6月18日の2軍ヤクルト戦で1点リードの9回を締め“プロ初セーブ”
高い期待を受けるDeNAの背番号「18」が、もがいている。12日にカーミニークで行われたファームリーグ、西武戦。6点リードの9回から登板したのは、小園健太投手だった。1死二塁から適時打を許したが、その後は2者連続三振で締めた。
ファームなので先発投手が2番手以降に投げる例は多々ある。しかし6月18日の同ヤクルト戦(横須賀)。その姿は、1点リードの9回のマウンドにあった。1四球を与えるも無安打無失点に抑えて“プロ初セーブ”を挙げた。
市和歌山高から2021年ドラフト1位で入団して早5年目。三浦大輔氏が長らく背負ったエースナンバーを託されたが、昨季までの4年間で1軍登板はわずか2試合にとどまる。昨年7月3日の中日戦(横浜)で5回3失点で待望のプロ初勝利を挙げたものの、右肩痛もあり1軍登板はこの1試合だけ。2軍でも8月10日の試合を最後にリハビリとなった。
“救援挑戦”発案者の入来コーチ「考えすぎて動けなくなってしまう」
そんな小園が今、救援として腕を振っている。ここまで2軍10登板(3先発)で2勝0敗2セーブ、防御率3.26。村田修一2軍監督は「リリーフをやっているのは、もっと上を目指そうぜ、という取り組みのひとつです」と説明した上で、「入来さんに言われて、任せています」と話した。
リリーフを任せることで“小園再生”に乗り出した入来祐作2軍チーフ投手戦術・育成コーチが、もどかしい胸中を明かす。
「1球1球の重要性というかね。彼の取り組む姿とかを見ていて、とにかく全てのことを全力でやってみようよということを、こちらが環境設定をしていかないと難しいだろうなと。一生懸命やっていないわけじゃないんですよ。ただ考えすぎて動けなくなってしまう。考えてやることは大事ですけど、アスリートなので、まずは全力で動いてみて考える力を養うことが大事だと僕は思っているので。リリーフなら、1球1球全力で投げないと勝負がつかない。さらに厳しいところで投げてどう感じるか。そのリリーフの感覚で、イニングを伸ばしてほしいなという思いです」
求めるのは「アベレージで146、7、8キロ、できれば150キロを常時投げられるくらい」の強い真っすぐだ。小園の直球の平均球速を見てみると、ルーキーイヤーの2022年はわずか3登板で4回2/3ではあるが145.4キロを計測。以降2023年は141.3キロ、2024年は142.3キロ、2025年は142.0キロ、今季は142.2キロだ。12日の西武戦を振り返ってみると、投じた28球中ストレートは17球で、145キロを超えたのが8球、最速は148キロだった。
筋力測定はトップクラスの数値も「じゃあ何で、ってなるじゃないですか」
実は小園はチームの筋力測定ではトップクラスの数値を叩き出す。「じゃあ何で、ってなるじゃないですか。できるはずなんですよ。体の使い方だったりいろいろあるでしょうけど、本能に火をつけてやらないとダメかなって」。入来コーチが言葉に力を込める。
それは投球だけではない。ランニングメニューの際、タイム設定は全選手の中間で設定されることが多い。しかし入来コーチは小園にだけ厳しいタイム設定を課す。「自分の限界を知って、自分の弱さを知る。それがスイッチになる。彼は体力のなさを僕に見せつけてくれていますけど」と苦笑いした。
小園と同じ2003年生まれで大学を経た選手たちも、プロの世界に入ってきた。「時間をかける余裕はないのかもしれない」というのが本音だが、このまま終わらせるわけにはいかない。
「こちら側はできるだけの環境を与えて奮起を促しているということ。今からでも遅くないんじゃないかっていう僕の希望ですよ。期間は設けられないです。自分の限界に挑戦する1年を過ごしていない。まずはそこを何とかしてやりたいです」
データでは測れない「頭で考えるより、まずは本能」
データ全盛の時代。投球フォームも球の質も、データで測る。しかし“全力で取り組むこと”や“限界に挑むこと”は数字には表れない。まばゆい輝きを放ち、超高校級と称されたあの頃は、きっとそうだった。だから入来コーチは「すごい才能の塊だからここ(プロ)に来ているんです。データでは測れないこともたくさんあります。頭で考えるより、まずは本能。そのあとでこういうデータがあるとか、そうやっていけばいいんじゃないかと思うんです。なんとか(現状を)打ち破ってほしい」と強く願う。
その先に描くのは、「先発・小園」の姿だ。
「それが理想です。球団としてどういう選手に育てたいかというのは、そこ。僕もなんとかサポートしたいと思っています」
リリーフ経験は、あくまでも先発として戦うための過程。その環境はもらった。生かせるかどうかは、小園次第だ。
(町田利衣 / Rie Machida)