障害者野球教室で感動 参加者から得た“ヒント”…夫はロッテコーチ、美馬アンナさんが描く未来

野球教室に参加した美馬アンナさん(右)【写真:佐藤直子】野球教室に参加した美馬アンナさん(右)【写真:佐藤直子】

身体障害者野球選手対象の野球教室にゲスト出演した美馬アンナさん

 障害者野球チームを対象とした野球教室「MAXIV LIEN PROJECT」が、12日に東京・神宮室内球技場で開催された。不動産業「株式会社MAXIV」を経営し、視覚障害を持つ槙島法幸社長による障害者を応援したいという気持ちに、日米球界で活躍した井口資仁氏が賛同して始まった。第3回を迎えたこの日、ロッテ・美馬学2軍投手コーチの妻で俳優のアンナさんがゲストとして登場。情熱を漲(みなぎ)らせて野球に励む参加者の様子を微笑みながら見つめ、「次回は主人を連れてきたいと思います。当事者の私たちだからできることもあると思うんですよね」と話した。

 美馬家の長男は現在6歳。先天性欠損症で生まれつき右手首から先がない。アンナさんは出産当初、責任を感じて思い悩んだり、息子の将来を悲観したり、奈落の底に突き落とされた気持ちになっていた。だが、夫の「障害があるって分かっていたら産んでなかったの? 俺は絶対に産んでほしかったし、俺たちの間に生まれてきてくれて良かったじゃない」という言葉で、前向きな気持ちになることができたという。

 その後、夫妻はアンナさんのSNSを通じて長男の誕生と先天性欠損症であることを公表。障害について学びを深めながら、決して過保護にはせず、息子の成長を見守ってきた。昨年9月30日に行われた美馬コーチの引退試合で、長男が始球式でストライク投球したことは記憶に新しい。長男もこの日の野球教室に参加予定だったが、体調を崩してしまったため残念ながら欠席し、アンナさんのみの参加となった。

 コーチ役を務める井口氏の話に真剣に耳を傾け、キャッチボール、ノック、打撃練習と積極的に取り組む参加者たち。若手からベテランまで年齢の幅は広いが、38人の参加者全員の姿から「野球が大好き」という純粋な気持ちが溢れている。その野球レベルも、アンナさんが思わず「うわっ、すごい!」「上手いですよね」と驚きの声を挙げてしまうほど高い。

「今日いらしていた皆さんから、信念を持って野球に取り組んでいる姿を感じられました。こういう姿を息子には伝えたいですね。やっぱり『できないことってないんだな』と。自分の下半身が安定しないとか、片手しか使えないとか、皆さん個性は違うけど、自分のやりやすい方法を探って、見つけて、工夫している。その諦めない気持ち、メンタルの強さ、そして『何でもできるよ』っていうのを、改めて息子に伝えてあげなければいけないと思いました」

現役時代の美馬学氏【写真:小林靖】現役時代の美馬学氏【写真:小林靖】

参加者の野球へのひたむきな姿に感激「次回は主人を連れてきたい」

 夫妻はかねてより、野球などスポーツを通じて障害の有無に関わらず生きやすい環境作り、自身と同じ境遇にある家族が想いや情報を共有できる場作りに取り組みたいと話しているという。美馬コーチは現役時代、息子と同じ障害を持つ高校球児の小川颯介くんと知り合い、交流を続けてきた。現在は大学生となった小川くんは、この日の参加チーム、千葉ドリームスターズに所属するが、母校・志学館の千葉大会の応援と重なり欠席。小川くんとの久しぶりの対面も含め、「次回は主人を連れてきたいと思います」とアンナさんは言う。

「私は主人の影響でプロ野球を間近に見ることが多くありました。そこで感じたのは、野球が仕事になると結果を出さなければいけないので、だんだん『ただ野球が好き』という気持ちが薄れてしまうというか。だから、もがいたり苦しんだりしている姿の方が、より印象に残るんですよね。でも、野球教室に参加なさっていた選手たちは、本当に野球が好きで、上手くなりたくて、『もっともっと!』というような、好きだからこそ湧いてくる欲のようなものを感じ取ることができました。その姿に本当にワクワクしましたし、感動しました。

 この姿を主人に見せたいですね。次回はやっぱり主人を連れてきたいです。障害者野球の皆さんの姿を見て、コーチとしてなにか騒ぐものがあると思うので。そして、当事者の私たちだからこそできることもあると思うんですよね。そこを上手く形にできないか、考えてみたいと思います」

 この日は日本障害者野球連盟から美馬家の長男へ、障害者用のグラブがプレゼントされるサプライズも用意されていた。長男に代わり受け取ったアンナさんは「ビックリしました! すごく有難かったですし、嬉しかったです。このグラブを見せることで、息子も『誰かが自分のことを見てくれているんだ』と感じ、生きる糧にもなると思うので」と笑顔を弾けさせた。

 身体障害者野球の選手たちが持つ「野球が好き」という純粋な想い、そしてプロ野球とも、高校野球とも、少年野球とも違う「ならでは」の真剣さに触れたアンナさん。「皆さんの輝く姿を見て、今日は本当に感じることも考えることもたくさんありました」。夫妻で目指す取り組みに向けて、大きなヒントを得ることができたようだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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