佐々木麟太郎が流した“2つの涙” 会見で垣間見えた人間性…等身大の21歳の姿

マーリンズ入りを決めた佐々木麟太郎…会見で溢れた思い
等身大の21歳の姿がそこにはあった――。米スタンフォード大の佐々木麟太郎内野手が19日、花巻市内で公式会見を開き、MLBドラフトで指名されたマーリンズ入りを明言。「たとえ、この道が結果として失敗だったとしても、後悔だけはしたくありません。挑戦したか、しなかったかを選ぶ人生にしたいという思いで、最終的にこの道を決断しました」と、故郷で決意を語った。
会見の報せが届いたのは前日18日の深夜、午後11時30分頃だった。佐々木のマネジメントを行う事務所から、19日の午後2時から地元・花巻で会見を行う旨のメールが届き、各メディアは大慌て。記者自身も翌朝すぐに東京から新幹線に飛び乗り、会見場に向かった。
佐々木を取材するのは初めてだったが、到着した早々に感銘を受けた。約50人ほどの報道陣が会見場の外で待っていたところ、スーツ姿で登場。笑顔を浮かべて「おはようございます。お世話になります」と、深く腰を曲げて挨拶をし、施設の中へ入っていった。この後の会見のことで頭がいっぱいだったと思うが、報道陣に対して配慮を忘れない姿から、“人間性の高さ”を垣間見ることができた。
会見中も印象的な出来事が続いた。まずはソフトバンクへの感謝の思いだ。昨秋のNPBドラフト会議でソフトバンクとDeNAが佐々木を1位指名。抽選の結果、ソフトバンクが交渉権を獲得した。その後、城島健司CBO(チーフベースボールオフィサー)が、花巻東高校やスタンフォード大を訪問。6月下旬に一時帰国した際は福岡で面談を重ねるなど、佐々木へ“誠意”を示し続けてきた。
「ソフトバンクホークスさんは、花巻東高校時代からすごく熱心に、何度も何度も足を運んでいただき、試合や練習を見に来てくださいました。城島CBOはわざわざアメリカに足を運んでくださり、王貞治会長や後藤芳光球団社長とも直接お会いし、素晴らしいプレゼンテーションも準備していただいた」と、時折、声を詰まらせながら感謝の言葉を並べた。
「本当に苦しい選択でしたし、高校時代から深く関わり、そして思いを尽くしていただいた球団であると思っているので、本当に申し訳ありません。感謝しております」と、涙を浮かべて言葉を続けた。自身の決断が球団に及ぼす影響、そして感謝が入り混じった複雑な感情から出た涙だったに違いない。

父親、そして監督でもあった洋氏は「一番の理解者」
決断を後押しした家族への感謝も忘れなかった。「最終的な決定をしたのは自分自身だったんですけど、家族に対しては、ストレスというか迷惑をかけてしまった。もっと短時間で決断ができたのではないかという風にも思います」。ここでも佐々木の目には涙が溢れていた。
なかでも父親には特別な感情を抱く。父の佐々木洋氏は、ドジャースの大谷翔平投手やエンゼルスの菊池雄星投手を指導した花巻東の名監督。幼い頃から佐々木に教育や指導を施し、夢のメジャー挑戦を心から応援してきた一人だ。
「厳しい父親でした。小さい頃からそうですが、高校時代もきつく言われてきました。父親という立場もそうですけど、やっぱり“監督”としても、自分の中では一番の理解者だったと思っています。父親の導きがなければ、こんな人間にはなってないと思います。父親のおかげでここまでくることができましたが、これからはもう自分の責任。なんとかして恩返しをしていきたい」
一番苦労をかけ、誰よりも応援してくれた父親への言葉には、一際の重みを感じた。会見を通して毅然とした振る舞いを見せ続けた佐々木だったが、家族への思いを語るときは、21歳の等身大の素顔が覗いているようにも感じた。この先、米国では苛烈な競争が待っている。佐々木は周囲への感謝を忘れず、“自責の覚悟”を携えて、夢であるメジャーの舞台へ、大きな一歩を踏み出した。
(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)