「こんなん高校生じゃない」衝撃受けた大阪桐蔭の怪物 “Cランク高校”が撃破できた裏側

常葉菊川のエースとして出場した田中健二朗氏…2007年選抜大会で初優勝
DeNAとハヤテでプレーし、2025年限りで現役を引退した田中健二朗氏は、2007年の第79回選抜高等学校野球大会で常葉菊川(静岡)のエースとして同校初の優勝に貢献した。準々決勝の大阪桐蔭戦ではプロ注目の中田翔内野手と対戦。「こんなん高校生じゃない。大人」とオーラに圧倒されたが、強気の内角攻めで3打数無安打に封じたことで、勝機を手繰り寄せた。
3年ぶり2度目の出場となった常葉菊川だったが、大会前の評価は決して高くなかった。「僕らは優勝候補でもなんでもないし、ランクCって書かれていましたから。1回戦が仙台育英(宮城)で、次が今治西(愛媛)。組み合わせが決まったときは、『終わっちゃうじゃん』とか言っていました(笑)」。
失うものがなかった強みもあり、1回戦、2回戦で難敵を撃破。辿り着いた準々決勝の相手は、優勝候補筆頭の大阪桐蔭だった。「向こうは特Aですよ。僕らはもう、開き直って相手を“食ったる”みたいな。マジで当たって砕けろ精神みたいな感じでした」。特に1年生の頃から注目されていたスター選手の中田は、同じ3年生とは思えぬ別格の存在感だった。
「“でかー!”と思いましたよ。どっしりしていて、こんなん高校生じゃないでしょ。大人を連れてきているなと」
その“怪物”に対し、田中氏は内角攻めに徹した。投手指導を担当していた部長から「インコースをガンガン行け。インコース打てないから大丈夫だよ」と背中を押され、強気に投げた。
超高校級の中田翔相手に「弱気にならなかった」
第1打席はオール内角直球の四球で歩かせてしまったが、第2、3打席はともに内角球を詰まらせて内野フライ。第4打席、左翼フェンス手前まで運ばれたが左飛に仕留めた。4打席の結果は3打数無安打、1四球。NPBスカウト陣が熱視線を送っていたスター高校生を「ほぼ全球、内角ストレート」で封じた。
「中田はプロに行く選手だから絶対に抑えてやるとか、そういう感じではなかったですね。ダメ元じゃないけど、弱気になることはなく投げ切れました」
試合は2-1で常葉菊川が勝利。その後も勢いは止まらず、“Cランク”の常葉菊川は一気に決勝も勝ち抜いて頂点に立ったのだった。
田中氏はその年の高校生ドラフト1位で横浜(現DeNA)から指名されて入団。鋭い眼光と強気の投球で「オラオラ系」の異名をとりながら、NPB通算274試合に登板するなど長くブルペンを支えた。春の聖地で貫いた”当たって砕けろ精神”こそ、左腕の原点だった。
(湯浅大 / Dai Yuasa)