3月のOP戦で1軍昇格も1回5失点(自責4)、防御率36.00で開幕2軍スタート
ヤクルトの阪口皓亮投手が、プロ9年目にしてキャリアハイのシーズンを過ごしている。8月28日時点で、24試合に登板して防御率2.38、2ホールド。188センチの大型右腕は27歳にして進化を遂げており、信頼感も増している。その要因について「んー、割り切り?」と豪快に笑った。
2017年ドラフト3位でDeNAに入団。2019年に先発として1軍デビューを果たすも3登板で0勝1敗、防御率5.87に終わった。2021年に待望のプロ初勝利を挙げるなど8登板で防御率4.11も、9月に右肘を手術。2022年は1軍では1登板のみに終わり、2023年7月にトレードでヤクルトに移籍した。
新天地では救援を担い、同年13登板で防御率3.31。しかし2024年は2登板で同10.80、2025年は18登板で同3.70と結果を残せずにいた。
背水の思いで迎えたプロ9年目だったが、思わぬ壁が立ちはだかる。2月の春季キャンプは2軍で過ごし、ようやく1軍合流となった直後のことだった。
3月7日の西武とのオープン戦(春野)。0-2の8回から4番手でマウンドに上がった。やっときたアピールの機会で、打者9人に5安打を浴び5失点(自責4)とまさかの大炎上。味方の失策もあったが流れを変えられず、オープン戦はこの1登板のみで「防御率36.00」という数字が残った。
“最悪”の結果――。しかしこれが、阪口にとってはプラスに働くことになる。
「オープン戦で5失点して『あ、俺今年終わったな』って思って。クビだって思ったら、もうストレスなく投げようと思ったんです。やっぱり速い球を投げようとか、もっとコントロールよくしようとか思っていたんですけど、今は何も考えていないといったら失礼ですけど、変に『ここで結果を出さないと落とされる』とか考えるんじゃなくて、『投げろって言われたから投げただけやし』みたいな。めっちゃ他責思考ですけど、そういう考えになったのが今に繋がっている感じです」
「なんなら平均球速は昨年よりちょっと下がっているしなぁ」
開幕は2軍で迎えるも、5月13日に1軍に昇格すると、見違えるような姿を見せた。5月は3登板で防御率0.00、6月は7登板で同1.35。7月は8登板で同3.24とやや苦戦したが、1軍で戦い続けている。
一戦一戦積み重ねて、自信を深めているように見えるが、「いや、今回うまくいったから次もいけるとかは、もう思っていないんです」と首を横に振る。「だってコントロールが悪いのに変わりはないし、もし今回抑えられても『次またコントロール悪いやろ』って思って投げているから。きょう良かったらラッキーくらいですよ。ボールも変わっていないし、伸びもないし、なんなら平均球速は昨年よりちょっと下がっているしなぁ」。
まるで他人事のようにケロリと話す。しかしその“割り切り”が奏功しているのだ。「どれだけストレスを感じないように投げているか、それがたまたまうまくいっているだけですよ」と屈託のない笑みを浮かべた。
ただ、少々気にしていることもある。対戦チーム別の成績を見てみると、DeNA戦が防御率9.00とずば抜けて相性が悪い。「さすがに特徴も何もかもわかられていると思いますけど、それにしてもね。実際に打たれているから、打たれるんやろうなって思って投げたら打たれている。ほんま嫌や、投げたくない……」と本音が漏れた。
マインドが変わり、ある意味“楽”になったのかもしれない。「自分に期待していないんです、今年は。ストレスなく投げられたらいい。だからノンストレスが今年のテーマです。打たれるときは打たれるし、(2軍に)落ちたらしゃーない。(このまま1軍に)いられたらいいなとは思いますけど、だからといって『これをしないと』とか『抑えないといられない』とかは考えていません」と話す表情は、厳しい世界で戦っているとは思えないほど晴れやかだった。
一見、欲がなさそうに見える言葉だが、それも紆余曲折を経てたどり着いた阪口の境地だ。「(数字の目標は)なーんもない。きょうを乗り越えようっていう、それだけです」。先を見ず、一戦一戦。シーズンが終わったとき、その積み重ねはどんな数字となっているのだろうか。
(町田利衣 / Rie Machida)