外国人観光客が急増中 京セラドームでナイター観戦が「夜の観光」の定番になる理由

平日夜の予定を埋める「プロ野球のナイター」へのニーズの高まり
2025年の訪日外客数(訪日外国人観光客)は、前年比15.8%増の4268万人を記録し過去最多を更新した*1。韓国、中国、台湾、アメリカ、香港、タイ、オーストラリアなどからの旅行者が大半を占める中、パ・リーグ6球団の主催試合でもインバウンド向け観戦チケットの販売数が昨年の実績を上回り、順調な推移を見せている。
かつて外国人ファンによるプロ野球観戦といえば、台湾や韓国出身選手を目当てにした来場が主流だったが、ここ1~2年で客層に変化が起きている。特に大阪や京都といった関西圏を訪れる欧米豪の旅行者が、日中の神社仏閣参拝や観光を終えた後の「ナイトエンターテインメント」として、都市型ドームである京セラドームでのナイター観戦を選ぶケースが急増。従来の観光地巡りから、日本独自の文化を肌で体験する「コト消費」へとニーズがシフトしている事実を示している。
このインバウンド需要の変容と今後の対策について、パ・リーグの訪日外国人観光客に向けチケット販売を行う株式会社Tickets in Japanの薗田好豊さんと、オリックスでチケット企画を担当する阿部優輝氏さんが対談した。
――外国人観光客の方がネットでオリックス戦のチケットを購入する際、公式チケットサイトの「オリチケ」と、訪日外国人観光客に特化した「Tickets in Japan」に行き着きますが、それぞれの違いや特徴を教えてください。
阿部「公式チケットサイト『オリチケ』内に、インバウンド向け販売サイトを作成しました。外国人の方でも購入できる会員登録不要のサイトです。ほぼ全てのオリックス主催1軍試合と席種を取り扱っていて、座席も選択することができ、幅広い選択肢からお選びいただけるのが特徴です」
薗田「『オリチケ』とは異なるチケット販売サービス『Tickets in Japan』は、株式会社Tickets in Japanが運営する訪日外国人観光客に特化したサービスです。そもそも日本語版のWebサイトはなく英語、繁体字、ハングルの外国語に特化した多言語サイトで、UI&UXや海外決済、カスタマーサポートなど全機能が外国人専用になっています。また、チケットを販売するだけではなく、取り扱いのライブやスポーツの魅力を発信すべく、主催者の皆さんに情報をいただき紹介記事を執筆しTickets in Japanサイトに掲載。さらにその記事をSNSや各種PRサイトで海外へ配信していくのが特徴です」
――近年のインバウンド需要の実態と、市場や客層の変化について教えてください。
阿部「2010年代までは韓国や台湾などのアジア圏のお客様が中心でしたが、ここ2年はアメリカ、カナダ、オーストラリアといった欧米豪のお客様が数字としても明らかに増えています」
――関西観光のルートに、野球観戦が組み込まれているのでしょうか。
阿部「そうですね。大阪や京都の繁華街、関西国際空港から京セラドーム大阪までのアクセスがいいので、観光のルートに組み込みやすくなっています。特に、京都の神社仏閣などは夕方に閉まってしまうため、旅行者の方々は『空いた夜の時間に何をするか』を考えています。その選択肢として、全天候型で夜に完結する『プロ野球のナイター』というコンテンツがうまくはまっているのだと思います。外国人観光客の方には、平日か週末かは関係ありませんので、平日ナイターでも購入していただいています」
――「Tickets in Japan」のデータやユーザーの動きを見て、オリックスの試合における傾向はいかがですか。
薗田「弊社のデータでもバファローズのチケット購入者は、アメリカが44.6%、台湾が20.4%、オーストラリアが18%となっており、他球団に比べて欧米豪の割合が非常に高いのが特徴です」
阿部「面白い傾向ですよね。オーストラリアからの来場が多いというのが意外でした。オリチケ側のデータを見ると、春先には桜を目当てに来日するヨーロッパからのお客様の購入が急増し、夏に一度落ち着いて、秋の紅葉シーズンにまた増えるという季節連動の動きも見られます。アメリカやカナダのお客様はもともと野球大国ですし、山本由伸投手や吉田正尚選手がかつて在籍した球団という認知を持って、ピンポイントで調べて見に来てくださるケースも多いですね」
――日本野球に精通した外国人観光客は、試合観戦だけでなく球場グルメや応援グッズなど、王道の楽しみ方を知っていそうですね。
阿部「そうですね。そういったお客様にはユニホームやタオルなどのグッズもよく売れています」
薗田「客席で名物球場グルメ『いてまえドッグ』を食べている外国人のお客様もよく見ますね。あのインパクトある見た目は写真映えしますもんね!」
阿部「『いてまえドッグ』は男女問わず人気ですね。他には大阪らしいたこ焼きなども人気です」

顕在層はオリチケ、潜在層はTickets in Japanで
――これまでオリックスが実施してきたインバウンド施策と、球団の変化について教えてください。
阿部「試合日に球場へ行けば必ず外国人のお客様がいらっしゃるので、社内でもインバウンド向け販売の強化への関心は非常に高まっています。スタジアムでは、まずサイネージや案内などの英語表記を増やす対応を進めています。幸いなことに、現在は英語での対応が可能なスタッフが一定数揃っており、現場でのソフト面の対応に生かされています。また、外国人のお客様向けにはあえて『デジタル発券』ではなく、窓口での『紙チケット引き換え』を採用しているのですが、これによってスムーズな導線が確保され、窓口での混乱やトラブルも起きていません。席種としては、三塁側を中心に割り当てることで、現場の混雑回避にも繋がっています」
――Tickets in Japanと連携したことでの手応えはいかがですか。
阿部「球団単体では、英語以外の言語への対応や海外特有の決済手段、そして『購入後にどう球場へ行き、どう観戦するか』といった細かなカスタマーサポートをカバーしきるのには限界があります。そのため、すでにバファローズを認知している顕在層は自社の『オリチケ』へ、それまでアプローチできていなかった潜在層は『Tickets in Japan』に幅広く拾い上げていただくという、明確な住み分けが手応えとして見えています」
――相互補完的な関係性ができているということですね。Tickets in Japanに期待していることは何ですか?
阿部「Tickets in Japanさんには、単なるチケット販売に留まらず、海外ユーザーの視点に立って会場へのアクセスや観戦マナーを多言語で伝える『メディア』としての役割に期待しています」
薗田「まさにTickets in Japanもそこは意識しています。チケットを売るだけでなく、『日本のプロ野球を観るなら、まずTickets in Japanで情報を得てから行こう』と言われるような質の高いメディアへと成長させ、球場施設の紹介といったコンテンツも強化していきます」
阿部「球団としてもそこに便乗して、球場観戦の魅力をどんどん発信していきたいですね」
――現状の課題と、今後の日本プロ野球をさらに強固なインバウンドコンテンツにしていくための展望を教えてください。
阿部「ハード面では、欧米豪からお越しのお客様の中には座席が小さいという問題があります。より良い観戦体験をしていただくために、今後どうしていくべきか検討をしています。また、『キャンセルや日程変更はできないのか』という文化的な習慣の違いによる問い合わせも一部ありますね」
薗田「Tickets in Japanでも、キャンセルや払い戻しの問い合わせは一定数あります。例えば韓国では、日本のホテルや飲食店予約のように、プロ野球のチケット購入後、キャンセル料は発生しますが一定期間キャンセルできる文化のようです。ここは日本の文化をご理解いただけるよう海外のお客様に説明しています。ただ、意外と日本のプロ野球のルールとしてキャンセル不可を受け入れてくださるお客様も多いんですよね」
阿部「確かにそうですね。今後は、一過性の観光需要に終わらせないための『リピーター化』が大きな課題です。欧米豪の方々は『野球の試合そのもの』だけでなく、日本独自の鳴り物や応援団の熱気といった『応援文化』や、たこ焼きをはじめとする『球場グルメ』を含めた“体験”を求めて来られています。ドームという天候に左右されない強みを生かし、夜の時間を豊かにする日本のエンターテインメント文化として、さらに魅力を発信していきたいです」
薗田「今後は『練習見学付きチケット』のような商品や、ファームも含めたチケットを展開し、将来的にはプロ野球全体や、ほかのスポーツ、ライブエンターテイメントと訪日外国人観光客を繋げる大きなインバウンドサービスを構築し、持続的な日本のライブエンターテイメント&スポーツファン獲得に挑戦したいと考えています」
阿部「一緒に頑張っていきましょう!」
*参考1:日本政府観光局「訪日外客統計2025年12月推計値」
(「パ・リーグ インサイト」海老原悠)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)