阪神“新守護神”に見えた課題「速いだけじゃ務まらない」 専門家が指摘…160キロを活かす「条件」

阪神・工藤泰成【写真:栗木一考】
阪神・工藤泰成【写真:栗木一考】

新守護神・工藤泰成の魅力と課題…武田一浩氏が解説

■阪神 3ー1 巨人(30日・甲子園)

 炎の4連投で巨人を突き放した。阪神は30日、甲子園で巨人と対戦。新守護神の工藤泰成投手は3点リードの9回に登板し、1点を失ったもののリードを守り切り8セーブ目を挙げた。27日の中日戦(バンテリンドーム)から4日連続で登板し、いずれもセーブを記録。チームは巨人に3連勝し、ゲーム差を4.5に広げた。

 3-0の9回、マウンドに上がった工藤は疲れを見せることなく最速161キロを計測。やや制球を乱し2四球を与え、2死満塁から浦田俊輔内野手に適時打を許した。14試合ぶりの失点を喫したが、続くピンチに動じることなく後続を断って試合終了。首位の阪神は球団初の連覇に向けて、優勝へのマジックを21に減らした。

 2024年の育成ドラフト1位で入団した工藤は、1年目の開幕前に支配下登録され、昨季は18試合に登板。2年目の今季は開幕2軍スタートも、4月5日に1軍登録されると160キロを超える速球を武器に好投を続けた。8月2日のヤクルト戦(神宮)でプロ初セーブを記録。藤川球児監督ら首脳陣の信頼も高まり、ペナントレースの佳境を迎えてクローザーを担うようになった。

 工藤はここまで45試合に登板して3勝0敗10ホールド8セーブ。防御率1.13と抜群の安定感を誇る。現役時代に日本ハム、ダイエー(現ソフトバンク)など4球団でNPB通算89勝をマークした右腕で、NHKのMLB中継などで解説を務めている野球評論家・武田一浩氏は「いい経験ができている」と解説した。

 日本ハム時代の1991年に最優秀救援投手のタイトルを獲得するなどクローザーの経験もある武田氏は「4連投はなかなかない。相当大変ですよ」と説明。藤川監督の起用を「クローザーにしようと思って使っている。いろいろ経験させたい考えもあると思います」と推測し「ボールは速いので、ある程度抑えられる」と続けた。

「クローザーは難しいポジションです。セットアッパーをあまり経験しないでクローザーをやるのは異例の抜擢。藤川監督もセットアッパーを数年やってからクローザーをしている。最近ではいきなりクローザーというのはなかなかいないし、大抜擢でしょう。状態も良かったので、工藤に任せているんだと思います」

阪神・工藤泰成【写真:栗木一考】
阪神・工藤泰成【写真:栗木一考】

レジェンドの名前を出し制球力の重要性を強調

 工藤はフォークやカットボールなども操るが、最大の魅力は160キロを超える直球。今季は自己最速163キロも計測しており「クローザーは球が速ければ速い方がいいんですよ。1イニングで15球くらいしか投げません。160キロ出れば、そう簡単に打たれない。これからクローザーの難しさも分かってくると思うので、いい場面で使ってもらえればいいんじゃないでしょうか」と、武田氏は右腕のさらなる活躍に期待を寄せる。

 長くクローザーとして活躍するためには、克服しないといけない課題も見え隠れする。「160キロ出ていますけど、もう少しコントロールが良くなるといい。初めて対戦する打者は、そんなに簡単には打てません。でも対戦が増えていくとコントロールが大切になります」。この試合は微妙な制球に苦しんで2四球。早めに追い込みながら、三振を奪いにいった球で仕留めきれないシーンが続いた。

 日米通算381セーブの大魔神こと佐々木主浩氏や、NPB最多407セーブの岩瀬仁紀氏は、球威や球の切れだけでなく、制球力もピカイチだったという。「佐々木はフォークとストレートだけだったけど、ストレートの外角低めコントロールも良かったので抑えられた。岩瀬もスライダーとストレートですけど、コントロールが抜群だったんです」。レジェンドの名前を出して説明した。

 迫力十分の直球や絶対的なウイニングショットに目がいきがちだが、それを支えているのは制球力。「球が速いだけじゃクローザーは務まらない。コントロールが良いのが絶対的な条件。名クローザーになるためにはストレートの精度をもう少し上げること。そうすれば、もっと楽に抑えられるんじゃないかなと思います」。

 育成出身の24歳右腕はまだ成長途上。「今は自信をつけている途中。この試合は1点を取られましたけど、この先抑えていけば、さらに自信がつく。クローザーとして相手のチームにも認められると、登板するだけで抑えられる雰囲気が出てくる。相手が力んできますから、そうなってくればクローザーとしての認知が上がります」。160キロを超える剛速球という絶対的な武器があるだけに、楽しみは尽きない。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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