オリックス・廣岡大志が味わった苦悩「野球どころじゃなかった」 無力感に支配…明かした胸中、見えだした“光”

復帰に向け、2軍で調整を続けるオリックス・廣岡大志【写真:加治屋友輝】復帰に向け、2軍で調整を続けるオリックス・廣岡大志【写真:加治屋友輝】

廣岡は5月20日に「腰椎椎間板ヘルニア摘出術」を受け、リハビリ中

 プロ入り後初めて長期離脱を経験し、野球をできる喜びを感じ取っていた。「野球人生で初めてですね。本当にしんどかったけど、できることは増えてきました」。現在、2軍でリハビリを続けるオリックスの廣岡大志内野手は、安堵の表情を浮かべながら静かに口を開いた。

 11年目を迎えた今季、廣岡は長く孤独な時間を過ごしている。卓越した打力と、内外野のあらゆるポジションを高いレベルでこなすユーティリティ性を武器に、昨季はチームに欠かせない存在として躍動した。6月に骨折で一時離脱を余儀なくされたものの初めて規定打席に到達し、打率.254、7本塁打をマーク。守備でも6つのポジションをこなした。開幕1軍に名を連ね、さらなる飛躍とレギュラー定着が期待された今季だったが、5月20日に「腰椎椎間板ヘルニア摘出術」を受けた。

「ようやくバッティングだったり、キャッチボールだったりができるようになってきたなという感じです。ボールを投げられるようになったのは、8月ぐらいからですね」

 通常であれば「腰椎椎間板ヘルニア摘出術」は、競技復帰まで2~3か月と言われている。ソフトバンクの近藤健介外野手も昨年4月に同手術を受け、約2か月後の5月末に1軍復帰した。しかし、廣岡の場合はやや事情が違った。季節が夏へと移り変わっても、1軍に背番号「30」の姿はなかった。

「腰じゃなかったんですよね。ヘルニアと言われていたんですけど、痛みが取れなくて。そこの原因が分かるのに時間がかかりましたね」

昨季は内外野6ポジションをこなし、攻守でチームを支えた【写真:小林靖】昨季は内外野6ポジションをこなし、攻守でチームを支えた【写真:小林靖】

野球人生で初の長期離脱も「なんとか兆しは見えてきた」

 メスを入れるという大きな決断を下したにもかかわらず、痛みは引かなかった。患部が癒えれば動けるようになるはずだったが、原因は別に潜んでいた。手術を受けた箇所とは別に、新たな症状が発覚。プロ野球選手としての活動はおろか、人間としての日常すらも奪っていくものだった。

「できることだけしようと思っても、できることがないんです。少しだけでも上半身を動かそうとか、そんなレベルじゃなかった。歩けるかどうかぐらいの状態だったので、それが結構しんどかったですね。日常生活も大変で、野球どころじゃないって時もあったので」

 プロの世界に入ってから、これほどの長期離脱は初めての経験だった。グラウンドで泥にまみれることも、バットを振ることも許されない。心身ともにすり減っていく感覚――。それでも、「日を浴びなきゃいけない」と、無理をして外に出た。圧倒的な無力感と焦燥感が、包み込んでいったという。

 仲間がペナントレースで激しい戦いを繰り広げている間、1軍の状況は「ちらっと見る程度」しかできなかった。なぜ治らないのか、いつ治るのか。もどかしさを抱える日々が、暗いトンネルのように続いた。

「しんどかったですね。その期間が。なんでなんだ、という気持ちがずっとありました。でも、なんとか兆しは見えてきたので。今年、間に合うように復帰したい気持ちはあります」

復帰を目指し、バッティング練習に取り組む廣岡大志【写真:橋本健吾】復帰を目指し、バッティング練習に取り組む廣岡大志【写真:橋本健吾】

現在はキャッチボール、バッティングができるまで回復「向き合っていくしかない」

 暗闇の中でもがき続けた末に、ようやく痛みの原因と正体に向き合うことができた。基礎体力や筋力は落ちたが、地道なリハビリを経て、8月に入りようやくボールを投げられるまでに回復。失われた筋力も、少しずつ戻ってきている。何より、再び野球の動きができる喜びが、言葉に確かな熱を与えていた。

 とはいえ、焦りは禁物だ。実戦復帰に向けての道のりは、まだ途中。はやる気持ちを抑えながら、己の身体と慎重に対話を続けている。

「自分としては行ける感覚はあるけど、GOサインが出るまでは無理できない。そこ次第ですね。でも、なってしまったものは仕方がないですから。向き合っていくしかない」

 ヤクルト、巨人、オリックスと3球団を渡り歩いた29歳はここまで泥臭く、ガッツあふれるプレーでチームを支えてきた。だからこそ、不完全な状態で軽々しい言葉を口にすることはできない。「(ファンの方に)軽々しく『元気にやってます』とは言えない」。万全の状態でグラウンドに立ち、プレーで健在ぶりを証明するつもりだ。

 苦難のトンネルを抜け、ようやく差した一筋の光。焦らず、一歩ずつ。背番号「30」が再び京セラドームで躍動する日を、ファンは静かに待っている。日常すら奪われる絶望を味わいながらも、決して前を向くことをやめなかった男は、長く苦しい期間を糧とし、1軍のグラウンドで“完全復活”の狼煙を上げるつもりだ。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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