甲子園“改造”がきっかけ…新庄剛志がスターになった裏側 低迷続きの阪神が下した決断

1992年、阪神でレギュラーを掴んだ新庄剛志【写真提供:産経新聞社】
1992年、阪神でレギュラーを掴んだ新庄剛志【写真提供:産経新聞社】

1992年に甲子園がラッキーゾーン撤廃…八木裕氏は三塁から外野へコンバート

 元阪神4番打者の八木裕氏(野球評論家)は、プロ6年目の1992年シーズンに外野手へ転向した。春季キャンプ前に中村勝広監督から「サードではなくセンターをやってくれ!」と通達されたが、「その年からラッキーゾーンを取ったからです」と本拠地・甲子園球場の“改造”が関係していた。守りの野球に転じた阪神が首位争いを繰り広げる中、初出場の球宴では思わぬ形で打撃上昇のきっかけもつかんだという。

 1992年4月4日のヤクルトとの開幕戦(神宮)に、八木氏は「7番・中堅」でスタメン出場した。左翼がジェームズ・パチョレック外野手、右翼は真弓明信外野手。前年まで八木氏が守った三塁はトーマス・オマリー内野手で、一塁は岡田彰布内野手、二塁は和田豊内野手、遊撃は新人の久慈照嘉内野手の布陣だった。「キャンプ前に中村監督から『今シーズンから(甲子園の)ラッキーゾーンを取るけど、これまでの外野だと間をナンボでも抜かれるから、お前がセンターをやってくれ』と言われました」。

 甲子園球場外野フェンス内側に設置されていたラッキーゾーンがなくなることで外野が広くなり、守備力優先で八木氏の外野コンバートが決まった。「その頃は一応、足が他の人よりは速かったんでね。そりゃあ、サードの方がよかったですよ。外野に行くと何か遠くの方で野球をやっている感じがしたんでね。でも監督に言われて、完全なコンバート。(仲田幸司投手や湯舟敏郎投手ら)ピッチャーが良くなって、守りで勝ち抜くというチームカラーに変わりましたしね」。

 開幕4戦目からは、この年に背番号を「00」に変更した高卒5年目の亀山努外野手が守備力を買われて右翼で起用され、果敢なヘッドスライディングでも人気になった。前年まで2年連続最下位だった阪神は、守りの野球で一転して4月から首位争いを繰り広げた。「亀が早い時期に加わって、外野は亀と僕とパチョレック。それから(5月下旬に)オマリーが怪我をして、代わりに新庄(剛志外野手)がサードで入って……。新しいスターの出現でしたね」。

 この年の阪神の象徴である女性ファン大熱狂の亀山、新庄の“亀新フィーバー”はこうして生まれていった。「オマリーが(怪我から)帰って来たけど、新庄が打っていたので、どうするってなった時に中村監督はいろいろ考えたと思いますよ。で、センターがいいんじゃないかって。それで(7月上旬に)センターだった僕がレフトへ。レフトのパチョレックがファーストになったんです」。

阪神で活躍した八木裕氏【写真:山口真司】
阪神で活躍した八木裕氏【写真:山口真司】

球宴の打席で掴んだタイミングの取り方「ボールが見やすいな」

 しかしながら「前半戦の僕はあまり調子がよくなかったんです」と八木氏は振り返った。前半を終えて打率.219、9本塁打。それが最終的に.267、21本塁打まで盛り返し、終盤まで続くチームの躍進にも貢献できたのは「成績が上がっていないのに、チームが強いもんだから、オールスター(ゲーム)にファン投票(外野手部門)で選ばれたんですが、そのオールスターに行ってきっかけをつかんだんです」と言う。

 ファン投票では阪神から八木氏の他に、二塁の和田、遊撃の久慈、外野で亀山とパチョレックも選出されていた。当時は3試合制で、八木氏は第1戦(7月18日、甲子園)と第3戦(7月21日、宮城)に途中出場。第2戦(7月19日、千葉)は「8番・中堅」で先発し、右翼も左翼も守ってのフル出場で4打数2安打3打点と活躍したが、きっかけはその第2戦ではなく「(第1戦の)甲子園で(8回に日本ハム・白井康勝投手から)フォアボールを選んだ時でした」と明かす。

「別に意図したわけではなく、その打席でタイミングの取り方が何かの拍子で変わったんです。足の引き方を後ろにしたんです。急になったんですが、“あ、この方が、ボールが見やすいな”となって……。バッティングは生き物なので、それがずっといいとは限らないんですが、(第2戦の)千葉でやってみて2安打したし、たまたまその時は良かったんで“当分これでいけるな”と思った。だから後半戦に打てたんです。8月は(本塁打を)10本打ちましたからね」

 大洋・遠藤一彦投手から11号アーチを放った8月1日(甲子園)には長女も誕生し、さらに気合も入った。ここから八木氏のバットは勢いを増し、9月11日のヤクルト戦(甲子園)では、伝説の“幻のサヨナラ2ラン騒動”も勃発。忘れられないシーズンは佳境を迎える。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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