オリックス・堀柊那、“ベンチ漬け”の日々が続いた背景 「何のために1軍?」…SNSで疑問も、コーチが明かす意図

プロ3年目を迎えたオリックス・堀柊那【写真:栗木一考】プロ3年目を迎えたオリックス・堀柊那【写真:栗木一考】

高卒3年目の堀が今季初スタメンでプロ初打点…1軍初のフルイニング出場

 自身にとっても、ファンにとっても待ちに待った今季初スタメンだった。オリックスの21歳・堀柊那(しゅうな)捕手が4日、京セラドームで行われたロッテ戦に「9番・捕手」で先発出場し、プロ初打点をマークするなど1安打1打点。守っても先発・高島泰都ら5投手を1失点に導く好リードで、勝利に貢献した。

 プロ3年目の今季はファームで54試合に出場し、打率.307(150打数46安打)、1本塁打、17打点と好成績を残して8月25日に1軍昇格。それまでに1軍に2度昇格したものの出場機会に恵まれず、「早く1軍の試合で結果を残したい。でも、やるべきことはたくさんある」と、“その時”を待っていた。

 8月26日の楽天戦(京セラ)では2軍でバッテリーを組んでいた齋藤響介投手が先発したこともあり、ファンからは初スタメンを期待する声が上がったが、マスクを被ることはなかった。その後、3試合に途中出場して1安打を放ったものの、依然としてスタメンの機会はなかった。

 チームは苦しい状況が続き、3位・日本ハムに大きく引き離されクライマックスシリーズ出場は難しい展開。SNS上では、期待の若手にチャンスが訪れないことについて「何のために1軍に上げた?」「ベンチ漬け」「塩漬け」など、起用法を疑問視する声が上がっていた。

打力も光るオリックス・堀柊那【写真:栗木一考】打力も光るオリックス・堀柊那【写真:栗木一考】

首脳陣が求める「捕手としての覚悟」

 こうした周囲の声に対し、報徳学園の先輩でもある山崎勝己バッテリー兼ディフェンス担当コーチは「もちろん、戦力として考えているから1軍に上げている」と明言する。しかし、スタメン起用がなかったことについては「若いから、勢いをつけるとか、そんな簡単なことで試合に出られるほど甘くありません」と厳しい姿勢を示す。

 現在のチームには、今年のWBCに出場した若月健矢、森友哉(左手首手術を受け離脱中)、石川亮といった実績ある捕手がそろっている。チームの勝敗を左右し、投手の生活を預かる重要なポジションだからこそ、同コーチは熱く語る。

「シーズン終盤に若い選手にチャンスを与えることもあるが、それだけで『行ってこい』とはならない。捕手の指一つのサインに、投手の生活(野球人生)がかかっている。それだけの覚悟と信頼が求められる。若いバッテリーで勢いをつけてほしいこともあるが、それでダメだった時は潰れてしまう可能性もある。そんな選手をたくさん見てきました」

 さらに、SNSなどで囁かれる起用法への“不満”に対しても、明確な意図を口にした。

「2軍で1週間試合に出続けるよりも、少ない機会でも1軍で時間を過ごす方が得るものが多いと思っています。たとえ出場機会がなくても、試合前の準備やベンチから見える景色、あらゆる状況での考え方など、ここでしか得られないことがあります。

 2軍でやるべきことを終えたとは思っていないし、彼自身もっとやるべきことはある。ただ、今のチーム状況や、これまでの1軍での過ごし方など全てを見て、『これなら頭からマスクを被らせることができる』という状況になった。高卒3年目でここまでやれているのは立派ですよ」

2023年にオリックスからドラフト4位指名を受けた堀柊那【写真:橋本健吾】2023年にオリックスからドラフト4位指名を受けた堀柊那【写真:橋本健吾】

ベンチを温める中で得た“収穫”「若月さんの体の強さだったり…」

 2軍で実績を残し、1軍での準備を怠らず、チーム状況や先発投手との巡り合わせが合致する。その全ての条件が揃ったタイミングで、ようやく実現した今季初スタメンだった。今季123試合目での初先発で、1軍で初めてフルイニングを守った堀も「長かったなとは思わないですけど、しっかり準備をファームでしていたので、いい結果を残せてよかったなと思います」と、納得した表情を見せていた。

 長くベンチを温める日々。それでも過ごした時間は無駄ではなかった。

「1軍に帯同して、見ることの方が多かったんですけど、やっぱり若月さんの体の強さだったり、ピッチャーとのコミュニケーションを見て、本当にすごいキャッチャーだなと感じます」。どんな状況でもプロとして振る舞う先輩たちの凄みを、肌で感じ取った。

 厳しいプロの世界でもがき、野球に真摯に向き合う一方で、“天然っぷり”は高校時代と変わらない。

 2023年ドラフト会議で4位指名を受けた時、「パ・リーグってどっちですか?」と発言して注目を集めたが、今も“愛されキャラ”は健在だ。

 報徳学園3年時の2023年選抜大会で準優勝に輝いた際、バッテリーを組んでいた1学年後輩の阪神・今朝丸裕喜投手が7月3日の広島戦でプロ初登板を果たした。2軍で対戦経験があった堀に筆者がその話題を振ると、「真っすぐの質はかなりレベルアップしていますよ」と嬉しそうに語っていた。しかし、今朝丸が1軍に昇格していたことを知らず、「え? 1軍に上がってたんですね。知らんかった…」と目を丸くし、苦笑いを浮かべる一幕もあった。

 勝利に貢献し、プロとしての一歩を踏み出した背番号「62」。だが、1軍に定着するには、ここからが重要だ。岸田護監督も「落ち着いてると思います。これが、もっと苦しいところとか、やられだした時ですよね。また、これからだと思いますし、どんどん経験を積んでほしい」と期待を寄せる。

 着実な成長を見せつつ、どこか憎めないキャラクター。フルイニング出場で勝利を手にし、プロ初打点を記録したこの試合を機に、堀柊那の正捕手への挑戦が本格的に幕を開ける。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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