甲子園Vから1年…17歳逸材が抱える葛藤 戻らぬ球威、残せぬ結果「代表を断ろうかと」

大学代表との壮行試合に登板した沖縄尚学・末吉良丞【写真:黒澤崇】
大学代表との壮行試合に登板した沖縄尚学・末吉良丞【写真:黒澤崇】

2025年、夏の甲子園優勝投手・末吉良丞の“現在地”「状態は全然良くない」

「第14回 BFA U18アジア選手権」に臨むU-18日本代表で、投手主将を任されているのが沖縄尚学の末吉良丞投手だ。昨年9月に行われた「第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」にも出場し、左のエースとして期待される17歳。ただ、現在の状態について本人の口から出たのは「もう全然良くないです」という厳しい言葉だった。

 末吉は2年生から背番号「1」を背負い、昨夏は沖縄尚学の甲子園初優勝に大きく貢献。決勝でも最後のマウンドに立ち、胴上げ投手となった。ワールドカップでは2年生で唯一代表入りし、銀メダルを獲得した。

 だが、甲子園優勝からの1年は思い描いたものにはならなかった。今春の選抜では初戦で敗退。その後は肘のコンディション不良もあり、満足に登板できない時期が続いた。

 最後の夏の甲子園では、初戦で横浜(神奈川)と対戦。自己最速157キロを誇る織田翔希投手との直接対決に注目が集まったが、末吉は3回3失点で降板した。不完全燃焼のまま聖地を去り、そこから約3週間が過ぎた。アジア選手権に向けて調整を続けているものの、本人の感覚はまだ戻っていない。

「スピードや球の強さがない上に、コントロールが全然定まらない」

 8月29日に行われた「侍ジャパン U-18壮行試合 高校日本代表 対 大学日本代表」では1イニングを無失点。それでも自己評価は厳しかった。「シンプルに自分の実力不足でした。自分の調子が悪かった分、打者をかわすような投球になりましたが、普通に投げていたら打たれていた」。

 苦しい状態が続く中、甲子園を終えた直後には「最初は代表を断ろうかなと……」と考えるほど追い込まれていたという。それでも、ジャパンの指揮を執る岡田龍生監督は末吉を必要としていた。

「肘の調子が万全でない場合は、彼の将来もありますし、遠慮をしようと考えていました。(沖縄尚学の)比嘉監督に確認したところ『怪我の心配はない』とのことでした」。岡田監督は招集までの経緯をそう説明する。その上で「昨年の経験もありますし、このチームには『末吉君が絶対必要だ』ということで選考しました」と明かした。その言葉通り、末吉は投手主将にも指名された。

取材に応じた末吉良丞【写真:神吉孝昌】
取材に応じた末吉良丞【写真:神吉孝昌】

織田翔希からかけられた“言葉”に「誰が言ってんだよ(笑)」

 思うような投球ができない中でも、代表活動には刺激がある。甲子園初戦でしのぎを削った織田とは今、同じユニホームを着てアジア制覇を目指している。ブルペンで横並びになって投げる日もあり、末吉は冗談交じりに本音を漏らす。

「横で投げないで欲しいです。投げたくなくなるので(笑)」

 織田の魅力については「一番はスピードボールとコントロールが素晴らしいところ。見習っていきたいです」と素直に認める。グラウンドを離れても交流は続いている。宿舎では野球の話をすることも多いという。

「織田が『僕のボールの強さがすごい』と言ってきたのですが、『誰が言ってんだよ』と言い返しました(笑)」。甲子園では敵として投げ合った2人が、今は互いの長所を認めながら同じ目標を追っている。

 末吉にとって、U-18代表には昨年の悔しさも残っている。ワールドカップでは決勝の米国戦に先発し、3回1/3を投げて1失点で降板。チームは敗れ、金メダルには届かなかった。「昨年は準優勝という悔しい結果で終わってしまった。今年こそはどうにか優勝して、金メダルを獲得できるように頑張りたいです」。

 一度は出場をためらった代表の舞台。それでも今は投手主将として、昨年届かなかった頂点を目指す。チームを引っ張りながら、自分自身のボールも取り戻せるか。末吉にとって、2つの意味を持つアジア選手権になる。

(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)

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