大谷翔平、PS二刀流に“黄色信号” 「痛みゼロはない」左膝とド軍監督の虚しい楽観論

走塁にも忍び寄る影「100%の差を埋められない」
【MLB】マリナーズ 7ー6 ドジャース(日本時間29日・ロサンゼルス)
ドジャースの大谷翔平投手は28日(日本時間29日)、本拠地のマリナーズ戦で後半戦初アーチとなる23号先頭打者本塁打を放ち、4打数3安打3打点とバットで圧巻の活躍を見せた。しかし、豪快なアーチを描くその裏で、二刀流が抱える「左膝」の症状は想像以上に深刻かもしれない。
ファンが待ち望む「投手・大谷」の完全復活、そして10月のポストシーズン(PS)で世界一3連覇へと導く――。だが、その足踏みを余儀なくされている現状について大谷自身が明かしたのは、焦りと冷徹な現実の間で揺れるリアルな葛藤だった。
今やチームの絶対的な軸としてDH出場を続ける大谷だが、足元をむしばむ左膝の状態は決して楽観視できるものではない。オールスター休み中に注射治療を施したことを明かしたものの、「痛みがゼロになるっていうことは、ドクターとの話し合いでもないのかな」と激白。単なる一時的な違和感ではなく、今オフの対応まで見据えざるを得ないほど根深い課題であることが浮き彫りとなった。
ブルペン登板の回避についても、「100%なら進むけれど、90数%でも残りの数%の違和感があるなら休む」と説明。「プッシュする必要はない」という球団やドクターとの共通認識のもとで厳重なリスク管理が敷かれているが、それは裏を返せば、一歩間違えれば再発しかねないほど「慎重にならざるを得ない状態」であることを物語っている。
膝の重症度は、投球アプローチの遅れだけでなく、打者としてのプレーにも色濃く影を落としている。本人は打撃への影響を否定するものの、走塁における「感覚と現実の致命的なズレ」には苦しい胸中を覗かせた。
「自分が100%で走れるタイミングでセーフになると思っているところが、スピードが出なくてアウトになるケースもある」
走れるはずのタイミングで膝がついてこない――。走塁でも一級品のパフォーマンスを誇ってきた男が、自身の肉体と思わぬギャップを抱えながらプレーを続けているのだ。

浮き彫りになる温度差…監督のコメントに漂う「説得力のなさ」
10月の大谷登板について問われたデーブ・ロバーツ監督は「私が聞いた全てのことを鑑みると、(登板しないという)選択肢はない」「良くなり続ければ彼は投げる」と強気の姿勢を崩していない。
しかし、大谷自身が「痛みがゼロになることはない」「残りの数%の違和感があるなら休む」と生々しい肉体疲弊と痛みを吐露している以上、こうした指揮官の前向きな発言はどこか現実味を欠き、虚しく響く。
監督自身も最終的には「翔平やトレーニングスタッフが回答すべき問題」と責任の所在を曖昧にしており、現場トップの抱く願望混じりの楽観論と、選手本人が直面している過酷な現実との間には大きな溝が存在している。現状において、周囲を納得させるだけの説得力を決定づける材料はどこにもない。
「早く良くなりたい気持ちと、果たしてそこまでにどの程度良くなるのかなという悩ましさがある」「9月の最後、ポストシーズンに間に合えばいい」と語る大谷だが、現状の回復スピードを鑑みれば、今季中の投手復帰、そしてPSでの二刀流復活には大きな黄色信号が点滅していると言わざるを得ない。
完全治癒が見通せない左膝の違和感とどう向き合い、いかにして勝負の秋を迎えるのか。指揮官の言葉とは裏腹に、もどかしさと不安を抱えた背番号17の厳しい戦いは続いていく。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)