県相模原・崎山能活&希望ケ丘・篠晴仁…激戦区・神奈川の県立にいる2人のドラフト候補 NPBスカウトが明かす特長と課題

ガッチリした体格が魅力の県相模原・崎山能活(左)とバランスのいいフォームから最速135キロを投げ込む希望ケ丘・篠晴仁【写真:大利実】ガッチリした体格が魅力の県相模原・崎山能活(左)とバランスのいいフォームから最速135キロを投げ込む希望ケ丘・篠晴仁【写真:大利実】

高校通算22発で強肩が光る県相模原・崎山能活

 7月5日に開幕した「第108回全国高校野球選手権神奈川大会」は11日に2回戦が終わり、13日から3回戦に突入する。「ドラフト候補」の視点で見ると、4季連続甲子園出場を目指す横浜のエース・織田翔希、ショート・池田聖摩、桐光学園の大型右腕・林晃成に注目が集まるが、県立の進学校にも高卒プロを狙う好選手がいる。

 7日に俣野公園・横浜薬大スタジアムで行われた県相模原-横浜桜陽。シートノックから一際目立っていたのが、県相模原の「1番・中堅」崎山能活(右投右打)だ。174センチ、80キロのガッチリした体型から、低く強い送球を投げ込み、肩の強さをアピールした。

 打席では3回に内野安打で出塁し、チームを鼓舞するガッツポーズを見せると、打線がつながり一挙5得点。5回の第4打席では痛烈なレフト前ヒットを放ち、一塁ベース上で笑みがこぼれた。投打がかみ合ったチームは、10-0で快勝した。

 県相模原は県内上位の進学校で、大学にほぼ100パーセント進学するが、崎山は高卒プロを目指している。

「去年の冬前に初めて、スカウトの方が来られて、自分のプレーを評価していただき、自信を持てるようになりました。春の大会後も、ほかの球団のスカウトが来てくださって、プロへの気持ちが強くなっています」

 アピールポイントを聞くと、「肩とガタイ。あとは、視野を広く持った走塁とバッティングです」。高校通算本塁打は22本。目標の選手に、浅村栄斗(楽天)を挙げる。空振りを恐れぬフルスイングで、広角にホームランを打ち込む姿に「カッコイイです」と憧れを抱く。

亡き恩師の教えを胸に目指すプロ

 崎山の名を初めて聞いたのは、前任の佐相眞澄監督からだった。崎山が入学する前から、「湘南ボーイズの4番がウチに来るよ」と期待を寄せ、入学後はすぐに中軸で起用し、「振る力がずば抜けている」と高い評価をしていた。

 佐相監督は、崎山が1年時にすい臓がんが見つかり、同年12月に監督を退任。翌2025年1月24日に逝去した。

 湘南ボーイズと言えば、全国制覇の経験を持つ強豪チームだ。なぜ、県相模原を選んだのか。

「4番を打ってはいたんですけど、体が小さくて、私立でやるには自信がなくて。高校野球をやるなら公立。その中でも、バッティングが特徴の県相であれば、自分の良さを生かせると思いました」

 佐相監督から細かい技術指導を受け、「(自分にない考えで)びっくりした」と語るのが、低めの打ち方だ。

「それまではレベルスイングで振る意識だったんですけど、佐相先生から『手首(グリップ)を落とす感じで振ったほうがいい』と言われて、低めにもうまく対応できるようになりました。今も実践しています。先生には1年夏から使ってもらったんですけど、自分のミスで負けてしまったので、最後の夏は『崎山のおかげで勝てた』という試合を佐相先生に見てもらいたいです」

 小さかった体は、高校で本格的にウエートトレーニングに励んだ結果、体重が10キロアップ。ベンチプレスは110キロまで挙げるようになった。

「高卒プロ」と考えると、支配下指名の中でもっとも狭き門なのが外野手だ。2年続けて、高校生は1人しか指名されていない。

「育成枠でもプロに行きたいと思っています。進学校ではあるんですけど、自分は勉強が苦手で(笑)。ただ、親からは『育成枠なら大学に……』とも言われていて、親の立場ならそうだよなと思います」

 今できることは、夏の大会で最大限のアピールをすること。2回戦はコンディションの関係でスタメンを外れたが、練習パートナーでもある3番の好打者・伊豆原藍斗が5打数4安打の活躍を見せるなど、10-2で海老名に快勝した。3回戦で、実力校の日大高に挑む。

篠晴仁は184センチ、75キロと投手らしい体型も魅力だ【写真:大利実】篠晴仁は184センチ、75キロと投手らしい体型も魅力だ【写真:大利実】

希望ケ丘の篠晴仁は体重17キロ増、球速20キロアップの大型左腕

 8日、サーティーフォー保土ケ谷球場には、希望ケ丘の大型左腕・篠晴仁が登場した。184センチ、75キロのいかにもピッチャーらしい体型から、最速135キロのストレートを投げ込む。決定権を持つスカウト部長クラスが視察に来た球団もあり、注目度の高さがうかがえた。

 先発した篠は、6回2/3を5安打8三振4四死球4失点。14-4の7回コールドで横浜翠陵を下したが、「力みがあった」と振り返る通り、右打者のアウトハイに抜けるボールが多く、コントロールに苦しんだ。

 肩甲骨や胸郭周りの柔らかさが特長で、胸がよく張れる。細身の体を考えても、「これから」に期待がかかるタイプだ。

 横浜市立保土ケ谷中の軟式野球部出身。私学からの誘いもあったが、「自宅からの近さ、学力、野球部の雰囲気が自分に合っていた」と希望ケ丘を受験した。「ガチな雰囲気のところはちょっと……」と笑う。

 体も球速も、高校3年間で見違えるように成長した。

「入学時のスピードが115キロぐらいで、今が最速135キロ。高校に入って、体重が増えたのが大きいと思います。58キロから75キロまで増えました」

 補食を積極的に取るようになり、コンビニで売っている「上にあんこがのっている串団子」が好物だそう。

 高卒プロへの気持ちは――。

「この春までは全然注目されていなかったんですけど、最近になって注目され始めて。やってやろうという気持ちになっています。プロはもともと遠い存在だったんですけど、今はちょっと近付いたかなと思っています」

 励みになっている存在がいる。昨年、川崎総合科学からヤクルトの育成1位でプロ入りを果たした小宮悠瞳だ。同じ県立校出身で、細身の左腕という共通点がある。

「同じようなタイプ。自分も可能性があるのかなと感じています」

 今後はプロ志望届を提出したうえで、受験勉強にも全力を注ぐ。第一志望に、国公立大を挙げる。

「育成枠でも、プロに行きたい。親も自分が行きたい道を後押ししてくれているので頑張りたいです」

 続く2回戦の藤沢翔陵戦でも先発し、9回4失点とゲームを作ったが、0-4で敗れ、大会を去った。

笑顔でポーズを取る希望ケ丘・篠晴仁【写真:大利実】笑顔でポーズを取る希望ケ丘・篠晴仁【写真:大利実】

素材が良ければ私立も公立も関係ないのがプロ

 プロ側は、2人をどのように評価しているのか。日本ハムの坂本晃一スカウトは、昨年から崎山をマークしていた。

「昨年、3年生を視察した練習試合の相手校がたまたま県相模原でした。その試合で、崎山くんがバックスクリーンに放り込んで、そこから注目するようになりました」

 その後、グラウンドにも何度か足を運んでいる。

「一番の魅力は肩で、スローイングも安定している。バッティングはハードヒット系で、芯で捉えたときの打球はかなり速いですよ。現時点でのスケールはさすがに劣りますが、高松商から巨人に入った浅野翔吾選手のようなタイプですね」

 一方で、「バッティングの対応力」を課題に挙げ、大学でさまざまな経験を積むことで、「4年後に上位を狙うという選択肢もある」と冷静に評価する。

 希望ケ丘の左腕・篠に関してはどうか。

「教科書に載るような、バランスのいい投球フォームをしています。キャッチボールは素晴らしいですよ。体に力がついて、指でボールを押し込めるようになれば、将来的に楽しみです。今はバッターが打席に入ると、力んでしまうのか、シュート回転で抜けるボールが多いのは気になりますね」

 県立から直接プロの世界に飛び込むのはかなり稀な例だ。スカウトの視点では、どんな選手に魅力を感じるのか。

「私立、公立は、プロの場合は素材が良ければ関係ありません。飛び抜けた運動能力や柔らかさを持っているか。また、人としての素直さや吸収力、前向きさがあるか。そのあたりを、これから見極めていきます」

 夏の大会が終わっても、野球人生はこれからも続く。大学進学か、プロ入りか。選んだ道を正解にすべく、努力を積み重ねていく。

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。近著に『高校野球激戦区 神奈川から頂点狙う監督たち』(カンゼン)がある。

@mino8989

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