「今の方がプレッシャーはあります」 阪神・元山飛優が感じる“縦縞の重み”…戦力外から目指す優勝のグラウンド

阪神に加入し、過去にない重圧と向き合いながらプレーする元山飛優【写真:井上学】阪神に加入し、過去にない重圧と向き合いながらプレーする元山飛優【写真:井上学】

今季から阪神でプレーする元山飛優は遊撃手争いで奮闘中

 阪神・元山飛優内野手が、優勝争いの渦中で充実した日々を送っている。ヤクルト、西武を経て今季から阪神でプレー。チームは首位を走り1試合ごとの結果が大きな意味を持つ時期に入った。その中でスタメン遊撃としてグラウンドに立つ重圧は、過去に背負ったものとはまた違うという。

 元山はヤクルト入団時の2020年ドラフトで背番号「6」を背負った。球団OBであり、名遊撃手として知られる宮本慎也氏がつけていた番号である。当然、周囲からの期待も大きかったはずだ。

 ただ、当時の元山は、その重みを今ほど実感できてはいなかったという。「背番号は背番号であって、そこまで意識することではないと思っていました。今思えば、すごいエグい番号をいただいているわけなんですけど、そこまでの強い意識は持っていませんでした」。プロ入り直後の若さもあり、その意味を真正面から受け止め切れていなかったわけだ。

 そうなるとむしろ、2球団を渡り歩いた上で加入した阪神でのプレーの方がプレッシャーは大きい。自らの置かれた立場も自覚しており余裕などあるはずがない。「今、タイガースでプレーしている方がプレッシャーはありますね。僅差で優勝争いをしているチームの中で使ってもらって」と、重圧を力に変えている。

ヤクルトでは偉大な背番号をつけてプレーした【写真:産経新聞社】ヤクルトでは偉大な背番号をつけてプレーした【写真:産経新聞社】

過去4年間で3四球も今年だけで14四球を選ぶ

 阪神という球団は勝てば大きく称賛され、負ければ厳しい声が飛ぶ。ファンの熱量も、メディアの数も、注目度も球界屈指だ。しかも、現在は球団初の連覇へ向けラストスパートの最中である。しびれる戦いが続く中で内野の要である遊撃を任される意味は重い。

 失敗が許されない空気のなかで1球、1球に神経を使う。そのプレッシャーを感じながらプレーできていることは、実はプロとして最も幸せなのだろう。

 元山はプロ入り後、決して一本道を歩いてきたわけではない。ルーキーイヤーの21年は97試合に出場して打率.255。しかし翌22年は13試合で.148、23年は22試合で.179。西武へ移籍した24年は33試合で.143、25年は49試合で.153。4年連続で打率1割台という現実に直面した。

 そして昨オフ、西武を戦力外となった。通算打率は.214。数字だけを見れば、次の場所が用意される保証はどこにもなかった。それでも地元、関西の阪神がチャンスを与えてくれた。

 野球人生をかけた1年が幕を開け、今シーズンは7日現在、41試合に出場して打率.264。ここまでは復調の範疇かもしれない。だが、注目すべきは別の数字だ。出塁率.352、14四球。22年から25年までの4年間で計3四球だったことを思えば、この「14」という数字がどれほど異質かがわかる。犠打も4つ記録している。打って出る。選んで出る。送って進める。下位打線に求められる仕事を元山は数字で示している。

決して派手ではないが、阪神の遊撃として躍動している【写真:小林靖】決して派手ではないが、阪神の遊撃として躍動している【写真:小林靖】

5日・DeNA戦での走塁ミスを攻めなかった藤川監督

 5日のDeNA戦(甲子園)、1死二塁の5回。二塁走者だった元山は、近本の中越え二塁打で本塁に還れなかった。この日の甲子園は、いつもの浜風ではなく右翼から左翼へ吹く風で、打球の判断が難しかったという事情もある。試合後、藤川球児監督は次なる成長につなげて欲しい旨の言葉を残した。だが、指揮官は責めなかった。慎重になった心理そのものを言語化した上で次は攻めることを求めた。重圧を感じられることの先に、重圧の中で踏み込めることがある。「そこまで行った景色を見ろ」と言っているのだ。

 首位チームの遊撃を任されるとは、そういうことだ。毎日、勝敗に直結するポジションに立つことの重み。熱狂的なファンと、厳しい視線のなかでプレーすることの重み。それでも元山は逃げていない。「今の方がプレッシャーはあります」。その言葉は弱音ではない。むしろ、今の自分が本当の勝負の場にいるという実感に近い。

 宮本氏の背番号「6」を背負った新人時代には分からなかったもの。大卒6年目のキャリアは、結果が伴わなければ重荷になることもある。だが、阪神で優勝争いに参戦する中で、ここでしか味わえない緊張感を養分とし成長した。

 ここから一歩踏み込めるとすれば、それは藤川阪神の連覇を遊撃の守備位置で迎える瞬間になるだろう。

(楊枝秀基 / HideKi Youji)

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