一瞬の隙を逃さぬ“一太刀”が決める試合 西武伝統の「けん制術」とサインプレーの真髄

他球団を圧倒する西武の“けん制技術”
日本生命セ・パ交流戦2026において、過去最高の勝率.824で初優勝を飾った西武。チーム防御率1.53という堅守が際立った戦いぶりだったが、特に印象深いのは6月7日の中日戦(バンテリンドーム)だ。
同点で迎えた延長11回、2死満塁というサヨナラのピンチで、マウンドの上田大河投手が一塁けん制で走者をアウトにした。続く12回の攻撃で3点を挙げて勝利したこの試合は、チームの快進撃を象徴するハイライトといえる。けん制によるアウト数で西武は他球団を圧倒しており、2024年以降の投手けん制刺数はリーグ最多の42を記録している。今回は西武の“お家芸”とも呼べる「けん制」について掘り下げる。
投手別では、アウトを奪った数では武内夏暉と隅田知一郎の両左腕投手が、リーグ最多の13個を記録。特に際立つのは武内で、アウトにした数をけん制した総数で割った数値はリーグトップの8.3%に上る。球界屈指のけん制技術を持つ投手と言っていいだろう。
他球団では日本ハムの福島蓮投手にも注目したい。けん制刺の上位を左腕が占める中、右投手として唯一のトップ5(3位の5.5%)にランクインしている。威力のある直球が注目されがちだが、細かい技術も持ち合わせていることがうかがえる。ちなみに、2024年以降で最も多くけん制を行っているのは、今季からロッテに加入したアンドレ・ジャクソン投手。ここまで442回のけん制を敢行しており、隅田の253回(リーグ2位)を大きく引き離す。
勝利を呼び込む緻密なサインプレー
次に、チームとしてサインでけん制を仕掛けたシーンに目を向ける。外部から「サインか、投手主導か」を完全に判別することは難しいが、今回は走者が一、二塁・二塁・二、三塁・満塁といった「野手がベース上で待機しない状況」でのけん制を、サインプレーと定義して扱う。
この状況下で走者をアウトにした数について、他チームは多くても2つだが、西武はリーグ最多の9つを記録している。チームによって試行数に差があるものの、西武は3回に1回のペースでアウトを奪えており、有効な武器として機能しているのは間違いない。
さらに一、二塁・二、三塁・満塁の状況かつ先頭走者以外に対するけん制に注目する。複数の走者を抱える状況で後ろの走者にけん制すること自体が珍しく、2024年以降に試みたパ・リーグ球団は西武とオリックスのみだ。相手の隙を突くこの奇策を、西武は8回中4回という高い確率で成功させている。
先頭走者以外に対するけん制の傾向を分析すると、競った試合展開でリリーフの右投手が試みるケースが多く、けん制先はすべて一塁だった。決まればチームを勢いづけるビッグプレーだが、一塁に背を向けた右腕がターンしながら、無人だったはずのベースに投じるけん制は、わずかなズレが致命的なミスを招きかねない。このようなプレーを緊迫した場面で複数の投手が成功させている点は、シーズン前からの徹底した練習のたまものといえるだろう。
走者を欺く投手個人の技術はもちろん、サインプレーの精度を含め西武がリーグ屈指のけん制技術を備えているのは間違いない。歴史を紐解いても、1990年の日本シリーズ第2戦、9回にリリーフ登板した鹿取義隆氏が二塁けん制でピンチを切り抜けた場面をはじめ、これまでにも数々の印象的なプレーを見せてきた。チームに連綿と受け継がれる“お家芸”に、今後も注目したい。
※数字はすべて7月2日終了時点
(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)