阪神・村上はなぜ打たれない 150キロ未満の球速も…防御率セ界トップの“秘密”を専門家が分析

“虎キラー”ダルベックを外角攻め→インロー真っ直ぐで見逃し三振斬り
阪神・村上頌樹投手は28日、本拠地・甲子園球場で行われた巨人戦に先発し、7回4安打無四球1失点の好投。10勝目(6敗)を挙げて2年連続2桁勝利を達成し、防御率1.84ではリーグトップに躍り出た。ストレートの平均球速は140キロ台半ばで、この日のMAXも146キロに過ぎなかったが、それでも安定感抜群の投球を続けられるのはなぜか──。
夏の全国高校野球選手権大会が終わり、タイガースが甲子園に戻ってきたのは、7月26日の巨人戦以来33日ぶりだった。スタンドは4万2644人の観客で埋まっていた。
「ただでさえプレッシャーのかかる首位攻防3連戦の初戦で、4回まで1人の走者も許さなかった。最高の立ち上がりをしてくれたお陰で、チームは落ち着いて試合を進めることができました」。現役時代に通算2038安打を放ち、引退後も名コーチとして鳴らした野球評論家・新井宏昌氏は、こう称賛する。
「コントロールと相手打者の裏をかくような配球、投球術に長けた投手です」と新井氏。それを象徴するのが、3-0とリードして迎えた5回の投球だった。
先頭のボビー・ダルベック内野手は、阪神戦を得意としており、村上にも3本塁打を浴びせている要注意打者だった。村上は初球から3球連続でカットボールとストレートを外角に集め、カウント0-2と追い込む。内角高めの釣り球のストレートを挟んだ後、5球目の144キロのストレートを内角低めに突き刺し、見逃し三振に仕留めた。
この回、2死後に連打を浴びて一、二塁とされたが、左打者の中山礼都内野手に対し、内角をカットボールで攻めた後、フルカウントから内角低めの146キロのストレートで空振り三振に斬って取った。新井氏は「中山は最後、カットボールに合わせたようなスイングになっていました。コースは同じでも、球種や回転の違いでスイングを崩すことができます。配球と思った所に投げ切る制球力が素晴らしかったと思います」と評する。

「セ・リーグの投手は相手投手が打席に立つところで一息つける」
球種も豊富だ。2回には、好打者の泉口友汰内野手に散々ファウルで粘られたが、ストレート、カットボール、スライダー、チェンジアップ、ツーシームを駆使し、12球目に初めて投じた108キロのカーブで右飛に打ち取った。
リーグ連覇へ向けて着実に歩を進める阪神で、エースの風格を漂わせる村上だが、新井氏は「いい投手であることに間違いはありませんが、仮にパ・リーグであれば、1点台の防御率をマークできるかというと、疑問が残ります。来季からDH制が導入されるセ・リーグで、投手と打者の力関係がどう変化するのか、興味深いところです」とも指摘する。
昨年までの最近10年の日本シリーズでは、パ・リーグ球団が7度日本一に輝いている。セ・パ交流戦も“パ優位”の年が圧倒的に多く、実力差を指摘する声も上がっている。新井氏も「やはりセ・リーグの投手は、相手投手が打席に立つイニングで一息つくことができます。パ・リーグとは試合の中での厳しさが少し違うのかなと感じています」との見解だ。
村上らセ・リーグトップ級の投手にとっては、DH制が導入される来季が、真価を問われるシーズンになるのかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)