ベンチプレスは「大嫌い」…最速169.7キロ右腕ミジオロウスキーの“原点” 怪物が明かす剛速球の裏側【全5球種の握り写真あり】

  • 上野明洸
    上野明洸 2026.08.15
  • MLB
ブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー【写真:黒澤崇】ブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー【写真:黒澤崇】

24歳のミジオロウスキー、最速170キロのピッチングに迫る

 ブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー投手は、今季防御率ランキングでリーグトップの1.76を記録し、サイ・ヤング賞最有力候補の1人に挙げられている。今季は105.5マイル(約169.7キロ)を計測するなど、まさに“超剛腕”の24歳に、ボールの握りや日々のトレーニングについて聞いた。

 昨年はデビュー戦で球団の最速記録を塗り替える102.3マイル(約164.6キロ)を叩き出すなど、鮮烈なデビューを飾った。オールスターゲームにも選出されるなど、一躍チームの顔となった。

「去年とは、フォームも感覚も変わったことはないよ。変わったとすればウエートルームで、少し重い重量をあげるようにしたくらいかな」

 今季は6月26日(同27日)のカブス戦で先発投手としては史上最速となる105.5マイルを計測。ここまで22試合で11勝5敗、防御率1.76、WHIP0.74と驚異的な投球内容だ。

「ベンチプレスは嫌いなんだ」細身の体から放たれる剛速球

試合前に練習を行うブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー【写真:アフロ】試合前に練習を行うブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー【写真:アフロ】

 驚異的な球速を生み出すその体は、決して筋肉質ではない。彼の場合、「長い手足を巧く操っている」という見方が正しいだろう。MLB公式のデータサイト「Baseball Savant」ではピッチャーが投球時にどれだけプレートから離れた位置でリリースするかを示す「Extension」が7.6フィート(2メートル31センチ)となっており、球界最上位層に位置する。

 トレーニングも「上半身のメニューからはできるだけ離れるようにしていて、あまり好きじゃないんです」と話す。「ベンチプレスは大嫌いなんだ(笑)。ダンベルをやっているかな」。

「スクワットに関しても、重量を決めているわけではなくて、マックスの重量も本当に分からない。その日の感覚で調整していて、調子が良い日は重くするし、重く感じる日は軽くする。『この数字を目指す』みたいなものはなくて、その日の気分や体調に合わせてやる感じなんだ」

 身長は201センチあるが、体重は91キロ。他の身長2メートル前後の投手と比べるとかなり細身の部類になる。昔から食べることが苦手で、体重を増やすことに苦戦してきた人生だったという。

「自分にとっては体にエネルギーを補給し続けることが大切です。以前は『食べる』こと自体が大きな課題でした。いくら質が良いものをしっかり食べても、全然体重が増えなくて……。目につくものをとにかく何でも食べて、とにかくカロリーを入れるようにしたら、ちゃんと体重が増えていった。だから重点はとにかくカロリーを摂ること。プロテインシェイクでも、回数を分けた食事でも何でもよくて、とにかくカロリーを入れることを大事にしていた」

ブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー【写真:ロイター】ブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー【写真:ロイター】

 今の野球界は投打において、球速や打球速度の“高速化”が著しい。その先頭を行くミジオロウスキーは、若者への「注意」も語る。

「焦らないことです。若い年齢で100マイル(約161キロ)を投げるのは人体にとって良くないと思うからね」

「自分のペースを保ち、自分の体が何に耐えられるかを理解して、無理に追い込みすぎない方が良いと思う。無理をすると怪我をしてしまって、長期間苦しんだりそれを治すことに時間を取られてしまう」

 高校時代のミジオロウスキーの最速は95マイル(約153キロ)前後。短大では右膝の怪我も経験し、下半身や体幹のトレーニングを積み重ねて今の球速に至る。

全5球種の握りと投げ方は

〇ファストボール 
最速105.5マイル(約169.8キロ 平均100.6マイル(約162キロ) 平均回転数2628

「正直、フォーシームの握りについてはあまり考えていないんだ。手元の動きについては意識していなくて、どこを狙うか、どこに投げるかということだけを考えているんだ」

「押し出そうとすると、シュート回転して一塁側にふきあがってしまう。だから、基本的には体の開きを抑えて、下半身を使って自分を引っ張る(連動させる)ような意識を持っています」

〇カットボール
最速99.6マイル(約160.3キロ) 平均96.0マイル(約154キロ) 平均回転数2581

「カッターは、とにかくヒーター(直球)だと思って投げています。なので、そのまま下に向かって振り抜く意識です。スライダーの時も同じような意識ですが、ほんの少しだけボールの外側を切るような感覚ですね」

〇スライダー
最速95.5マイル(約153.7キロ) 平均91.9マイル(約148キロ) 平均回転数2508

〇カーブ
最速91.4マイル(約147.1キロ) 平均88.0マイル(約142キロ) 平均回転数2233

「これが最初に覚えた球種です。特殊な握り方をしていて、子どもの頃は指が短かったんだけど、これでとにかく投げるだけ、みたいなものでした。それから手が大きくなるにつれて、どんどん深く握れるようになって。ずっとこの握り方なんです」

〇チェンジアップ
最速95.5マイル(約153.7キロ) 平均92.5マイル(約149キロ) 平均回転数2037

「ただ下方向とアームサイド(三塁側)に流すように変化させることだけを考えています。それだけです。投げる時、絶対に高めには浮かせたくないですね。とにかく低めに集めることが一番の狙いです。カーブとチェンジアップは考え方としては似ていて、正直グリップの違いだけですね。『特定のスポットに投げる』ことだけを考えて、あとは自然と変化を起こして希望の場所に行ってくれるのを信じるだけです」

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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