ナショナルズのマット・ウォルドロン投手は、現在のメジャーリーグでただ1人のナックルボーラーとしてプレーする。今季はマイナーも含めて7年間過ごしたパドレスをDFAに。「少し胸が張り裂けるような思い」。揺れ動いた1か月を振り返った。
2019年のドラフト18巡目(全体55位)でインディアンス(現ガーディアンズ)に指名され、翌年にジョシュ・ネイラー内野手らが絡むトレードでパドレスへ移籍した。2023年にデビューを果たすと、2024年には27試合(26先発)に登板して7勝(11敗)をマーク。ナックルを操る希有な投手として注目を集めた。
28歳右腕は、レジェンドのティム・ウェークフィールドや、RA・ディッキーのようにほとんどナックルしか投げないというわけではないが、全投球の中ではナックルボールの割合が最も高い。
「(告げられた時は)クラブハウスでみんなにお別れを言いながら、涙が浮かんできたよ。辛かったね。実際にそうなると、少し胸が張り裂けるような思いだった」
その後はブルージェイズが獲得し、14日後にまたDFAに。次はナショナルズが獲得して再び新天地へ。激動の1か月となった。
「大変だったけど、最終的にはそれぞれの組織から学んで、与えられた環境で自分にできることを取り入れようと頑張っていた。自分の失敗から学び、(成長するために)多くの情報を集めようとしていた」
ダルビッシュは「大好きな選手だった」
パドレスではダルビッシュ有投手ともプレー。「ダルビッシュは僕が子どもの頃に大好きな選手だったんだ」と明かす。ダルビッシュがレンジャーズでプレーしていた時期、ウォルドロンはまだ学生。剛速球と多彩な変化球で三振を量産する姿は憧れだった。
「彼を見て圧倒されたよ。彼は常にハードに練習して、ものすごく集中して野球に取り組んでいた。彼は少し控えめで自分の世界を持っているけど、デリバリー(フォーム)のことや、いろんなことについて話を聞かせてくれたんだ」
「僕のコマンド(制球力)やストライクゾーンに投げ込める能力について褒めてくれた。彼がそう言っていたことは覚えているよ」
ナックルボールの“極意”「バックスピンよりも…」
ウォルドロンが本格的にナックルボールを投げ始めたのはプロ入り後だった。元々遊びで投げていたボールを、マイナーでプレーしていた2021年から実戦で使用した。
「『打つのがどれだけ難しいか』ということに単純に気づいたからなんだ。そこから試合で投げ始めるようになったんだけど、結局は楽しんで投げることからスタートしたよ。楽しもうとすること、それを武器にどう戦っていくかということは最初は難しい挑戦だったけど、時間をかけて身につけていったんだ」
投じるナックルボールは、今季80.5マイル(約129.5キロ)と比較的スピードが速く、ディッキーのようなタイプだ。
「手首をしっかり固定すること、そしてバックスピンよりもフォワードスピンを意識することだね。あとはエクステンション(プレートからリリースポイントまでの距離)だね。しっかりと前でリリースすることを意識するのが役立つんだよ」
言わずもがな、“不規則に変化”することがこのボールの特徴。コントロールはやはり難しい部分がある。「強い球を投げるほど変化量は減る。縦に落とそうとすることは出来るけど、最終的にはコントロールできないね」。手に持つボールを眺め、苦笑いした。
「(動き方は)成り行き任せだよ」。“絶滅危惧種”としてメジャーの地に立つウォルドロンの挑戦は、これからも続いていく。