大谷翔平との時間は「最高の贅沢だった」 エ軍放出から4年…フィリーズの主軸・マーシュが語る“進化の裏側”

  • 小谷真弥
    小谷真弥 2026.07.25
  • MLB
エンゼルス時代のブランドン・マーシュ(左)と大谷翔平【写真:アフロ】エンゼルス時代のブランドン・マーシュ(左)と大谷翔平【写真:アフロ】

マーシュは今夏のオールスター戦に初選出された

 2022年の夏、大谷翔平投手が所属するエンゼルスを取材していた。メジャーリーグのトレード期限最終日の8月2日(日本時間3日)、アナハイムに激震が走った。期待の若手外野手として親しまれていたブランドン・マーシュ外野手が、フィリーズへ電撃移籍。トレード相手となったのは、フィリーズの将来を嘱望されていた若手有望株、ローガン・オハッピー捕手だった。

 あの驚きと寂しさから歳月が流れた。トレードマークであるワイルドなロングヘアと豪快な髭、そして熱狂的な熱量でファンから愛されてきた男は今、フィリーズの主軸として、そして球界を代表する外野手の一人として確固たる地位を築いている。

 今夏はキャリアの大きな節目となる夢の舞台・オールスター戦へファン投票で初選出を果たした。電撃移籍を経て彼が辿り着いた「現在地」、そしてその進化の裏側にある思いに迫った。

 今季は7月22日(同23日)まで98試合に出場して打率.292、16本塁打、47打点。攻守に渡って目覚ましい活躍を見せている。その好調の原動力について本人は、技術的な側面以上に「心の保ち方」が大きいと明かす。

「一番は自分自身への自信を持つこと、そしてどんな状況でも食らいつき続けること。野球は本当に難しいゲームで、対戦するピッチャーは誰もが素晴らしいボールを投げてくる。結果が出ないと落ち込んだり、イライラしたりしやすいけれど、正しいマインドセットを持って試合に臨めるようになったことが大きい」

 身体的なフィジカル面においては「大きな変化はない」と語るものの、試合への準備段階や打席でのアプローチ、精神面でのアプローチが劇的に進化した。日々の打席で一喜一憂せず、一振りに集中するメンタルの強さが、彼の打撃に安定感をもたらしている。

「ショウヘイは本当に大きなロールモデルだった」

 マーシュの打撃理論とプロとしての姿勢を語る上で欠かせない存在が、エンゼルス時代にチームメートだった大谷翔平投手(現ドジャース)だ。

 球界のトッププレイヤーとして君臨する大谷の姿を間近で見続けた日々は、今もマーシュの血肉となっている。

「アナハイムで一緒にプレーしていた頃、ショウヘイは僕にとって本当に大きなロールモデル(手本)だった。野球史上最高の選手の一人と同じロッカールームを共有し、彼が毎日どのような準備をし、どんな規律を持って練習に臨んでいるのかを観察できたのは、僕のキャリアにとって最高の贅沢だったよ」

エンゼルス時代、大谷から多くのことを学んだ【写真:アフロ】エンゼルス時代、大谷から多くのことを学んだ【写真:アフロ】

 さらに、技術面でも大谷から授かった決定的なアドバイスが存在するという。

「5年ほど前、僕に『打席でスイングするときは、もっと脚、下半身を使いなよ』と教えてくれたのがショウヘイだったんだ。あの教えは、今でも毎日の練習や試合で意識している。彼の助言は僕の打撃の土台になっている」

 大谷という偉大な存在から学んだ自律心と技術的なヒント。エンゼルスを去った今も、その教えはフィラデルフィアの地でしっかりと実を結んでいる。

初の球宴、そして見据える最高の頂

 念願の初選出となったオールスター戦の舞台は、マーシュにとって忘れられない特別な体験となった。

「信じられないくらい素晴らしい時間だった。ロッカールームに入れば、トップ選手たちが顔を揃えている。ベテランからも若い選手からも学べることばかりだった。人生で一度きりの特別な経験になるかもしれないし、またこの場所に戻ってきたいと強く思わせてくれる時間だったね」

 オールスター期間中のイベントでは、名作野球映画「サンドロット」をモチーフにした演出に心を打たれたという。「子どもたちがライトを持ってグラウンドに登場して、映画のテーマ曲が流れた瞬間は、僕にとって胸が熱くなる特別な思い出になった」と表情を緩めた。

 だが、夢の宴を終えたマーシュが見据える視線は、すでにシーズン後半戦、そしてその先にある「最高の栄誉」へと向けられている。

 今シーズンの最終目標を問われたマーシュは、迷いのない強い眼差しで一言、こう言い切った。

「目標? もちろん、ワールドシリーズ優勝さ!」

取材に応じたマーシュ【写真:小谷真弥】取材に応じたマーシュ【写真:小谷真弥】

 エンゼルスからの電撃移籍を経て、フィラデルフィアの熱狂的なファンの心を掴み、オールスター選手へと登り詰めたマーシュ。大谷から受け継いだプロの精神を胸に、背番号16はチームを世界の頂点へと導くため、今日も泥臭くグラウンドを駆け抜ける。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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