DeNAに戸柱恭孝が必要な理由 突如スタメンで東克樹を好リード、出番来なくても…欠かさなかった“習慣”

12日の中日戦でバッテリーを組んだDeNA・戸柱恭孝(左)と東克樹【写真提供:産経新聞社】12日の中日戦でバッテリーを組んだDeNA・戸柱恭孝(左)と東克樹【写真提供:産経新聞社】

中日戦に急遽先発出場して“4年ぶり”に東をリード…プランは「逆をしよう」

 突如やってきた出番で、“らしく”仕事を果たした。DeNAの戸柱恭孝捕手が12日、バンテリンドームで行われた中日戦に「8番・捕手」で出場。東克樹投手を8回3安打1失点と好リードするなど勝利に貢献し「チームを勝ちに導くことが与えられた仕事。勝ててよかったです」と安堵した。東と戸柱のバッテリーは2024年10月29日のソフトバンクとの日本シリーズ第3戦(みずほPayPayドーム)以来。レギュラーシーズンに限れば、2022年5月15日の阪神戦(甲子園)以来、実に4年ぶりだった。

 この日、松尾汐恩捕手が感染症特例のため急遽出場選手登録を外れた。そのため戸柱がスタメンを告げられたのは、練習直前のことだった。それでも豊富な経験とベンチで培った分析力を生かし、「(松尾)汐恩と組んでいたのは見ている。中日戦が多かったから、その入り方の逆をしようと思ったんです」。初回、先頭の福永裕基内野手への初球はカーブで入った。直球やツーシームの割合も増加。「試合の入り、中間、締めの結果球も変えられた。全部が繋がった打席が、全部の打者にあった」と充実の汗を拭った。

 開幕から1軍に同行しながら、先発出場はこの日が14試合目。出場も25試合にとどまっている。1つしかない「捕手」は難しいポジションだ。今季は開幕から山本祐大捕手がメインでマスクを被っていたが、5月にソフトバンクに電撃トレード移籍。直後は松尾とともに出場機会が増えたが、その後は松尾がレギュラーと呼べる立ち位置にいる。ずっと1軍に同行しているからこそ、試合でマスクを被ることができない。そんなもどかしさを抱えることになる。

 7月には、3週間近くマスクを被っていない期間があった。「いろいろな感情があります」と思わず漏らしたこともある。しかしベンチを見れば、戸柱が果たしている役割の大きさは明確だった。投げ終わった投手のもとに出向き、会話を重ねる。バッテリーを組んでいる捕手やコーチとの会話はどこのチームでもあることだが、それを戸柱も必ずと言っていいほどやっていた。

スタメン出場は減っても、戸柱の存在感はDeNAに欠かせない【写真:井上学】スタメン出場は減っても、戸柱の存在感はDeNAに欠かせない【写真:井上学】

「次にもし組んだときにうまくいくように、その投手も含めて、どういう考え方があったのかとか、なぜあそこであの球を投げたのかとか、ちょっとでも頭に入っていれば違うので。もし自分がいったときのもう一つの引き出しにもなりますから」

 体現したのが、まさにこの日の試合だった。また戸柱のこの行動は、特に若手投手陣にとって貴重な学びの時間となっている。今季キャリアハイのシーズンを送る中川虎大投手や、プロ2年目の篠木健太郎投手らは「ありがたいです」と声を揃えて強調した。

 中川虎はその時間を「投げた内容を振り返り『ここがよかった』『こうしたほうがいいんじゃない』とか。打たれても『ここがよかったよね』と言われることもありますし、抑えても『もっとこうした方がいい』となることもあります。絶対に自分にマイナスにならない言葉をくれて、次に繋げることができます」と話す。

 マウンド上で視野が狭くなりやすいという中川虎は「トバさんは視野が広い。その部分が頭に入ることによって、狭くなったときに考えを広く持てる。プラスな面ばかり、というかマイナスになることがないです。監督やコーチからいただく言葉とはまた違う。本当に、ずっといてほしいです」。感謝の言葉が止まらなかった。

ベンチで若手投手にアドバイスを送る戸柱(左)【写真:井上学】ベンチで若手投手にアドバイスを送る戸柱(左)【写真:井上学】

 篠木は8月1日の巨人戦(東京ドーム)に先発した際、5回までわずか1安打で無失点投球も、6回に6連打を浴びて6失点でイニング途中にマウンドを降りた。「自分の中で6連打の経験がなくて、そういうときに流れを変えようとできるかもしれないという選択肢を3つ、4つアドバイスしてくださいました。すごく経験の多い方ですし、自分は全然トバさんほど野球をまだ知らないので、本当にありがとうございますって感じです」と笑顔を見せた。

 7月21日の阪神戦(甲子園)、8月8日の広島戦(横浜)でバッテリーを組むと、とある発見があった。「組んだときには組んだときの話し方というか、伝え方を変えてくれているのかなって自分の中では思っていて。上がるような話し方をしてくれて入ってきやすいというか……。ベンチで話してくれるときは落ち着く感じ。自分の受け取り方かもしれないですけど、そのときによって変えてくれているんじゃないかなと思っています」。

 そしてこちらも「感じたことをストレートに言ってくれて、自分の中の引き出しのプラスアルファを常にベンチでもらっています。あと裏でのケアというか、そういう面も含めて助かるって言い方は違うかもしれないですけど、本当にありがたい存在です」と感謝の言葉を並べたのだった。

ベテラン捕手としてチームを支える戸柱【写真:加治屋友輝】ベテラン捕手としてチームを支える戸柱【写真:加治屋友輝】

 戸柱自身は「話し方や内容は人によってです。『何やっとんねん』っていうときもあるし、しっくり来ない人には『あそこはこうで』とか説明したり。『次があるんやから』みたいな言葉を掛けることもあります。ましてや野球が終わるわけではないですし、自分が言われたら次に繋がるなという言葉を投手にも言うようにしています」と人身掌握術の一端を明かした。

 出番がなかなか来なくても、そうしてチームのために自ら動いてきた。だからこそ、この日のように突然の出番でも結果を残すことができたのだろう。戸柱がチームに必要な理由が、そこにあった。

(町田利衣 / Rie Machida)

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