ド軍エース候補も「もう戻れないんじゃ」 故障、不振を乗り越え…738日ぶり復活星の裏側

ミラーは4番手で3回1安打1失点、2024年8月29日以来の勝利投手に
【MLB】ドジャース 7ー5 ナショナルズ(日本時間7日・ロサンゼルス)
珍しく冷たい雨が打ち付けるドジャースタジアムで、必死に自分と戦っていた。ドジャースのボビー・ミラー投手が6日(日本時間7日)、本拠地・ナショナルズ戦の6回から4番手として登板。実に470日ぶりとなるメジャー復帰を果たし、3回1安打1失点で試合を立て直して涙の今季初勝利を挙げた。
4-4の同点で迎えた6回。マウンドへ向かう背番号28の足は、自分のものではないように震えていた。激しい降雨と、16か月という空白が生んだ圧倒的な重圧。「最初のイニングは、足の感覚があまりなかった。ずっと長い間、離れていたから」。制球は定まらず、押し出し死球で1点を勝ち越された。唇を噛みながらも、心の中で「固くなるな、何が起きても受け入れよう」と必死に自分を繋ぎ止めた。
苦しい立ち上がりを救ったのは、チームメートの好守と内に秘めた覚悟だった。7、8回は2イニング連続で3者凡退に。「ブルペンを出るときは毎回『初球ストライクを取る』のがプラン。初球ストライクが一番重要だし、外野のタック(タッカー)が素晴らしい守備(本塁打キャッチ)をしてくれた。彼には心から感謝したい」。仲間の好捕に大きなため息をつき、「次の打者を攻めよう。チームに勝利のチャンスを与えるんだ」とギアを入れ直した。
2020年ドラフト1巡目(全体29位)でドジャース入り。かつてはチームの将来を担うエース候補と称されながら、度重なる故障と不振で苦しいリハビリ生活を余儀なくされた。「今年の前半は『もう戻れないんじゃないか』と疑問を抱いたこともあった」。しかし、傘下3Aオクラホマシティでもがく中で腹を括った。
「どんな結果になろうと腹を括って投げる。腹を括るメンタリティを持つようにしたんだ」。直後の8回にチームが劇的な逆転劇を演じ、2024年8月29日(同30日)以来738日ぶりとなる勝ち星が転がり込んだ。
試合後のロッカー室で、ミラーの表情には安堵と万感の思いが滲んでいた。
「素晴らしい気分だよ。本当に最高だ。自分はメジャーリーガーなんだという自信はずっと持っていたけれど、このロッカー室にいられる日はいつでも本当に恵まれていると感じる」
16か月間のハードワークと葛藤の末につかんだ復帰勝利。「時には『チャンスを与えられること』それ自体が、必要なすべてだったりする。またマウンドに立てて、ただただ感謝しかない」。遠回りをした剛腕が、再び夢の舞台で力強く歩み始めた。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)