滝太【写真:井上学】

守護神・山崎康晃の乱調を受け緊急登板、2点差を追いつかれた

 上昇気流に乗った。6月の月間4勝15敗(勝率.211)が響き、リーグ4位にとどまっているDeNAだが、7月に入ってから反転攻勢、6勝1敗1分で息を吹き返した(成績は10日現在、以下同)。中継ぎとして貴重な役割を果たしているのが、高卒8年目の宮城滝太(だいた)投手だ。今月2日、本拠地・横浜スタジアムで行われた広島戦の試合後には、宮城がタオルで顔を覆い号泣する姿が中継画面に映し出され、ファンの間で話題になった。衝撃シーンの背景とは──。

 沖縄県嘉手納町出身の右腕は、昨季中継ぎで50試合に登板し、プロ初勝利を含む4勝(1敗)、防御率2.09をマークした。今季も23試合0勝1敗、防御率2.42と好調だ。しかし今月最初の試合の2日・広島戦は、宮城にとって酷な展開となった。

 3-1とリードして迎えた9回、DeNAのマウンドには守護神の山崎康晃投手が上がったが、先頭打者に1球もストライクを取れないまま四球を与え、次打者も1ストライクを取っただけで四球。まさかの制球難に、相川亮二監督はここで宮城へのスイッチを決断したのだった。山崎は今季防御率6.10の不振で、翌3日に出場選手登録を抹消されたほどだった。

 緊急登板の格好となった宮城は、暴投、四球、犠飛、適時打を許し同点に追いつかれる。なおも続いた1死一、二塁のピンチで、相手に勝ち越しを許さなかっただけでも、上々の結果と言えた。それでも宮城は延長12回の末3-3の引き分けに終わった試合後、ベンチからしばらく動けず、タオルを頭からかぶって泣いていた。

「周りの方々からは『客観的に見れば酷な場面だった』とか『同点で防いだだけでも、よくやった』とか言っていただきました。しかし自分としては、ああいう場面でパッと行って結果を残せる選手にならないといけないと思いますし、そういうチームにならないと上位には行けないと思っています」。宮城はそう振り返る。

来日1年目でDeNAのブルペン陣を支えるショーン・レイノルズ【写真:井上学】来日1年目でDeNAのブルペン陣を支えるショーン・レイノルズ【写真:井上学】

選手だけのミーティングで「ひと言、いいか?」と立ち上がった男

「特にあの試合はチームにとって凄く大事な試合で、『ここから変えていくぞ』とみんなが気合を入れていたので、絶対に勝ち切りたかったですし、なおさら悔しかったです」とも付け加える。

 実はこの日の試合前、6月を月間4勝15敗のふがいない成績で終えたことを受け、選手だけのミーティングが行われた。「ひと言、いいか?」――そう言って立ち上がったのが、来日1年目のショーン・レイノルズ投手だった。

「ここからチームを変えていくよ! 今まで通りにやっていると、このままズルズル行ってしまうよ!」

 レイノルズの言葉はナインの心の響き、雰囲気が一気に変わった。宮城は「僕もリリーフとして仕事を果たさなければならない立場だと思っています。だから試合後はああいう風に……普段は、感情を出すことはあまりないのですが……」と顔を少し赤らめた。

 一方、走者を残して降板した山崎は、宮城にとってシーズンオフに自主トレを共にしてもらっている大切な先輩だ。「康さん(山崎)には本当にいろいろなことを教えてもらっていて、一番お世話になっている先輩で、そういう先輩が苦しんでいる姿を見ていたので、なんとか力になりたいという思いは強かったです」とうなずく。様々な思いが入り混じっての涙だったのだ。

先輩・山崎康晃(左)から言葉をかけられる宮城【写真:井上学】先輩・山崎康晃(左)から言葉をかけられる宮城【写真:井上学】

 そんな屈辱から1週間。宮城は9日の中日戦に登板し、1回無安打2奪三振無失点に抑えた。翌10日の巨人戦でも4点リードの7回、4番手のホセ・ルイーズ投手が2点を失い、なおも1死一塁となったところで登板。見事に後続を断ち、試合後にはお立ち台へ呼ばれた。「(2日の)広島戦の状況と似ているなと思って、絶対にやり返したろうと強い気持ちでマウンドに上がりました」と力を込めた。

 また、この2試合は今も嘉手納町に住む母・さとみさんがスタンドへ足を運び観戦していた。お立ち台から「マミーはどこだ……」とスタンドに目を凝らした宮城は、「お母さん、いつもありがとう!」と声を張り上げた。

尽きない感謝「人生で初めて母の目の前でピッチングができました」

「マミー」という呼び方が耳に残ったが、宮城は「マミーとか、ママとか、お母さんとか、いろいろな呼び方をしています」と苦笑。“女手一つ”で自分と1歳下の弟、5歳下の妹を育ててくれた母への感謝は尽きない。「人生で初めて、母の目の前でピッチングができました」と感慨深げだ。

 さとみさんは以前から観戦を希望していたが、先発投手と違い、中継ぎの宮城はいつ登板するか予想がつかない。宮城は「それに、やはり沖縄で頻繁に来られる場所ではないので、タイミングが難しい。この2日間は運よく投げられたので良かったです」と頬を緩めた。

 人情味あふれる“ウチナーンチュ”は「ウチはフレンドリーな感じで、僕も家族に対する思いは強いです。“ファミリー・ファースト”です。沖縄はそういう文化で、小さい頃からたくさん愛を注いでもらってきました。恩返しをしていきたいです」と吐露。DeNAの上位進出のためにも、欠かせない右腕だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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